WECの次期ハイパーカークラスの規則骨子が発表。1規格に統一も、シャシー&ハイブリッドの独自開発が認められる方向に。水素車両の参入も?
WECのハイパーカーカテゴリーは、2030年からひとつのプラットフォームに集約され、後輪二輪駆動のみに限定されることになる。ただモノコックやハイブリッドシステムをメーカーが独自に開発することも引き続き許されることになる。
現在はLMHとLMDhの2種類の規格のマシンが走るWECのハイパーカークラス。しかし2030年からはこれが統一され、単一の二輪駆動のプラットフォームとなることが、2026年のル・マン24時間レースを前に発表された。ただ、シャシーに関しては完全オリジナルのプロトタイプを開発するか、共通メーカーのシャシーを使うかを選択することができ、ハイブリッドシステムに関しても、自社で開発することができるという。
この新しいレギュレーションは、FIA、フランス西部自動車クラブ(ACO)、そしてIMSAの3者によって共同で策定され、ル・マン24時間レースを前にした年次記者会見で明らかにされた。
この新規則では、これまでLMHとLMDhのふたつの車両規格が存在していたハイパーカークラスがひとつに統一される形となる。
現行のLMHは、シャシーを各社が独自にデザインする形であった。一方でLMDhは、ダラーラ、リジェ、マルチマチック、オレカの4メーカーが作るLMP2シャシーをベースとする必要があった。ただレギュレーションが統一された後は、前出の4社からシャシーを入手する形も、自社でシャシーを開発する形も、両方が認められるということになる。
またボッシュ(ハイブリッドシステム)、フォーテスキュー・ゼロ(バッテリー)、Xトラック(ギヤボックス)が用意する共通ハイブリッドシステムを使う必要もなく、独自に開発することを選ぶこともできる。
FIAのチーフ・テクノロジー・オフィサーのザビエル・メステラン・ピノンはこれについて、次のように説明した。
「これはバッテリーやハイブリッドシステムに関する独自の技術を推進したいと考えている一部のメーカーにとって、非常に重要なことだ」
「プラットフォームはひとつになるが、そこに至る道はふたつある。ひとつはLMDhで既に行なわれているような、共通部品を使って行なう方法。もうひとつは完全に独自の設計を行なう方法だ」
「ただしどちらの場合も、同じ技術規則の制約を受けることになる。技術仕様はどちらも同じだ」
Manufacturers will be free to develop their own hybrid powertrains or use off-the-shelf components
Photo by: Marc Fleury
ただ市販のシャシーを使うことを選択するメーカーは独自のハイブリッドシステムを使える一方で、独自のシャシーを使うメーカーは、ハイブリッドシステムも独自に開発することが義務付けられるという。
また市販シャシーを使ったとしても、スタイリングに今以上に自由度を持たせることも検討されているというが、マシンの下面には新たな空力の制約が設けられ、共通のアンダーボディやディフューザーの導入が計画されている。
「最も重要なのは、外装のデザイン、つまりアッパーボディにさらなる柔軟性を持たせるということだ。これがこの計画の精神だ」
メステラン・ピノン氏はそう語った。
またパワーユニットの最高出力は、現行の520kW(697馬力)から20kW引き上げられ、540kW(723馬力)になる予定。これはパワーユニットの内燃機関の出力向上によって達成される。このエンジンの排気量や気筒数などは制限されない。
車両の最低重量は、1030kgから1040kgに引き上げられる。
この新たな規定は5年間有効とされ、その期間中は、パフォーマンス面で著しく劣っていることが認められない限り、性能向上のための開発は認められない。
ただこの新レギュレーションの詳細は、まだまだ詰める必要があるという。ACOテクニカルディレクターのティエリー・ブーヴェ氏によれば、今回発表されたものはあくまで「ガイドライン」であり、最終的な規定は、メーカー各社が参加するテクニカル・ワーキンググループによって、今シーズン後半にかけて策定される予定であるという。
Rules for hydrogen cars in WEC have been outlined
Photo by: JEP / Motorsport Images
またこの2030年からは、ハイパーカークラスに水素燃料車を参戦させ、総合優勝を争わせる意向を固めた。この水素車両では、水素は内燃機関で使う燃料、そしてモーターに電気を供給するための燃料電池のエネルギー源として使うことが認められる。
水素燃料車の最低重量は1200kgで、従来型の燃料車との性能を同等にするために”技術等価性(Ecovalence of Technology)が採用される予定だ。ちなみにWECが復活した当初の2014年にガソリン車とディーゼル車が混走していた時にも、”技術等価性”という言葉が使われていた。
ただFIAとACOによれば、2030年に水素車両がグリッドに並ぶかどうかについては、明確ではないという。
トヨタは水素で走るレーシングカーの最大の推進メーカーであり、スーパー耐久では実際に水素燃料を使ったマシンを走らせている。また現行のハイパーカーTR010をベースにした水素燃料を使うテストカーTR LH2も開発しており、今回のル・マン24時間レースの際には、中嶋一貴がステアリングを握り、デモ走行を披露している。
昨年の富士6時間レースの際には、FIA、ACO、トヨタの3者が共同で会見を開き、水素燃料電池車の開発に向けて提携することを発表。早ければ2027年にもレースに参戦することを目指すことが明らかにされていた。
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