新人ながら既に3度の予選セカンドロウ。逸材の香り漂う野村勇斗の強みは“感度”と武藤監督……B-Maxの総合力UPで優勝も夢じゃない?
San-Ei Gen with B-Maxの武藤英紀監督は、今季スーパーフォーミュラ1年目ながら際立つ速さを見せる野村勇斗について、非常に正確なフィードバックをする点が印象的だと語った。
Yuto Nomura, San-Ei Gen with B-Max
写真:: Masahide Kamio
今季のスーパーフォーミュラでは、海外勢3人を含む5人のルーキードライバーが参戦している。その中で一際目立った速さを見せているのが、San-Ei Gen with B-Maxの野村勇斗だ。
野村はデビュー戦となった第1戦もてぎの予選でいきなり5番手タイムをマークすると、福住仁嶺(NTT docomo Business ROOKIE)の失格で2列目4番グリッドを獲得。先日の鈴鹿ラウンドでも、土曜の第4戦で3番手、日曜の第5戦で4番手に食い込んだ。既に並み居る強豪たちに割って入り、グリッド上位の常連になりつつある。
ホンダのスクールでスカラシップ獲得後、ヨーロッパでの挑戦は1年で終わったものの、帰国後は2024年のFIA F4、2025年のスーパーフォーミュラ・ライツ(SFライツ)を立て続けに制してステップアップしてきた野村。その才能を高く評価する声は多くの関係者から聞こえてきており、B-Max Racingの組田龍司総代表が開幕前のイベントで口にした「野村は10年にひとりの逸材」という言葉も、決して大言壮語ではないということが感じられる。
そんな野村が逸材たる所以は、どのようなところにあるのか? San-Ei Gen with B-Maxのチーム監督であり、F4、そしてSFライツでもHFDP with B-Maxの監督として野村のことを間近で見てきた武藤英紀氏は、次のように語る。
「クルマに対しての感度……身体からクルマのインフォメーションを得る感度は非常に高いのかなと思います」
写真: Masahide Kamio
「ですから、すごく細かいところに気付きます。正確なインフォメーションをエンジニアに流せるという点は秀でているというか、高い感性を持っていると思いますね」
このように、野村の武器としてフィードバック能力を挙げた武藤監督。この能力は、今季のB-Maxのマシンが高いパフォーマンスを発揮できていることの一因になっているだろう。
またセットアップを最適化していく上では、エンジニアとの相性も欠かせない。ドライバーが口にする言葉をどのように解釈・翻訳し、どう車両に落とし込むのか……そこが重要になってくるためだ。ただ担当の今関佳斗エンジニアは、武藤監督同様にF4時代から野村を担当し続けており、既に“ケミストリー”が構築されている。
「F4の時から今関エンジニアとやっていて、阿吽の呼吸というか、ふたりだからこそうまくいっているような印象を受けます。やはり相性ってあるのかなと、つくづく思いますね」
今関エンジニア(左)はF4時代から野村を担当
写真: Masahide Kamio
「例えば(ドライバーが)同じ言葉を発したとしても、その度合いによって『何が欲しいのか』『どのくらい欲しいのか』、数字で表さなくても分かるというか……もう3年やってますからね」
また、セットアップと同様に重要とされるメカニックの車両組み上げ精度に関しても良好のようで、セットアップ変更に対して車両側も適切に反応しているという。車両のパッケージとしては、申し分ない状況と言える。
ただそんな野村も、トラブルなどによって速さを結果に結びつけられず、鈴鹿ラウンドを終了した時点でランキング19番手に沈んでいる。
4番手スタートの第1戦もてぎは、決勝は雨によりほとんどがセーフティカーランで消化されるレースとなったため、何事もなければ上位入賞のチャンスだったが、「エンジンが吹けない」症状に悩まされ7位に終わった(これはB-Maxに限らず、多くの車両で報告された症状だったが)。翌日の第2戦もシングルグリッドで迎えるも、フォーメーションラップでのエンジンストールで最後尾に回り、入賞を逃した。
第3戦オートポリスは、予選上位が狙える手応えがあった中でQ1で燃圧トラブルが出て大幅にタイムロス、18番手に沈んだ(決勝は悪天候中止→富士で代替戦実施予定)。
そして鈴鹿での第4戦はスタートでの蹴り出しが悪く3番手から8番手までダウン、そこからレースペースの良さで表彰台争いまで戻ってきたが、ピットでの作業ミスで後退。その後混乱に乗じて再びポジションを上げるも、小雨が降った際にウエットタイヤに交換するという戦略が外れてしまい、他の上位陣と共に下位に落ちた。翌日の第5戦はスタートもピットもうまく決められたが、肝心のペースが足りずまたしてもポイント圏外でのフィニッシュに終わった。
「今季中に1勝」という、ルーキードライバーを擁する1台体制チームとしては強気な目標を掲げていることを明かす武藤監督。それも決して不可能ではないと感じさせるようなパフォーマンスを見せているが、今季ここまで4度行なわれた決勝レースでは、全ての歯車を噛み合わせることはできていない。
「昨日(第4戦)はピット作業ミスがあり、今日(第5戦)はクルマがイマイチ速くなさそうだったし……全てのピースを綺麗にはめるのは難しいんだなと改めて感じますね」と武藤監督。続けて、「本当に総合力が大事だと思うので、それを今みんなで高めていっているところです」と語った。
2台体制はメリット。ただしそれは「2台が同じ質」が前提
写真: Masahide Kamio
今季はB-Maxに限らず1台体制のチームの躍動が目立っている。福住の手によって第5戦で初優勝を手にしたROOKIE Racingがその最たる例だ。
一般的に、2台体制はチーム内で得られるデータが多い点、1台体制はリソースを1台に集中させられる点が強みだと言われてきたが、ここ数年1台体制で上位に食い込めるチームはなかなか出てこなかった。ただ、その潮目が変わりつつある。
最近はチャンピオンチームのTEAM MUGENにも在籍していた武藤監督は、2台体制には上述のメリットがあるとしながらも、そのメリットを享受するためには2台とも等しく高いクオリティで走らせられることが必須になってくると述べた。
「(1台体制は)リソースを集中できるという意味ではすごく良いと思います。ただ、2台で同じ体制、同じ道具を揃えられる財力があって、物を作る精度や、車両の組み上げの精度を整えられるのであれば、2台体制はすごくメリットがあると思います」
「例えば2台いれば、予選Q1でA組、B組に分かれて走ることができて、(A組のドライバーからB組のドライバーへの)情報共有ができるわけですよね。決勝のセットアップに関しても、レースを走ることでの収穫の量が増えると思います」
「ただ、2台が同じ質でやっていないと意味がないと思います。それは去年までMUGENにいたので痛感しています。彼らは2台とも高いレベルを維持できていますから」
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