マルケス、負傷からの復活へ新たなアプローチ。怪我重ねた体の“新100%”は今も模索中
ドゥカティのマルク・マルケスは2025年終盤のクラッシュから、体調の問題に悩まされてきた。ハンガリーGPで復活の狼煙をあげたマルケスが、どんなアプローチをしているのかを、チームスタッフが語った。
Marc Marquez, Ducati Team, Marco Rigamonti
写真:: Gold and Goose / Motorsport Images
6月上旬、MotoGPハンガリーGPでマルク・マルケス(ドゥカティ)はポールポジションからスプリントレース、決勝レースを制する完全制覇を達成。長く負傷の影響を受けてきた彼が今、どんなアプローチでMotoGPに臨んでいるのかをチームスタッフが語った。
マルケスは昨年のインドネシアGPで起きたクラッシュで、右肩を負傷。シーズン序盤戦はその影響と思われる苦戦が続いてきた。彼の得意とする左コーナーですら苦しんでいたことで、負傷の影響は大きいと見られていた。
ただフランスGPで彼は、右腕の古傷に埋め込まれたネジが破損して、神経に悪影響が起きていたことを告白。フランスGPで転倒した際に負った右足の骨折と合わせて、手術を受けることになった。
カタルニアGPを欠場し、イタリアGPで復帰したマルケス。復帰2戦目のハンガリーGPでは左回りのコースというアドバンテージはあったものの、早くもスピードを発揮し、ポール・トゥ・ウィンを果たすに至った。
復活優勝を飾ったとはいえ、9度の世界王者にとって状況は決して楽観できるものではない。マルケスはいまだ筋力不足に悩まされており、今後のブルノとアッセンでは大きな制約を抱えることになる。
「問題は筋力に関係している。彼はまだ100%の状態ではなく、全周回を通して必要な力を発揮することができない」
マルケスのクルーチーフであるマルコ・リガモンティはハンガリーでそう語った。
「FP1とFP2では20周ほど走ったが、彼が本気でプッシュしたのは4〜6周だけだった。あるいは、限界を理解するために特定のコーナーだけでプッシュすることもあったがね。これはパフォーマンス面での制約になっている」
「例えば、彼はバラトン・パークのいくつかのコーナーではウイリーと戦わなければならないと言っていた。そしてウイリーを抑えるにはハンドルを引かなければならない」
「しかし彼は『力がない、筋力がない』と言う。だから脚をより使うことになるが、それはウイリーを抑える正しい方法ではない。そのため彼は時々『ウイリーが多すぎる。でもそれは正しい乗り方ができていないからかもしれない』と言っているんだ」
「ただ、あと2〜3週間もすれば、昨年とかなり近い状態まで戻れると思う」
■2025年インドネシア後の苦戦
Marc Marquez, Ducati Team
Photo by: Ducati Corse
2025年インドネシアGPのクラッシュから8ヵ月間は、マルケスにとって平坦な道のりではなかった。
ドゥカティでの浮き沈みのある期間の全てでマルケスを支えてきたリガモンティは、前述のネジの除去のための手術を受けることを、フランスGPでの事故後に明かす前から事前に打ち明けられていた数少ない人物のひとりだ。
「年初に、彼は筋力を一定に保てないことに気づいていた」と、リガモンティは言う。
「彼はそれが冬のトレーニング不足によるものだと思っていた。しかしカタールGPが中止になったことで3週間の期間ができた。そしてヘレスに戻った時、『昨年の100%にかなり近づいた』と考えていた。だが実際には何かがおかしいことに気がついたんだ」
「身体的な準備はできていた。FP1も良い状態でスタートした。しかしセッションを重ねるごとに力と筋力が失われていった。その後、医師の診察を受けることを決め、腕の問題が判明した」
Marc Marquez, Ducati Team
Photo by: Gold and Goose Photography / Getty Images
手術を受け、イタリアGPで復帰したマルケスの表情には、明らかな変化が見られた。
ムジェロはカレンダーでも屈指のフィジカル負荷が高いサーキットだが、マルケスは序盤戦よりも改善した走りを披露し、正しい方向に踏み出しはじめたことを示した。
「(ムジェロで)左コーナーでは昨年のような走りが戻ってきたことが分かった。左コーナーで差を作ることができたし、良いラップタイムも出せていた」
リガモンティはそう説明する。
「唯一の問題は、彼自身が身体面でより準備できていると思っていたことだ。しかしコースは非常に厳しく、一貫した走りを続けるのに苦労した。ある方向の動作では力が残っていない状態になることもあった」
「それでも彼は、自分がかなり良い状態にあることを確認できて満足していた。正しい乗り方もできていた。ただし、100%回復するにはまだ数週間必要だと理解している」
そのため、マルケス自身もハンガリーでの勝利を「完全な復活」とは表現していない。特にドゥカティ陣営には、彼がどこまで元のレベルに戻れるのかという不安が残っている。
2025年にタイトルを獲得したシーズンでさえ、マルケスは大怪我をした2020年以前の状態には完全には戻っておらず、以前より多くのトレーニングや身体管理を必要としていた。
「それは難しい問題だ。彼自身も『怪我のたびに、新しい100%がどんなものか分からないし、それが以前の100%と比べてどうなのかも分からない』と言っている」とリガモンティは説明した。
「だから、3〜4カ月にわたって完全なトレーニングと完全な回復ができた後に、昨年と同じ状態になるのかどうかは分からない。それが身体面の話だ」
「さらに、ライバルたちも進歩している。だから昨年と同じ身体状態に戻れたとしても、昨年のように14連勝できるかどうかは分からない。なぜなら、競争相手も確実に強くなっているからだ」
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