S耐スープラはなぜ3つのクラスに分散しているのか? カスタマーサービス、そしてモノ作りへの熱意

2021年のスーパー耐久では、トヨタGRスープラがST-Z、ST-Q、ST-1という3つのクラスで走っている。同じ車両でありながら、なぜここまで分散しているのか? その背景には“モノ作りへの情熱”があった。

S耐スープラはなぜ3つのクラスに分散しているのか? カスタマーサービス、そしてモノ作りへの熱意

 トヨタGRスープラは、昨年終盤からFIA GT4規定の車両がデリバリーされ、2021年スーパー耐久シリーズ(S耐)のFIA GT4車両によるST-Zクラスに開幕戦に3台、第2戦には4台参戦した。これでST-Zクラスは参加15台程度と盛況になり、今年のS耐では最も参加台数の多い人気クラスとなった。そして開幕戦もてぎでは111号車Access HIROSHIMA+ GR SUPRA GT4がST-Zクラス車両としてのデビュー戦で3位表彰台を獲得した。

 GRスープラは、昨年S耐の排気量3501cc以上の車両(=ST-2〜5以外の車両)で争われるST-1クラスに登場し、いきなりクラスチャンピオンに輝いた。その28号車ROOKIE Racing GR SUPRAは今年、新設されたST-Qクラスに区分されることになった。ST-Qクラスとは「STO(スーパー耐久機構)が参加を認めたメーカー開発車両、または各クラスに該当しない車両」で、つまりはメーカー開発車両としての参戦だ。ではなぜ今年もST-1クラスに区分されなかったのか? ROOKIE Racingの片岡龍也監督に聞いた。

「去年GRスープラはFIA GT4のホモロゲーションが取れていなかったので、FIA GT4車両のクラスであるST-Zクラスには区分されずST-1クラスとなりました。でも今季はホモロゲが取れたことで、GT4車両をベースにした車両ということであればST-1クラスとは認められないんです」

#28 ORC ROOKIE Racing GR SUPRA

#28 ORC ROOKIE Racing GR SUPRA

Photo by: 皆越 和也

 開発車両の目的について尋ねると「カスタマーが今年からFIA GT4車両で複数台S耐に参戦し始めましたが、レースに参戦していく中でいろんな不具合や改善点が見えてきます。ROOKIE Racingはコンペティションすることが目的ではなく、良いクルマ作りであったり、カスタマーに対してどういったサービスができるか、どういう問題が起きているのかなどを現場目線で見たいのです。ST-Zクラスに参戦すると、問題が見つかってもどこもいじれないし触れない。対策の部品を試すこともできません。そこで新たなST-Qクラスに出場することにしました」。なるほど、車両をチェックすると微妙にエアロパーツの形状が違っていることもあるので、サーキットで違いを探してみるのも面白いかもしれない。

 そしてもう1台、ST-1クラスに新たに参戦してきたのがTRACY SPORTSが独自に開発した38号車muta Racing GR SUPRAだ。FIA GT4車両がGT4レース用にチューンアップされた直6、3Lターボエンジンを搭載しているのに対し、こちらは市販の直6、3Lターボを搭載し独自のチューニングを施している。ST-Zとは異なる車両を開発した経緯を兵頭信一代表に聞いた。

「FIA GT4だと何もいじれない、パーツを換えられない、好きなものを付けることができません。ウチのスタイルは、技術屋として自分のところで全部作るというもの。このスタイルは曲げたくないんですよ。どこからか依頼が来てタイミングが合ったらリクエストに応えることもありますが、基本的に今までのウチのレースのやり方は、やりたいクルマを自分のとこで製作して走らすと。これがやはり夢とロマンですよ」

#38 muta Racing GR SUPRA

#38 muta Racing GR SUPRA

Photo by: 皆越 和也

 企画をスタートさせ実際に車両を製作し始めたのは昨年の3月ということなので、製作には丸一年掛かっている。製作については独自路線であることから、当然メーカーの協力もなく苦労もあったと思うが「ナンバー付きの市販車から作り始めましたからね。一番大変だったのは電気廻り。通信ですね。今のクルマはウィンカーからライトからつながっていて、デフも自動でイニシャルが替わる。コンピュータはエンジンに関してはMOTECでやってます。ハーネスも全部こさえてね」。これまで市販車のレクサスRC350に独自のチューニングを施しST-3クラスに出場していることから、そのあたりのノウハウをこのGRスープラにも応用したようだ。「簡単に話すとそういうことですが、細かく話すと1時間以上はかかるよ」と兵頭代表は笑った。

「ST-1クラスでは相手がいようといまいと、そのクラスでこれを走らせたかったということですね。走らせてこれを今後につなげる。じゃないとこのままだったら日本のレースが空洞化してしまうという危機感があるんです。強い意志を持っていろんなものを残さないといけないでしょ?」

 S耐ではそのような熱意を感じながら観戦してみるのも楽しいかもしれない。モノ作りへの情熱を燃やすメカ親父たちの奮戦にも期待だ。ちなみにST-1クラスのスープラはデビュー2戦目で見事にクラス優勝を果たしている。

参考資料:スープラ各クラスの速さ比べ

第1戦もてぎ

 

予選ベストタイム(ドライ)

クラス(総合)

予選順位

決勝ベストタイム(ウェット)

クラス(総合)

決勝順位

ST-1

1’58”991(38号車阪口良平)

2位(11位)

2’11”563(38号車阪口良平)

2位(11位)

ST-Z

1’59”182(311号車久保凛太郎)

2位( 9位)

2’12”437(311号車佐藤公哉)

111号車クラス3位(10位)

ST-Q

1’58”722(28号車蒲生尚弥)

1位(10位)

2’11”529(28号車蒲生尚弥)

1位(17位)

第2戦SUGO

 

予選ベストタイム(ウェット)

クラス(総合)

予選順位

決勝ベストタイム(ドライ)

クラス(総合)決勝順位

ST-1

1’37”926(38号車阪口良平)

1位(7位)

1’27”431(38号車堤優威)

1位(6位)

ST-Z

1’38”561(311号車久保凛太郎)

1位(9位)

1’28”435(111号車平川亮)

311号車5位(11位)

ST-Q

1’38”367(28号車蒲生尚弥)

1位(13位)

1’30”148(28号車豊田大輔)

1位(15位)

※S耐の予選はA、Bドライバーの合算タイムの順位となる

 

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