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F1分析|なかなかスタートできず……ウエットコンディションのレースが難しくなっている原因は? 

シンガポールGPと日本GPが雨に見舞われ、レースのスタートディレイや中断が発生した。F1はウエットコンディションで問題を抱えているのだろうか。

Fernando Alonso, Alpine F1 Team A522

写真:: Alpine

 F1シンガポールGPは決勝レース前に豪雨に見舞われ、1時間ほどスタートディレイとなったが、その翌週の日本GPも悪天候で長時間の中断となったことで、ウエットコンディションにおいてF1が問題を抱えているのではないかという議論が、呼び起こされた。

 一方で、過去F1では何度もウエットコンディションで名勝負や、素晴らしい走りが繰り広げられてきた。1985年のポルトガルGPでのアイルトン・セナ、1996年のバルセロナGPでのミハエル・シューマッハ、1994年の鈴鹿GPでのデイモン・ヒル……目の当たりにした者が後世まで語り継ぐような走りはレースが開始されなければ実現しないというのは言うまでもないだろう。

 そのため、最近のF1は「リスクを嫌いすぎている」という批判は避けられないだろう。マシンの安全基準がかなり高くなっているのだから、世界最高のドライバーたちが自らの手で問題を解決することが許されるはずだと主張する人はたくさんいるのだ。

 しかし、リスクに対する許容範囲は時代とともに変化しており、2022年型F1マシンがウエットコンディションで走行することをより困難にしている決定的な要因もある。

 motorsport.comは、F1ドライバーで構成される団体であるGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエイション)の会長であるアレクサンダー・ブルツにこの問題についての見解を聞いた。すると彼は、いくつかの問題点を指摘した。

The Safety Car Max Verstappen, Red Bull Racing RB18, Charles Leclerc, Ferrari F1-75, the rest of the field for the restart

The Safety Car Max Verstappen, Red Bull Racing RB18, Charles Leclerc, Ferrari F1-75, the rest of the field for the restart

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

安全基準と意識の変化

 ウエットコンディションでの走行には、マシンやタイヤのデザインといった物理的な要素もあるが、FIAが安全だと判断するレベルの変化も重要な要素だ。

 安全性の向上はF1にとって歓迎すべきことであり、各関係者はマシンの安全性を高めるために多大な努力を払ってきた。それだけに、ひどい雨の中でドライバーを走らせることに全く無頓着では筋が通らないだろう。

 1998年ベルギーGPで、12台が絡むF1史上最大の多重事故に巻き込まれたブルツは、次のように語っている。

「世界全体がより安全第一の態度に移行している」

「一方で、これは良くないことで、スポーツにおいてあってはならないことだと言うこともできる。しかし、このスポーツは、概してパフォーマンスを低下させることなく安全性を向上させることができるという点で、非常にセンセーショナルだと思う」

「しかし法律や責任、難しい法的な管轄や事実から目をそらすことはできない。それはスポーツや社会に絶えず影響を与えている。つまり、それが一因となっている」

 社会の変化もまた、雨による遅延を大きな問題にしている一因となっている。数十年前なら、ファンは数時間待つことを何とも思わなかっただろうと彼は考えている。

「その時代は、みんなもっとずっと我慢していたんだ」

「我々の生活は、注目されているスパンがより短くなっている。自分の都合に合わせて物事をこなしたいので、忍耐強くはないんだ」

「おそらく以前は、30分のディレイが今ほどイライラするものではなかったと記憶している。それは事実だ」

Pirelli wet weather tyres

Pirelli wet weather tyres

Photo by: Lionel Ng / Motorsport Images

タイヤの変化 

 ウエットコンディションでの走行可否を決定する重要な要素のひとつがタイヤだ。

 アクアプレーニング現象が起きない程度にタイヤがグリップしていれば、走行できる可能性がある。しかしいくつかの要因が重なり、現在はよりギリギリの状況になっている。

 ブルツは、タイヤの変化について次のように説明する。

「1990年代から2000年代にかけてのタイヤ戦争の時代に、タイヤをユニークなものにしていた化学物質や軟化剤、特殊なオイルを、タイヤメーカーはもはや使うことを許されていない」

「しかも、このタイヤはワンメイク。だから、グリップを上げようと思えば、ピレリならきっとできるだろうけど、コスト的な問題もある」

「タイヤの幅も広くなっている。これはより重要な要素かもしれない。よりアクアプレーニング現象が起きやすくなるし、接触面が減りやすくなる。溝が広くなれば、それだけブロックがバラバラになりやすくなる」

 ピレリはフルウエットタイヤについて、時速300kmで走行時に1秒で85リットルの排水能力を持っているとしている。

 ピレリのマリオ・イゾラは、「フルウェットは、インターミディエイトの3倍の水を空中に撒き散らしている」と、日本GPで説明した。

 しかしウエットタイヤの難問は、路面から水を排水すればするほど、空気中の水しぶきが増え、視界が悪くなることだ。

 そのため、単に排水性能のよいタイヤを設計すればよいというものではない。

 さらにピレリは、フルウエットタイヤとインターミディエイトタイヤの性能について、それぞれがカバーする路面コンディションが”クロスオーバー”している必要があり、現状のように両者が離れすぎていてはいけないという点も考慮する必要がる。

 イゾラは「タイヤを修正するツールはある。問題は視認性だ」と付け加えた。

「過去にはモンスーン用タイヤもあったが、ウエット、インターミディエイト、スリックと、より広い範囲でクロスオーバーさせるために、今のような製品を作ることになった」

「トレッドパターンを変更することもできるが、視界が悪くなると、いずれにしても走れなくなるから、正しい方向とは思えない。そうすると、インターミディエイトとのクロスオーバーができなくなり、さらに悪化する危険性がある」

Pierre Gasly, AlphaTauri AT03

Pierre Gasly, AlphaTauri AT03

Photo by: Red Bull Content Pool

マシンの変化

 10数年前、ひどいコンディションで行なわれたレースとくらべて、ダウンフォースレベルが大きく変化していることも忘れてはいけない。

 そして今年、マシンがグラウンド・エフェクトカーに変わっていることも大きく影響している。

 フロア下のベンチュリ・トンネルでダウンフォースを稼ぎ、乱気流の影響を最小限に抑えてバトルを激しくするというコンセプトの新世代マシンは、ウエットコンディション時により激しく水しぶきを巻き上げ、視界を悪くすることにつながっているようだ。

 ブルツは「今はダウンフォースがどんどん大きくなっている」と付け加えた。

「車幅も広くなり、水を吸い上げる面積も広くなっている。水しぶきの量も、10%以上多くなっている」

Max Verstappen, Red Bull Racing RB18, battles with Charles Leclerc, Ferrari F1-75, for the lead at the start

Max Verstappen, Red Bull Racing RB18, battles with Charles Leclerc, Ferrari F1-75, for the lead at the start

Photo by: Steve Etherington / Motorsport Images

ドライバーの姿勢は変わっていない!

 悪条件の中でレースが行なわれないことについて、ドライバーを批判するファンもいるかもしれない。しかしブルツは、コックピットに座るドライバーの態度が昔と変わっていないと強調した。

 十分に安全であるなら、彼らはよろこんで レースに参加するのだという。

「ドライバーは、アクアプレーニングがあっても、ウェットでのドライビングは楽しいと言い続けている。自分ひとりで運転しているときの運転は、超チャレンジングで素晴らしいよ」

「しかし、何も見えなくなった瞬間に、ほんの少しの問題が死亡事故につながるような超高リスクにさらされるんだ」

「このような公的、商業的、危険なプレッシャーの中で、安全を第一に考えるレースディレクターに拍手を送りたい。だが、もっとうまくできるだろうか? その答えはイエスだ」

「この状況を改善する方法を見つけるために、我々はできる限りこのスポーツをサポートしたい。しかし、ファンや関係者に、何も見えない雨の中を走ることの大変さと勇気を伝える手助けもしたい。実際、何も見えないんだ」

 タイヤやマシンのデザインといった要素はすぐに解決できるものではない。そのうえで、GPDAで検討されているような”インフォメーションラップ”のようなアイデアが、F1が直面している問題解決に向けた小さな一歩となるのだ。

 
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