実に7年ぶりの勝利。GT500で“勝てる”ポテンシャルをまざまざと見せつけたヨコハマタイヤ、会心のレースに国本雄資も「本当に楽しい週末だった」
暫定結果ながら、チームとヨコハマタイヤにとって2016年以来7年ぶりとなる優勝を手にしたTGR TEAM WedsSport BANDOH。国本雄資は悔いのないレースができたと振り返った。
写真:: Masahide Kamio
鈴鹿サーキットで行なわれたスーパーGT第3戦。クラッシュにより赤旗終了となったレースは抗議により暫定リザルトが訂正され、さらにそれに対する控訴の意思が表明されるという混乱ぶり。控訴結果が確定するまでGT500クラスのリザルトは暫定扱いとなるが、現時点で優勝は19号車WedsSport ADVAN GR Supraということになっている。チーム、そしてヨコハマタイヤにとっても、2016年以来実に7年ぶりの優勝だ。
ここ数年勝利から遠ざかっていたヨコハマタイヤだったが、昨年後半から今季にかけて、“勝てるポテンシャル”を身に付けていったのは明らかだった。
昨年の第7戦オートポリスでは、24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zがチェッカーまで2位争いを展開。今季開幕戦岡山のレース序盤でも19号車が、雨でレースが混乱するまでトップ集団にとどまり続け、課題としていたウォームアップ性能の改善を印象付けた。「予選は速いが決勝で順位を落とす」というイメージは払拭されつつあった。
そんな中迎えた第3戦鈴鹿は、予選・決勝共にヨコハマ勢が躍動した。予選では24号車がトップタイムを記録し、19号車も3番手タイムをマーク。24号車は車検不合格でポールポジションが幻となり最後尾スタートとなったが、決勝はフロントロウスタートの19号車が終始優勝争いに加わり、赤旗が掲示された際には2回の給油義務を消化したチームの中ではトップとなる2番手につけていた。そして給油義務未消化の3号車Niterra MOTUL Zにペナルティが出されたことで、繰り上がり優勝を手にした形だ。
レース終了直後の暫定リザルトは3号車Niterraの優勝であり、2位として暫定表彰式を終えた19号車の国本雄資は、ウォームアップ性能の向上が今回の結果につながったと語っていた。
「予選のパフォーマンスは引き続き高いですが、プラスアルファでアウトラップや1周目でも力強く戦えるようになっています」
「今回もアウトラップの速さを活かして、(19号車よりも後に1回目のピットストップを行なった)36号車(au TOM'S GR Supra)と1号車(MARELLI IMPUL Z)を逆転できたので、そういう意味でもポジティブに捉えています」
「今回は僕たちがずっとレースをリードすることができたので、ヨコハマタイヤさん、TCD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)さん、チームには本当に感謝しています」
国本が言及したウォームアップ性能の向上については、予選後に24号車の佐々木大樹がさらに詳細に解説してくれていた。
「夏に合わせた(温度レンジの高い)タイヤのウォームアップを早くしたというよりは、寒い時でも使える、早くウォームアップできるような温度レンジの低いタイヤでも、高温をカバーできるようになったイメージです」と佐々木は言う。
「硬いものが温まるようになったというより、温まりやすいものが高温でも使えるようになった。これが大きいですね。レンジの幅が広がったという感じです」
「路面コンディションは予選中にも大きく変化しますし、決勝中は450kmも走るのですごく変わります。そういう意味でもワイドレンジはすごく重要です。僕たちが開発のメインとしているのがワイドレンジ化なので、そこが上手くいっています」
繰り返しにはなるが、第3戦の暫定表彰式が行なわれた時点では3号車が優勝という判断が下されている。後に19号車陣営含む多くのチームから抗議が出されて結果は覆ることになるが、motorsport.comが表彰式直後の国本に対し、3号車にペナルティが出されていないことについての意見を尋ねたところ、彼から出てきた言葉は不満ではなく、心からの満足感だった。それは会心のレースができたということの表れなのかもしれない。
Photo by: Masahide Kamio
「僕はそれについて意見はないです。僕たちはベストを尽くして、ミスなく最高の戦いができたので、僕はまったく悔いがないです」
「本当に楽しい週末でした」
こちらもまだ裁定が覆っていない段階、3号車に対する抗議を提出した直後のWedsSport坂東正敬監督にも話を聞いたが、優勝というのはあくまで結果論に過ぎないものの、レースを通してヨコハマタイヤの進化を伝えていくことが使命であると語った。
「僕らはヨコハマタイヤと共に戦っているし、ヨコハマタイヤの進化を皆さんにお見せしたいと思っています。僕は生涯横浜ゴムですから、チャレンジしている姿を見てほしいです」
「僕たちは去年4回ポールを獲りましたが、皆さん『いつ勝つんだろう』と思われたでしょうし、前回の富士のように2番手からスタートして12位になった時などは『ヨコハマは決勝で下がってくるでしょ』と思った方がたくさんいたと思います。ただ今回のようにレースを強く戦えていれば、ヨコハマタイヤの進化、成長を見せることができると思います」
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