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代役で久々MotoGP復帰カル・クラッチロー、妻の説得で翻意「こんなにクレイジーな人間は他にいないだろうね」

カル・クラッチローは、予期せぬMotoGP復帰に向けて準備を進める中で、妻と交わした会話を振り返った。

Cal Crutchlow,  Team LCR Honda

 負傷したヨハン・ザルコ(LCR)の代役を、カル・クラッチローが務めることが決まった。クラッチローにとって今週末のイタリアGPは、実に3年ぶりのMotoGP参戦。そのため当初はオファーを断ったというが、妻の励ましを受けて考えを変えたという。

 2週間前のカタルニアGPのリスタート時に起きたクラッシュで、ザルコが膝の靭帯を損傷。しばらくレースに出走できないのは明らかであり、LCRとしては代役を探さざるを得なかった。しかしその選択肢は限られていた。

 ホンダにはふたりのテストライダーがいる。しかしアレイシ・エスパルガロはテスト中の事故で負傷、中上貴晶は2027年型バイクの開発を優先しているためどちらも代役参戦はできず。そのためLCRは、代わりに元ライダーのクラッチローを呼び寄せた。

 クラッチローは2020年にフルタイムのライダーとしての活動を引退し、それ以降はヤマハのテストライダーとして、計11回スポット参戦(負傷代役含む)している。

 2024年も3戦にワイルドカード参戦する予定だったものの、手の怪我により参戦は取りやめに。2025年中にヤマハのテストライダーの役からも退いたクラッチローにとって、準備時間も少ない中、ムジェロで復帰するという考えは魅力的ではなかった。 

 しかし妻との会話がきっかけとなり、彼はLCRのチーム代表であるルーチョ・チェッキネロから提示された機会を受け入れることにしたという。

「月曜日に家に帰ると、妻のルーシーが『ダコ(ダコタ・マモラ/LCRのスポーティングディレクター)から電話があったわよ』と言ったんだ。ルーチョやチームの多くの人から電話があり、メッセージもいくつか届いていた」

「最終的にダコタと話をしたところ、彼は『チームは君に復帰してレースに出てほしいと思っている』と言ってくれた」

「僕は状況を理解していたので、彼が冗談を言っているとは全く思わなかった。それから家に帰ると、ルーシーが『ダコタから電話があった?』と聞いてきたので、『興味ない』と答えた。すると彼女は『どうして?』と聞いてきて、『あなたはこれまでずっとやってきたのに、なぜやらないのか理解できない』と言ったんだ」

 なぜ当初ためらっていたのかとさらに問われると、クラッチローはこう付け加えた。

「自分は以前より大人しくなって、無茶もしなくなったと思っていた。でも実際はそうじゃなかったと気づいたんだ」

「最終的にOKしたのは、妻が『やりなさい』と言ったからだ。彼女は僕のキャリアずっとそばにいてくれた。そして一緒に決断した。彼女の言葉は『あなたの人生も私たちの人生も、ずっと冒険だった。なのに、なぜ今それをやめるの?』だった。それで『分かった、行くよ』って答えたんだ」

Cal Crutchlow, Team LCR Honda

Cal Crutchlow, Team LCR Honda

Photo by: Gold and Goose Photography / LAT Images / via Getty Images

 クラッチローは、今回復帰を決めた大きな理由の一つとして、計6シーズン在籍し3勝をマークした古巣、LCRホンダへの忠誠心を挙げている。

「他のチームのためならやっていなかった。ドゥカティのファクトリーチームから電話が来てもやらなかったし、アプリリアでもやらなかった」

「ルーチョとチームが頼んできたからやったんだ。そして途中から『まあ、やってみるか』と思うようになった」

 MotoGP復帰へ向け、クラッチローはミサノでのプライベートテストでMotoGPマシンに乗った。

「火曜日にダコタと話して、事前に走れるかどうか検討し始めた。だって、長い間バイクに乗っていない状態で、いきなりFP1で360km/hのターン1に飛び込むなんて正しくないからね」

 しかしテストを走り終え、ムジェロに到着した段階は身体は満身創痍の状態だという。

「幸運にもテストを組むことができた。でも今日はバスに轢かれたみたいな身体だよ」

「昨日は正直あまり良くなかった。戻ってこられたのは嬉しかったけど、バイクの感覚も全部変だった。でも予想通りだったかな。何を期待していたのか自分でも分からないけどね」

 クラッチローが特に驚いたのは、近年のMotoGPマシンの進化だった。空力への依存度が大きく増し、ラップタイムも劇的に向上している。

「今一番大事なのは、バイクに慣れることだ。現時点ではライディングポジション的にも全然快適じゃない。バイク自体が大きく変わっているから、自分の乗車姿勢もかなり変わってしまった」

 久々の走行で、自身のラップタイムを見た時の衝撃を、クラッチローはこう振り返った。

「ミサノで表彰台に乗っていた頃のラップタイムは知っている。でも走っている最中は『これ以上速く走れるわけない。絶対無理だ』って思っていた。完全に限界だったからね」

「なのに10秒も遅かったんだ。最初の数周でね。ピットに戻って、『ラップタイマー壊れてるんじゃないか?』って聞くべきか、それとも少し黙っておくべきか迷ったよ」

「一日を通して確実に良くなった。ただ、今のMotoGPマシンは難しい。でも昔より難しいというより、自分が長い間乗っていなかっただけなんだ」

 最後にクラッチローは自分の挑戦が極めて特殊なものだと認めつつ、こう締めくくった。

「これを他にできる人はいないと思う。本当にそう思うよ。そもそも、ここまでクレイジーな人間が他にいないだろうしね」

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