7回王者の危機を救ったリバースギヤ……コースオフしたハミルトンの“逆走”が許されたワケ
ルイス・ハミルトンはF1エミリア・ロマーニャGPでコースオフした際、逆走して本コースに復帰したが、この行為がなぜ合法なのかについて、レースディレクターのマイケル・マシが説明した。
写真:: Charles Coates / Motorsport Images
数多くの波乱が起こったF1エミリア・ロマーニャGPの中でも、王者ルイス・ハミルトン(メルセデス)がコースオフしたシーンは、最も印象的なシーンのひとつだったと言えるだろう。
ハミルトンはトップのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を追いかける31周目、バックマーカーのジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)をトサ・コーナーでインからパスしようとしたが、その際にまだ乾いていないイン側の路面に足をとられ、そのまま真っ直ぐコースオフ。バリアに軽くヒットしてしまった。
ハミルトンは何とかして脱出を試みたものの、バリアに突っ込んだ状態であるため、明らかに後退する他ない状況であった。そしてギヤをリバースに入れたハミルトンは、後退しながらグラベルを突っ切って本コースに戻り、そこから再発進した。
無事レースに戻ったハミルトンは壊れたフロントウイングの交換などもあって周回遅れになってしまったが、直後にレースが赤旗中断となったことに助けられてトップと同一周回に。再開後は追い上げを見せて2位でチェッカーを受けた。
しかしこのハミルトンの動きには眉をひそめる者も多く、後退しながら本コースへ戻る行為は危険かつルール違反なのではないかという声も挙がった。逆走による罰則と言えば、1989年のポルトガルGPで、当時フェラーリのナイジェル・マンセルがピットレーンでリバースギヤを使用して失格裁定が出た事件が有名だ。
ただ、この日のハミルトンの動きはFIAによって合法とみなされた。それはなぜなのか? その理由はいたってシンプルだ。
まず第一に、ピットレーンを他人の力を借りずに自ら逆走してはいけないというルールは今も残っている。これはF1スポーティングレギュレーションの第28.3条に明記されている。
しかしその一方で、コース上でのリバースギヤ使用を具体的に禁止するような条文はどこにもないのだ。
実際、F1マシンにリバースギヤの搭載が義務付けられているのは、インシデントに遭遇したドライバーが自らの力でマシンを後退させ、リカバリーできるようにするためである。
逆走をする際にドライバーに求められていることは、“安全な方法で行なうこと”、それだけである。
スポーティングレギュレーションの第27.3条には「走路を外れた車両のドライバーは再度復帰することができるが、それが安全であることが確認され、それにより持続的なアドバンテージを得ることが一切ない場合にのみ行なうことができる」とあり、第27.4条には「車両はいかなる時にも、不必要に速度を落とし不安定な走行、あるいは他のドライバーまたはそれ以外の人に危険を及ぼす可能性があるとみなされる方法で運転できない」とある。
ハミルトンのマシンがコースを外れている間、F1レースディレクターのマイケル・マシは、チームの無線交信に耳を傾けながら状況を観察していた。そしてマシは、トラフィックの状況やコース上での現在地などがハミルトンに適切に伝えられ、安全な形でコース復帰がなされたことを確認していたのだ。
「グラベルトラップから本コースの端までリバースで進んでいた」とマシは話す。
「ルイスとチームとの無線に耳を傾けていたが、彼らは位置情報について彼に絶え間なくアドバイスしていた」
「だからあの状況では、私はスチュワードに報告しようとは思わなかった」
マシはまた、このようなインシデントは常にケースバイケースで判断されるものであるため、ハミルトンがもし危険なやり方で逆走していた場合には、裁定は違ったものになっていただろうと付け加えた。
なおハミルトンはこの時、グラベルで立ち往生してもたついている時間が長かったように見えたが、彼はリバースギヤに入れるのに時間がかかってしまっていたようだ。
「リバースギヤになかなか入らないからリバースボタンを押していたんだけど、いつまでたっても作動しなかった」
ハミルトンはそう説明した。
「うまくいくとは思わなかった。一回リバースに入れた後、スピンをさせてコースに戻ろうとしたけど、またバリアの方に行ってしまった。だから再度リバースに入れるのに時間がかかったんだ」
「逆走している時は、とにかく後ろ向きに走り続けようとしていた。それができなかったら、まだ僕はまだあそこにいただろうね。だから嬉しいよ」
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