スーパーフォーミュラ関係者に訊く”ストフェル・バンドーン”
来季のF1昇格が規定路線と言われるバンドーン。今回PPを獲得したバンドーンの凄さとは何なのか? 富士スピードウェイで訊いた
スーパーフォーミュラ第3戦富士の予選で、参戦3戦目にして初のポールポジションを獲得したストフェル・バンドーン。初挑戦の富士、そして路面が徐々に乾いていくという難しいコンディションの中、最適なラインを見極めてのトップタイムだった。
すでにF1デビュー(今年のバーレーンGP)も果たしているバンドーン。その凄さはどこにあるのだろうか? バンドーンが今年在籍する、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの村岡潔監督は、次のように証言する。
「ドライビングは当然速いです。英才教育をされたのか、元々才能があったのかはわかりませんが、過去のリザルトを見ても、どんなカテゴリーでも1年目にはランキング2位か3位になり、次の年にチャンピオンになっています。無難に行けば、(今年も)そういう能力を発揮して、来年F1ドライバーになるんでしょう。それくらいのポテンシャルを見せてますよね」
”F1ドライバー”の人間性
ただ村岡監督は、ドライビング以外のところにも、バンドーンの完成度を感じると語る。
「人間性のすべてに、『F1ドライバーというのはこういうことなんだな』というのを身に沁みて感じています」
「例えば、F1をスポンサードする企業のVIPがいらっしゃっても、きちっとした対応をすることができる。それができないと、F1ドライバーにはなれないんでしょう」
F1ドライバーの仕事は、走るだけではない。スポンサーのイベントに出席したり、サーキットに訪れる関係者をもてなすこと、これもF1ドライバーに求められる重要な役割である。バンドーンはまだF1フル参戦を果たしていないが、そういう役目をすでに認識し、それに応じる術を身につけている、そう村岡監督は断言する。
バンドーンは、今年限りでスーパーフォーミュラへの挑戦を終え、来季はF1にステップアップするのが規定路線と言われている。しかしそうなった場合、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGとしてはバンドーンを1年限りで手放すということになるわけだが、それについて村岡監督は「来年いなくなるのは、全然残念じゃない」と語る。
「そういうドライバーがウチに乗ったということが、何よりも光栄ですよね。F1というヒエラルキーのトップを目指すドライバーが、本当に旬な時に我々のマシンに乗ってくれるわけですから。本当に旬のドライバーの凄さを、感じています」
日本人ドライバーとの”走り方”の違い
「縦のグリップの使い方がすごく上手い」と語るのは、ホンダの佐伯昌浩スーパーフォーミュラ・プロジェクトリーダーである。
「日本人ドライバーの多くは、コーナリング中の速度を下げない方向なんです。でもバンドーンは、ブレーキでしっかり止めて、クルッと向きを変えて、横Gがない状態でドンと加速していくような走り」
また、彼のライン取りも独特なのだという。
「ヨーロッパのグリップの低いサーキットを走っていたこともあってか、走行中は色々なラインを試しています。例えば、ブレーキが一番効くラインを探しながら、走っていたりするんです」
スーパーフォーミュラ第3戦の予選は、まさにこのライン取りが重要となった。その時のバンドーンのラインは「僕とは違った」と、彼の後方200〜300mのところを走り予選3位になったジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)も語っている。つまり佐伯プロジェクトリーダーが言うように、”色々なラインを試すこと”が、ポールポジション獲得に大きく貢献したと言うことができるだろう。
セナより上かもしれない
さらに佐伯プロジェクトリーダーは、その才能を絶賛する。
「性格は常に冷静で、温厚ですね、頭も相当良いと思います」
それが、レースぶりにも活きていると佐伯リーダーは語る。
「彼は天才ですね。ひょっとしたら、(アイルトン)セナより上なのかもしれません」
「(ミハエル)シューマッハーが出てきた時も、上からレースを見ているような感じがありましたが、それに近いレベルのドライバーなのかもしれません。まだ若いし、モータースポーツの歴史を変えるドライバーになる可能性もあります」
そして最後に佐伯プロジェクトリーダーは、こう付け加えた。
「ヨーロッパで走っている松下(信治)をはじめ、日本人ドライバーたちにも頑張ってもらいたいですね」
富士スピードウェイ戦はブレーキトラブルでリタイアとなってしまったバンドーン。しかし、開幕戦で表彰台、ここ富士でポールポジションと、その才能をしっかりと発揮している。世界中から注目を集めるその存在は、参戦する他のドライバーにも良い刺激となっているはずだ。
昨年のスーパーフォーミュラ王者、石浦宏明(P.MU / CERUMO・INGING)のレース後の言葉が印象的だった。
「1周目の1コーナー、僕としては絶対に(バンドーンに)競り負けたくなかった。結局止まり切れませんでしたけど、負けなくてよかったです。相手がバンドーンだからという思いは、もちろんありましたよ。それを意識しすぎましたね」
Additional reporting by 梅原康之
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