特集

スーパーフォーミュラ 第1戦・第2戦:富士

ふざけんなよ! 戦うドライバーの“ホンネ”がそこにはある。開幕富士大会で垣間見えたもの|無線で振り返るスーパーフォーミュラ

2023年シーズンのスーパーフォーミュラから、中継やアプリ『SFgo』を通して、ドライバーとチームの無線交信が聞けるようになった。今回は開幕富士ラウンドでのやり取りをピックアップ。

戎井健一郎

公開日時: 2023/04/11 10:07

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Liam Lawson, TEAM MUGEN

 スーパーフォーミュラでは今シーズンから、ドライバーとチームの無線交信をレース中継やアプリ『SFgo』を通して聞けるようになった。その中では、レース戦略に関するやり取りや、思わず感情的になるドライバーの様子を伺い知ることができ、ファンにとっても新たな視聴体験となっている。

 今回は、富士スピードウェイでの開幕ラウンドを振り返りつつ、その中でいくつかの無線交信をピックアップして紹介する。

【第1戦】

 第1戦は、中盤から野尻智紀、リアム・ローソンのTEAM MUGENコンビのマッチレースとなり、ピット戦略で野尻を逆転したローソンがデビューウィンを飾った。レース序盤、そんなMUGENの2台に割って入り2番手を走行していたのが大湯都史樹(TGM Grand Prix)。しかし彼はレースペースが上がらず、我慢のレースを強いられることになる。

14周目 大湯
大湯「なんか全然ペース上げられない……」
チーム「了解、今野尻が前の周5秒0(1分25秒0)。ペース悪くないんだけど、もっと上げられないか?」
大湯「上げてもいいけど、けっこうタイヤ使うよ?」
チーム「それであればタイヤ持たせよう」

大湯都史樹, TGM Grand Prix

大湯都史樹, TGM Grand Prix

Photo by: Masahide Kamio

16周目 大湯
大湯「全然ダメだ……ストレートちょっと遅い」

■ピットインのタイミング、どうする?

 レースが中盤に差し掛かった頃、チームはピットストップのタイミングを伺うことになる。チームからは戦略の提案や、タイヤの状態の確認など、様々な無線が飛ぶ。

17周目 野尻
チーム「リアムは野尻の1周後に入りたいって言ってる。(野尻サイドは)基本引っ張りで、後ろの動き見て判断」
野尻「了解」

21周目 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)
チーム「タイヤどう? もう入っちゃってもいいかなと思い始めてます」
山本「ちょっとリヤがきついですね。車高が上がってきちゃってる感じがします」
チーム「BOX、BOX、ピット入ろう」
山本「BOX了解」

22周目 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
関口「この周ピット入った方がいい?」
チーム「入りましょう。この周でペナルティ消化、アウトイン(ピットアウトした周に再度ピットイン)でタイヤ交換します」
関口「えっと……なんでアウトインでタイヤ交換するの?」
チーム「まだ引っ張りたいってことね? そしたらまずペナルティだけ消化する?」
関口「もしもう1回SC(セーフティカー)が入ったら、新品タイヤで状態が良ければ追いつけると思うんだけど。だからギリギリにタイヤ換えたいんだけど、どう思います?」
チーム「そうだね、このままだと(順位)下げるだけになっちゃうからね。ペナルティ消化のみで、このまま引っ張ります」

■レース終了、ドライバーから様々なフィードバック

 結果的にレースは、終盤に起きたクラッシュの影響でセーフティカーが出され、セーフティカー先導の下で終了した。チェッカー前後で、各ドライバーはレースを戦ったマシンについてチームに様々なフィードバックをしていた。

SC先導のままチェッカー

SC先導のままチェッカー

Photo by: Masahide Kamio

 まずは13位に終わった松下信治(B-Max Racing Team)。ピットでのタイムロスもあり、厳しい言葉でチームに発破をかけた。

チェッカー 松下
松下「走ってる中で一番クルマ遅いよ。明日はこんなんじゃダメだよ」
松下「ピットのやつも、走り終わったらみんなでちゃんとミーティングしてね。こっちはこっちでドライビングでちゃんとやるから。今日が最低の結果にしたい」

 さらに7位の大湯や5位の宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)も、チームに対して現状の課題を伝えていた。

チェッカー 大湯
チーム「ストレートスピードは速いところと比べると3〜4キロ遅いから、もう少しダウンフォース減らした方が良かったかなという感じ」
大湯「そもそも遅い。コーナリングも。路面温度が低いときは特に戦える感じじゃなかった」
チーム「リヤがけっこうキツい感じ?」
大湯「リヤもだけど……まあリヤの方がきついって感じかな。フロントもすごく感度があるわけじゃないけど、とにかくリヤがキツすぎて、まともに曲がってる感じがしない」

チェッカー 宮田
宮田「ちょっとスタートどうにかしてほしい。去年のエンジンの時は普通にスタートできたのに、今は回転が全然上がらないので踏んでるのに前に進まなかった。すごいもったいない。またなんか失敗したって見られる……」
チーム「了解。クラッチミートがどうとか、ホイールスピンがどうとかではなく、ホイールスピンする以前に加速していかないってことね?」
宮田「全然加速しなかったです。クラッチをちょっと離してても進むという訳ではなく、早く離してアクセル全開にしても、その先で回転がセーブされちゃってる感じだった」

関連ニュース:

宮田莉朋, VANTELIN TEAM TOM’S

宮田莉朋, VANTELIN TEAM TOM’S

Photo by: Masahide Kamio

【第2戦】

 続く第2戦は、ポールポジションからスタートした野尻の完勝だった。その野尻をオープニングラップに交わしてトップに立ち、見せ場を作ったのが3番グリッドスタートの大湯だったが、8周目のセーフティカー出動によってその流れは変わってしまう。

■アクシデントでSC出動……これが波乱を呼ぶ

 セーフティカーの発端となったのが、ジュリアーノ・アレジ(VANTELIN TEAM TOM’S)と太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の接触。アレジは1コーナーにストップしてリタイアとなったが、アレジは避けようのないアクシデントだと主張していた。

8周目 アレジ
アレジ「マジかよ! 理解できないよ。後ろからぶつけられてエンジンが止まった」
チーム「誰かにぶつけられた?」
アレジ「そう、太田だよ! 後ろからぶつかってきたんだ」
チーム「OK、了解。エンジン止まったんだよね?」
アレジ「ああ、ぶつけられてエンジンが止まった。みんなごめんね。正直避けようがなかった」

 そしてセーフティカーラン中の10周目にピットウインドウがオープンとなったため、このタイミングでほぼ全車がピットに。しかしタイヤ交換を終えた大湯はピットレーン上で野尻に前に立たれてしまう。

 ピット作業の目立ったミスはなかったのだが、ほんのわずかな差で首位を失ったことに、大湯は感情を爆発させた。

10周目 大湯
大湯「f※※k!f※※k! ふざけんなよ!」
大湯「もー! 完全にピットのせいで……。メカは大丈夫だからね。メカは普通によかった」
チーム「OK、落ち着いていこう。レース長くなるからタイヤ持たせていこう。でも、あまり守りに入らなくて良いからね。野尻さんにタイヤ使わせて。こっちの方がダウンフォース効いてる分タイヤ守れるから、それで食いにいこう」

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 この一斉ピットインでは、ローソンと阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)がペナルティを受けた。彼らは共にチームメイトが前を走っている状態であり、チームが2台連続でのタイヤ交換をロスなく実行するには、ある程度の間隔が必要だった。そのため彼らは前車との間隔をあけてピットレーンに入ったのだが、これがレギュレーション違反と判断された。

 この動きには、他のドライバーからもクレームが上がっていた。以下はローソンの後ろにいた宮田と、阪口の後ろにいた福住仁嶺(ThreeBond Racing)の無線。

10周目 宮田
宮田「前の無限わざと開けてるよ、ふざけんなよ!」
宮田「すごいゆっくり。邪魔なんだけど! ペナルティあるでしょこれ」

11周目 福住
福住「最悪だ……」
福住「ピット最悪だよ。阪口が前との距離をすごい開けたことで、こっちがすごい不利になった。申し訳ないけどあれはルールとしてどうなのか、考え直した方がいいよ」

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福住仁嶺, ThreeBond Racing

福住仁嶺, ThreeBond Racing

Photo by: Masahide Kamio

 また、10周目には“ほとんどの”マシンがピットインしたと表現したが、唯一ステイアウトを選択したのが平川だった。平川はペナルティ消化により後方に沈んでいたため、ここで一気に先頭に立ち、リスタート後に後続を引き離してからピットインする作戦を選んだのだ。

9周目 平川
チーム「これ全員(ピットに)入ってくるから、前に行けないじゃない? SCもう1回入るの狙ってステイアウトしようか」
平川「いやいやでも……そっか、それできるんですよね。引き離せれば。周回遅れじゃないから」
チーム「もう1回SC入るのに賭けない?」
平川「それしかないでしょ。それしかないと思います」
チーム「了解」

■野尻完勝の裏で、佐藤が殊勲の9位

 そんな平川が残り2周でピットに入ったことで首位に立った野尻は、そのままトップチェッカー。まさに完勝となったが、その裏で驚異の追い上げを見せたのが佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)だった。

 NAKAJIMA RACINGは10周目、山本、佐藤と立て続けにタイヤ交換を敢行。しかし例の通りピットレーンが大混雑する中で、佐藤は山本がファストレーン合流に手間取る煽りを食いつつ、タイヤ交換にも手こずったことで中団からほぼ最後尾まで落ちてしまった。

佐藤蓮, TCS NAKAJIMA RACING

佐藤蓮, TCS NAKAJIMA RACING

Photo by: Masahide Kamio

 しかしその後の佐藤は野尻と同等、もしくはそれを上回るペースで周回。9位でフィニッシュしてみせた。そんな彼がピットアウト直後、ポジションダウンに落胆しながらも気持ちを切り替えていく無線が印象的だった。

11周目 佐藤
チーム「こっから頑張ろう。みんな距離長く走らないといけないから。コース上で頑張ろう」
佐藤「せっかく抜いたやつも前にいる……」
佐藤「ビリから2番目ですか?」
チーム「P19。基本的には全車入ってるからね」
佐藤「ここで抜くしかないってことですよね」
チーム「そう、みんなタイヤの状況も同じだからコース上で頑張ろう」
佐藤「長いんで、落ち着いて頑張りましょう」

 

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