ドライバーとチーム、交錯する想い……ファステストラップポイントがF1に与えるものとは?
ファステストラップに与えられるポイントは、果たしてレース終盤を面白くするのだろうか?
写真:: Steve Etherington / Motorsport Images
James Allen on F1
James Allen is one of the most experienced and insightful broadcasters and journalists working in Formula 1 today.
F1は現在、オーナーのリバティ・メディアによって、ショー的要素のテコ入れが進められている。そんな中、2019年シーズンからファステストラップを記録したドライバーにボーナスポイントが与えられることとなった。
なお、対象となるのはトップ10フィニッシュ、つまり入賞してポイントを獲得したドライバーのみとなり、文字通り“ボーナス”として1ポイントが追加で付与される。これは、下位に沈んだドライバーがノーリスクでフレッシュタイヤに交換し、予選並みのアタックをすることで10位入賞と同等のポイントを獲得してしまうことを避けるためだ。
これによって各チームはレース終盤、次のレースのためにパワーユニット(PU)やギヤボックスをセーブするのか、1ポイントのボーナスを狙ってなんとかパフォーマンスを絞り出すのかの選択を迫られることとなる。
ただ結局のところ、この1ポイントにはどれほどの価値があるのか各チームは結論を出せていない状況にある。
ここで過去のシーズンを振り返ってみる。2008年はマクラーレンのルイス・ハミルトン(現メルセデス)がフェラーリのフェリペ・マッサを1ポイント差で下して初タイトルを獲得した。しかし、この年にファステストラップポイントが導入されていれば、その回数で上回るマッサがタイトルを獲っていた計算となる。
ただ、これは1位=10ポイントだった時代。現在はその2.5倍となる25ポイントが1位に与えられるため、タイトル争いにおける“1ポイントの重み”は当時より軽くなっていると言わざるを得ない。
開幕戦オーストラリアGPにおいては、首位独走中のバルテリ・ボッタス(メルセデス)がチームの方針に逆らってファステストラップに挑戦。結果的にボッタスはファステストラップを更新した後トップでチェッカーを受け、26ポイントを獲得した。
後方車とのギャップが十分にあり、順位を落とさずフレッシュタイヤに交換ができたフェラーリ勢は、リスクヘッジの観点からそれを実施しなかった。つまり、現時点で各チームの首脳陣は、ボーナスポイントを積極的には狙わない方針のようだ。
ただ、ボッタスが無線でチームに語った「僕は26ポイントが欲しいんだ」という言葉は、彼の今季にかける意欲を物語っており、交錯するチームとドライバーの想いが垣間見えた。
ファステストラップへの挑戦にはこのような動機もある。レッドブル代表のクリスチャン・ホーナーはSkyスポーツに対し、レース終盤11位を走行し、入賞のチャンスがあったピエール・ガスリーにタイヤ交換をさせ、ファステストラップを狙わせる考えがあったことを明かした。そうすることにより、ライバルであるメルセデスが余分なポイントを獲得することを阻止できたかもしれないからだ。
レースの大勢はゴール直前に決まってしまうことが多いが、ファステストラップポイント争いは上位10台がチェッカーフラッグを受けるまで続く。そういう点でこのシステムは、視聴者に最後の最後まで関心事を提供できるとも言えるだろう。
PUやギヤボックスの消耗、チームの順位、そしてドライバーの欲……。これらがファステストラップポイントの争いにどのように関わってくるかはまだはっきりとは見えてきていない。これらは果たして、リバティ・メディアが目指すモノに適った形になっていくのだろうか。
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