スーパーフォーミュラ
山下健太に聞く、スーパーフォーミュラ第2戦での涙の理由。何をやってもカタチにならず、思い悩んだ3年間
スーパーフォーミュラ第2戦で3位表彰台を獲得し、涙した山下健太。彼が珍しく感極まることになった背景について、改めて話を聞いた。
戎井健一郎
公開日時: 2023/04/20 22:03
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富士スピードウェイで行なわれたスーパーフォーミュラ第2戦。3位表彰台を獲得した山下健太(KONDO RACING)は、パルクフェルメでも表彰式でも、そして記者会見でも、溢れる涙を必死にこらえていた。普段は飄々としている山下のそんな姿に多くのファンや関係者が驚き、心を打たれた。
山下は涙の理由について、ここ数シーズンのスーパーフォーミュラで苦戦していたこと、そこに今シーズン開幕前の怪我が重なったことが理由にあると語っていた。山下に「フォーミュラ向いてないのかな」とまで思わせるに至ったここ数年の苦しい日々について、改めて話を聞いた。
2016年に全日本F3(現スーパーフォーミュラ・ライツ)でチャンピオンとなった山下は、2017年からスーパーフォーミュラにステップアップ。現在も所属するKONDO RACINGからデビューを果たした。
山下は参戦1年目からポールポジションを獲得するなど注目の存在となり、2019年には初優勝も記録してランキング5位。これはトヨタ勢ではチャンピオンのニック・キャシディに次ぐ順位であり、山下は一躍陣営のエース候補と目されるようになった。
そして2020年から、KONDO RACINGは阿部和也エンジニアを招聘。山下を担当させることとなった。阿部エンジニアと言えば、TEAM MUGENで山本尚貴と共にチャンピオンを獲得した、実績十分のエンジニア。山下をチャンピオンにすべく、“必勝体制”が敷かれた形だった。
しかし、期待とは裏腹に山下は暗いトンネルの中に入り込んでしまう。
2020年は開幕戦で2位となり、以降もコンスタントに入賞を重ねた山下だったが、ランキングは7位と王座争いには加われず。そして2021年からはさらに成績が落ち込んでしまい、同年は7戦中入賞2回(最高位6位)でランキング14位、2022年は10戦中入賞3回(最高位4位)でランキング15位に終わった。
「阿部さんと組んでからかなり期待していたんですけど、その逆の結果になってしまいました。チャンピオンを目指していたので」
山下はそう振り返る。
「その3年間でチャンピオンどころか、ポイントを取ることが精一杯という感じだったので、かなり落ち込みました」
阿部エンジニア(左)と山下
Photo by: Masahide Kamio
この数シーズンで特に苦しんだのは、マシンの“感度”の部分。速く走れる場面がないわけではないのだが、あらゆるセッティング変更を試しても、プラスの変化が出にくい状況にあった。チームと共に懸命に取り組んだことがカタチとなって表れない日々には相当なストレスがあったようだ。
山下は当時のことについて、適切な表現を探していくかのように慎重に言葉を選びつつ、次のように語った。
「スーパーフォーミュラでは戦っている感がなかったというか、戦う以前に自分のテリトリーの中にないような感覚でした」
「何年もやるうちにクルマの知識も増えて来て、セッティングに関してもどこをどうすればどうなるのか分かってきていました。その中で、やってもやっても結果が出ないし速くもならないとなると、戦っている感がないというか……よく分からない状態でした」
そんな中で迎えた2022年のシーズンオフ、山下は来たるシーズン開幕に向けてチームから様々な提案を受けた。その結果、山下は2022年にランキング2位となったサッシャ・フェネストラズのシャシーを今季から使用することになり、それに伴い担当エンジニアもフェネストラズ担当だった村田卓児エンジニアに変更となった。
ほんの数ミリ、もっと言えばコンマ数ミリの違いが勝負を分ける緻密なスーパーフォーミュラの世界では、様々な環境を変えることで大きなブレイクスルーが起きることも往々にしてある。山下としても、優勝請負人として「来てもらった」阿部エンジニアと、課題をやり残したままで離れることには複雑な感情もあったようだが、今季何としても結果を残すため、体制の変更に踏み切った。
「阿部さんには“来てもらった”という形だったので、そんな阿部さんとサヨナラするのは複雑な感情でもありました」と山下は言う。
「(昨年まで使用していた車両は)様々なことが分からないまま終わってしまったので、そこを阿部さんと最後まで取り組みたかったのですが、自分としても結果を残さないといけなかったので、チームからも色々と提案をいただき、それを実行するという形になりました」
Photo by: Masahide Kamio
そして迎えた2023年シーズン、第2戦で3位表彰台と上位争いを展開してみせた山下。「今回に関しては、土曜から日曜にかけての修正もうまくいったし、結果にも出たので、自分で戦っている感があります」と、早くも体制変更の効果を感じている様子。まだ開幕ラウンドを終えたばかりで、今後を占うのは時期尚早だが、山下としても手応えを感じているのは確かなようだ。
「(3位表彰台で)ホッとはしましたが、まだ開幕戦ですし、これから3位以上の結果を目指していかないといけません。ただ、戦える手応えを得たのは間違いないです」
スーパーフォーミュラのトヨタ勢では、坪井翔や宮田莉朋など、山下の後を追ってF3を卒業してきた若手の台頭も著しい。山下は今季でスーパーフォーミュラ7年目となるが、現在スーパーフォーミュラで最強を誇る野尻智紀の初タイトルも8年目。まだまだ花開くチャンスは残されているはずだ。
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