抜群のタイミングでピットインし、荒れたレースを制す……松田次生「23号車で戦う20”23”年は今年しかない……運も味方に戦っていく」

　岡山国際サーキットで行なわれたスーパーGTの開幕戦、GT500クラスを制したのは、23号車MOTUL AUTECH Z（松田次生／ロニー・クインタレッリ）だった。雨が降ったり止んだりという難しいコンディションの中、セーフティカー（SC）が出る寸前にウエットタイヤに交換するためにピットに飛び込んだのが最大の勝因とも言えるが、松田は優勝記者会見で、ピットに入るならあそこしかないと判断したことを明かした。

　2023年シーズンのスーパーGT開幕戦は、結果だけ見ればポールポジションからスタートした23号車MOTULが優勝、2位にも2番グリッドスタートの3号車Niterra MOTUL Zが入ったため、順当な結果のように見える。しかし実際には、雨が降ったり止んだりを繰り返し、3度も赤旗中断となる荒れた展開。それは、3位に入ったのが、モノコック交換による5秒ストップ＆ゴーペナルティを受けた8号車ARTA MUGEN NSX-GTが入ったことでも明らかだ。

　そんな荒れた展開の中でも、チームとドライバーがしっかりと仕事をこなし、適切なタイミングでタイヤを交換できたチームが上位を手にできたということだろう。そんな中でも、優勝した23号車MOTULの松田は、”セーフティカーが入りそう”というギリギリのタイミングでピットイン……そこでウエットタイヤに履き替えることができたことで、勝利の可能性をグッと手繰り寄せた格好だ。

「今朝起きた時には、まさかこんなコンディションになるとは思いませんでした」

　そう松田は語る。

「後半苦しい戦いになると思っていました。アウトラップでは、36号車（au TOM'S GR Supra）が来ていると無線で聞かされていましたが、なんとかポジションを守ることができました。その後フルコースイエロー（FCY）が宣言された時、また雨が降ってくるという予報になったので、それからはチームに雨雲レーダーを見てもらいました。このままもっと降ってくるということだったので、SCが出るのとほぼ同時にピットに入ることができました」

　そのピットインのタイミングについて、松田はさらに詳しく説明する。

「ちょうど第1セーフティカーラインの手前にいた時に、『大きいクラッシュがあった！』と聞かされたので、僕とチームで判断して、ピットに入れました。それが大きかったと思います」

「セーフティカーラインを通過してから、車内のSCのランプがついたので、『ああ、よかった』と思いました」

　松田はギャンブル的要素はあったものの、ピットインするにはあのタイミングしかないと思ったと説明する。当時はまだ、雨は強まっていなかったのだ。

「正直、ギャンブルでもありました。あのまま雨が強まらなければ、僕らの作戦は失敗でした。でも、雨脚が強くなるなら、ピットインするのはこのタイミングしかないなという考えがありました。そうしたらすごく雨が降ってきたので、ギャンブルが成功したなと思いましたね」

　松田は運も味方につけ、2023年に23号車がチャンピオンを獲得できるようにしたいと、今後に向けた抱負を語った。

「スーパーGTは楽な戦いではありません。獲れるところで獲っておかなければいけません。そして運も必要です」

「昨年は、なんでこんなに運がないんだろうということばかり考えていました。今日は良い形で運に繋がったという感じがあります」

「23号車に乗って、20”23”年というのは今年しかありません。ですから今年は23号車の年にしたいです。ロニー選手やチームの皆んなと、堅い決意を持って挑んでいます。開幕戦から良い形で機能しましたから、ウエイトが重くなるので簡単ではないですが、次戦以降も運も味方につけて戦っていきたいと思います」

　松田はこれで24勝目。23勝という壁を越えるのは、難しかったという。しかしチームメイトのクインタレッリは、自身の”5度目のタイトル”獲得の方が難しいと語り、その壁を今年越えたいと語った。

「僕らは一緒に組んで10シーズン目ですし、今年は23号車の年でもあります。次の富士は好きなコースなので、そこで優勝したい。42kgのウエイトでどこまで出来るか分からないですが、まずは富士に向けて集中したいです」

「次生選手の23勝という壁は高かったと思います。でも、僕の5度目のチャンピオンはもっと壁が高い。その壁を越えられるように、全力で努力して頑張ります」