LMP1の“最終進化形”、トヨタTS050ハイブリッドの限界は見られずじまい?
トヨタはWECでハイパーカーによる新時代が到来することを歓迎しているが、その一方で現行のLMP1カーであるTS050 ハイブリッドの限界を探ることができないのは残念なことだと語った。
近年のWEC(世界耐久選手権)は、ポルシェやアウディといった有力な自動車メーカーが相次いで撤退したこともあり、唯一のハイブリッド搭載車である『トヨタTS050 ハイブリッド』がLMP1クラスで“1強”状態となっている。
TS050は2017年のル・マン24時間レースの予選で、小林可夢偉が3分14秒791というタイムを叩き出してサルト・サーキットのコースレコードを更新した。しかしそれ以降はノンハイブリッドのプライベーター勢とのEoT(性能調整)の影響もあり、そのタイムを上回ることはできていない。
LMP1規定は2019-2020シーズンで終了となり、来季からはハイパーカーをベースとしたLMHクラスが新たにスタートするため、TS050は今季限りでその役目を終えることとなる。トヨタは今年初め、性能調整などの制限が一切ないバージョンのTS050でル・マンのラップレコードに挑戦する計画を模索していたが、それは頓挫してしまった。
トヨタは新しいシーズンに向けてハイパーカーのプロトタイプを開発中だが、このハイパーカーではサルト・サーキットでのラップタイムが10秒ほど遅くなるものとみられている。ル・マン24時間レースの主催者であるACO(フランス西部自動車クラブ)は、現在のLMP2クラスのラップタイムに匹敵する3分30秒前後になると見積もっている。
トヨタのチームディレクターであるロブ・ルーペンは、2012年から2020年までの激動のLMP1時代を振り返る中で、今後導入されるハイパーカー規定とLMDh規定(IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権との共通規則)はコスト削減のために必要だったとしながらも、技術的に進歩を遂げたLMP1ハイブリッドマシンがWECから姿を消すのは悲しいことだと語った。
「我々はル・マンで、この最速のマシンのポテンシャルを最大限発揮させることなく、休ませているような状態だ」とルーペンは言う。
「このマシンが再度ラップレコードを更新したり、走行距離の記録を更新したりするのを見たかったから、とても残念だ。このマシンのポテンシャルを解き放てば、十分可能だったと思う」
「私としては、(LMP1は)モータースポーツ全体の中でも最も興味深い時代のひとつだったと思う。マシンは美しく、特に2014年から2017年にかけての技術とパフォーマンスのレベルは極めて高かった」
「モータースポーツの中で最もエキサイティングな時代だった」
かつてはLMP1クラスでトヨタのマシンをドライブし、現在はチームのアドバイザーを務めているアレクサンダー・ブルツも、トヨタ、ポルシェ、アウディによって築かれたWECのLMP1ハイブリッド時代は「レースとロードカー技術における新たなステップだった」と話した。
「プジョーのLMP1と同じラップタイムなのに、(トヨタのハイブリッドマシンは)燃料消費量とタイヤの消耗がプジョーの50%だったんだ。その時代にいられたことは非常にクールなことだ」
そう語ったブルツだが、彼はこの伝統ある耐久レースに新たなメーカーを惹きつけるハイパーカー時代の到来を歓迎している。
「自動車産業とモータースポーツがどのように進んでいるかを考えると、ハイパーカーは非常興味深い時代になると思う」とブルツは語った。
「ハイパーカーのコンセプトを受け入れてくれる多くのマニュファクチャラーがいることを我々は知っている」
「ラップタイムは少し遅くなるかもしれないが、それでも非常に速いマシンであることには変わりないし、コストをコントロールできるようになるはずだ」
トヨタは2018年、2019年のル・マン24時間レースを制したが、その時にはポルシェやアウディといった有力な対抗馬がいなかったことも事実。彼らは2021年にまた白紙の状態から競争を始められることを喜んでいる。
「我々はまた新しいマシンを作り、トヨタに何ができるのかを示すチャンスが与えられているんだ」とルーペンは説明する。
「我々は自分たち自身と戦うだけでなく、他のチームやマニュファクチャラーとも戦いたいと思っている」
「(LMH規定では)対等な武器によって戦わなければいけない。それは今の(LMP1における)我々にはないことだ」
「技術的に優位に立つだけでなく、BoPを管理して、ドライバーの腕やレースエンジニアリングでアドバンテージを得ることも重要だ。誰もがそれを楽しみにしていると思う」
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