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特集|F1レギュレーションはこれまでどう変わってきた? これまでの変遷とこれから

F1のレギュレーションとは何か、どのように、そしてなぜ変化してきたのか……今後どう変わっていくのかをご存知だろうか? ここではF1レギュレーションの変遷とこれからをご紹介しよう。

Juan Manuel Fangio, Maserati 250F

写真:: LAT Images

 今年のレギュレーションはなぜ変わったのかをご存知だろうか? これまでの変遷とこれからどう変わっていくのかをまとめてみた。

 1950年に発足して以来、F1は常に進化を続けてきた。そしてフォーミュラ(規則)とその名に刻まれている通り、マシン技術面を統括するテクニカルレギュレーションと、競技面を統括するスポーティングレギュレーションがF1を定義してきた。

 そしてレギュレーションは、安全性の向上と限界に挑むF1チームの飽くなき開発意欲を抑制するべく、過去幾度となく変更されてきた。

 2022年シーズンに向けては、”ショー”としての改善を目指し、過去40年で最大規模のレギュレーション変更が行なわれた。問題があると言われてきた従来レギュレーション下での2021年が、最も刺激的なシーズンのひとつではあったが……。

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レギュレーションはなぜ変わる?

 どんなスポーツであれ、そこに参加する者の目的は勝つことであり、F1の場合はコース上で誰よりも速いマシンを手にすることが欠かせない。そのためF1チームは何百億円もの資金をつぎ込み、レギュレーションはそれを阻止するために変更され続けてきた。

 ブラウンGPを2009年のワールドチャンピオンに導いたといっても過言ではない「ダブルディフューザー」のように、レギュレーションには”抜け道”が見つかることもある。そうした発見がトレンドになることもあれば、それが不公平、もしくは再現にコストがかかり過ぎると判断されれば、レギュレーション変更でパッチが当てられることも多い。

 では、なぜどこまででも速く走ることができるようにはなっていないのだろうか? それはストレートでの最高速が上がれば上がるほど、コーナリングスピードが上がれば上がるほど、万が一の危険度が高まるからだ。

 無論、マシンのみならずサーキット設備でも安全性を高める取り組みが続けられてきた。マシン横転に繋がるうねったグラベルトラップは取り除かれ、より安全なバリアでコースの周りは守られている。

 しかしその”安全”にも限界は存在し、そこを越えた途端に我々は血を見ることになる。だからこそ、レギュレーション変更を通じて、速くなりすぎないようマシンやエンジン、パワーユニット(PU)が制限されてきたのだ。

 ただレギュレーション変更はマシンデザイナーとしてみれば、”翼”をもがれたようなモノ。レギュレーションの中でいかに早く策を編み出し、マシンに正しく落とし込むかに奔走することになる。

Juan Manuel Fangio, Alfa Romeo 158/50 8

Juan Manuel Fangio, Alfa Romeo 158/50 8

Photo by: Motorsport Images

F1最初のレギュレーションはどんなモノ?

 F1が誕生した1950年当時、公式レギュレーションはレースプログラムの巻末に記載されていた。わずか3ページと現代のレギュレーションでは目次だけで埋まってしまいそうなページ数に、参加費(1台あたり800円)とテクニカルレギュレーション、賞金(優勝者には8万円)などが書かれていた。

 当時のテクニカルレギュレーション第5条を見てみると、「CSI(国際スポーツ委員会)が規定した国際F1に準拠した4輪のレーシングカー」のみ参加が認められるとして、その具体的なレギュレーションが3つ記載されている。

  • 1.5リッターのスーパーチャージドエンジン、もしくは4.5リッターの自然吸気エンジンを搭載しなければならない。
  • エンジンとコックピットの間には、炎が侵入することを防ぐための”何らかの”「保護」が必要である。
  • 各マシンには追い越しをかけるマシンの前方を塞がないために、2つのミラーが必要である。

 この3つだけ……実に単純明快だ。

 一方、スポーティングレギュレーションでは、ピットストップは燃料補給のために1回だけ、マシンに作業できるのは3人までと決められていた。シートベルトやヘルメットの着用義務などは定められていなかった。

レギュレーションによりF1はどう変化してきた?

 誕生から最初の20年間はそれほど大きな変更はなかったが、1970年代に入るとサーキットは短縮され、おなじみの2列のスターティンググリッドが導入された(それまでは1列のグリッドが多かった)。そしてレース距離は最大200マイル(約320km)に制限されるようになった。

 1980年代に入ると、バーニー・エクレストンが発足させた利権関係を司るFOM(フォーミュラワン・マネージメント)の傘下に様々なイベントが組み込まれると同時に、フォーマットが標準化。1984年には「スーパーライセンス」が導入され、ドライバーがF1を戦う際にはこのスーパーライセンスを取得することが義務付けられた。最近ではライセンスの発給基準がより明確化され、他カテゴリーなどで経験を積み、”ライセンスポイント”を40ポイント以上獲得する必要があると定義された。また現チャンピオンのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が17歳という異例の若さでF1デビューを果たしたことで、2016年からは「満18歳以上であること」など、F1ドライバーの極端な低年齢化を防止する項目が追加された。

予選フォーマット

 1950年から1996年までの約50年間、F1の予選は金曜日と土曜日に2回行ない、両セッションでの最速タイムでグリッドを決定するというフォーマットを採ってきた。

 しかし1996年から予選は土曜日だけとなり、与えられた1時間(12周)のうちにドライバーがタイムアタックを行なうというフォーマットに変更された。このフォーマットは7年間続いたが、チームがガレージにマシンを留める時間が長すぎるとして変更された。

 2003年からは”スーパーポール”方式の予選に変わり、ドライバーは順に1周ずつタイムを計測するように。セッションは2段階に分けられ、まずドライバーズランキング順にタイムを計測し2回目の出走順を決め、2回目のタイムでスターティンググリッドを決定した。

 導入後はふたつのタイムを合計したモノでグリッドを決定するなどの微調整が行なわれたが、セッション中に路面状況が変化するという欠点からこのフォーマットは3年という短命に終わった。

 2006年からはQ1、Q2、Q3と3つのミニセッションに分けられたノックアウトフォーマットの予選が使用されている。

 2021年からはその予選フォーマットに加えて、「スプリント予選」が導入されている。現在は特定のイベントのみで実施されているこのフォーマットでは、通常の予選を金曜日にずらし土曜日にレース距離100kmのスプリントを実施。その順位で日曜日の決勝レースのスターティンググリッドを決定する。

 2022年から「スプリント」と名称が改められ予選ではなくなったものの、最終的なグリッドを決めているため、実質的な予選的な立場にあると言える。

Phil Hill, Wolfgang Von Trips and Richie Ginther lead the start

Phil Hill, Wolfgang Von Trips and Richie Ginther lead the start

Photo by: Motorsport Images

ポイントシステム

 F1のポイントシステムは当初、上位5名までが入賞。1位から8pt、6pt、4pt、3pt、2ptと順に割り当てられ、1961年からは入賞は6名まで、勝者は9ptが与えられるように。このシステムは30年間続いたが、1991年には1位に与えられるポイントは10ptと引き上げられた。

 2003年には1位から10pt、8pt、6pt、5pt、4pt、3pt、2pt、1ptと8名まで入賞範囲が広がり、2010年からは現行のシステムに。上位10人に25pt、18pt、15pt、12pt、10pt、8pt、6pt、4pt、2pt、1ptの順にポイントが与えられるよう抜本的に変更された。

 2019年からは、レース中のファステストラップを記録したトップ10圏内のドライバーに1ptが与えられるように。2021年から導入されたスプリントは、初年度では上位3名に3pt、2pt、1ptが与えられていたが、2022年は1番手から8pt、7pt、6pt、5pt、4pt、3pt、2pt、1ptと付与されるように変更された。

レギュレーション変更によりF1マシンはどう変化してきた?

 70年を超えるF1の歴史の中で、レギュレーションは様々な理由で変更されてきた。ここでは、いつ、どのような理由で変更されてきたかをご紹介する。

安全第一

 F1では1960年代に初めて、ロールバーや脱出が容易なコックピット、耐火設備、消化器の装備、ヘルメットやレーシングスーツの装着義務、バリアとして藁を使用することを禁止するなどの大規模なレギュレーション変更が行なわれ、安全性の向上が図られた。

 1970年代には,グランドエフェクトカーなどエアロダイナミクスの進歩により平均スピードが急激に上昇。サーキットの安全性も厳しく問われるようになった。

 この10年間には現在まで続く重要な安全基準がふたつ導入された。マシンは「セーフティ・ブラダー」と呼ばれる燃料タンクに燃料を入れ、ドライバーが5秒以内にマシンから脱出できるように定められた。

 1980年代にはグラウンドエフェクトカーが禁止されたものの、ターボチャージャーによる大出力エンジンの登場などエンジン技術の進歩により、高速化に歯止めは効かなかった(それがF1の常ではあるが)。

 この10年でそのターボエンジンも禁止され自然吸気へと変更。安全面ではクラッシュテストが導入され、マシンにはカーボンファイバーがF1で普及したこともあり、「サバイバルセル(モノコック)」が登場した。

 1985年にはサバイバルセルがマシン前部、その3年後にはセル全体をマシンに搭載するよう定められた。また、フロントアクスルよりも後ろにドライバーの足が来るようにレギュレーションが変更された。

Start: Ayrton Senna, Williams FW16, Michael Schumacher, Benetton B194

Start: Ayrton Senna, Williams FW16, Michael Schumacher, Benetton B194

Photo by: Motorsport Images

イモラの悲劇と革命

 1990年代初頭、F1では技術革命が花開き、「アクティブサスペンション」や「トラクションコントロール」、「ABS」など現代の市販車にも通じる様々な手法によってマシンスピードは向上していった。

 そうしたテクノロジー開発に大量の資金を投入できるトップチームとそれ以外のチームとの間に大きな差がつき始めたことで、1994年からはそうした”ハイテク装備”が禁止された。

 ただマシンスピードの抑制にはつながらず、この年イモラで行なわれた第3戦サンマリノGPでアイルトン・セナとローランド・ラッツェンバーガーのふたりを喪った。彼らの死を教訓に、この日から今日まで続く新たな安全に対する取り組みがスタートした。

 この年の第5戦スペインGPからはフロントウイングの最低地上高が上げられ、ディフューザーが縮小。第9戦ドイツGPからはフロアに「スキッドブロック」の追加が決定。矢継ぎ早にマシンの速度を抑えるエアロダイナミクス規制が行なわれた。

 同時に安全面での改善も図られ、コックピットにはヘッドレストが追加。モノコックのサイド面からのクラッシュテストが強化された。サーキット側でも変更が加えられ、ピットレーンには速度制限が設けられ、30近いコーナーがハイリスクと判断され、変更あるいは廃止となった。ランオフエリアは、横転やエアボーンの危険があるグラベルからアスファルトに変更された。

 翌1995年からは2021年まで続いたフロア面に段差を設けた「ステップドボトム」が採用され、1990年代の終わりにはエンジン出力が低下。最大車幅が狭められ、メカニカルグリップを低下させる溝が入れられた「グルーブドタイヤ」が導入された。こうしたレギュレーション変更により、コーナリングスピードが全体的に下げられた。

 2000年代に入ると、ドライバー頭部の前方への動きを抑制し首の負傷を低減する「頭部・頸部支持システム(HANS)」が導入。エンジンパワーが下げられた他、エアロダイナミクスでもスピード抑制を目的としたレギュレーション変更が続いた。

 F1での安全は守られたようにも思われたが、雨の2014年日本GPではクラッシュしたマシンの撤去作業を行なっていた重機にコースオフしたジュール・ビアンキが突っ込み、頭部を損傷。昏睡状態となっていたが翌年息を引き取った。F1での死亡事故はセナとラッツェンバーガーから21年ぶりだった。

 ビアンキの前にも、前車から飛んだ小さなバネがフェリペ・マッサのヘルメットを貫通するという事故も起きていたこともあり、2018年からはマシンから露出した(もちろんヘルメットは被るが)ドライバーの頭部を衝撃から守る「頭部保護システム(ハロ)」が導入された。

 天使の輪のように見えることからそう命名されたこのデバイスは、導入当初はフォーミュラカーの美観を損ねるとして反発もあった。しかし、2020年のバーレーンGPではロマン・グロージャンがコース脇のガードレール突き破る大クラッシュを喫した際に、グロージャンの頭部を守るなど、安全面で大きな役割を果たしている。

 スピードが織りなす興奮こそがF1の醍醐味。しかし死者を出してしまっては元も子もない。F1を始め全てのモータースポーツで、安全性の追求に終わりはない。

The scene of the huge crash for Romain Grosjean, Haas VF-20

The scene of the huge crash for Romain Grosjean, Haas VF-20

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

オーバーテイクの増加とサステナビリティ

 安全性やスピードの抑制と同時に、過去10年間以上F1は、テクニカルレギュレーション変更でオーバーテイクの増加を目指してきた。

 エアロダイナミクスを低減させる代わりにスリックタイヤの復活などでメカニカルグリップを上げ、追い抜きの増加を目指した2009年は、KERS(運動エネルギー回生システム)が使用可能に。ただダブルタイトルを獲ったブラウンGPを筆頭に非搭載マシンの速さが光り、モーターとバッテリーの搭載による重量増のデメリットにより翌2010年はF1チームで形成する組織「FOTA」によって使用が自粛されていた。

 しかし2010年からはマシン最低重量が引き上げられたこともあり、KERSは復活。F1全体として本格的に回生エネルギーによる電動パワーを重視する路線を進むこととなった。

 2011年からはストレートでの追い抜きを促進する可変リヤウイング、DRS(ドラッグ・リダクション・システム)が導入。決勝レースでは、前車から1秒以内の状態で検知ゾーンを通過すると、続くDRS区間でリヤウイングのフラップを開き、空気抵抗を減らすことができる……平たく言えば、車速を伸ばすことができるのだ。

 この頃、リヤウイングをストール状態にすることで車速を上げる「Fダクト」や高温かつ高速の排気ガスを利用しダウンフォースを高める「ブロウン・ディフューザー」、複雑なエンジンマッピングなど各F1チームが発明したテクニックはことごとく規制されていった。

 2014年からは現行のエンジン、否、PUレギュレーションが導入された。エンジンではなくPUと呼ばれる理由は、”ハイブリッドエンジン”となったため。1.6リッターV6ターボエンジンに加えて、運動エネルギー回生システム(MGU-K)と熱エネルギー回生システム(MGU-H)のふたつの回生エネルギーシステムがマシンに搭載されることとなった。

 PUはエンジンやMGU-K、MGU-Hなどコンポーネントごとに1年間で使用できる基数が定められた。このPU規定は現在も使用され、2022年からは2026年の新PU規定導入まで開発が凍結される。

 2010年代後半には車幅が1998年当時に戻り、タイヤ幅も20%広げられた。複雑化が進んでいたバージボードやフロントウイングが簡素化され、後方乱気流の低減とオーバーテイクの増加を目指した。しかし目に見える成果は上がらず、2022年からは根本的なテクニカルレギュレーションの改革による”バトルができる”F1マシン導入が目指された。

Charles Leclerc, Ferrari F1-75

Charles Leclerc, Ferrari F1-75

Photo by: Steven Tee / Motorsport Images

F1に新時代到来

 今季から導入された新テクニカルレギュレーション。本来は2021年に導入される予定だったが、新型コロナウイルスの影響により1年延期された。

 それまでのマシンはフロントウイングやリヤウイングなどのエアロパーツで多くのダウンフォースを得ていたため、追従するマシンは後方乱気流により追い抜くまで接近することは困難だった。調査によると、2021年型マシンは前走車から3車身分接近するとダウンフォース全体の35%を失い、1車身分まで近づくとその50%を失っていたという。

 2022年からの新レギュレーションでは、1982年以来初めてグラウンドエフェクトカーが復活。フロアでほとんどのダウンフォースを稼ぐことで、後方に流れる乱気流を低減することを狙った。

 レギュレーションの研究段階では、フロントウイングを完全になくした状態でのダウンフォースを調べる実験も行なわれたが、グラウンドエフェクトカーはその特性上低速コーナーでは十分にダウンフォースを発生できないため、全く新しい形状ながらもフロントウイングは続投となったという。

 リヤウイングも後方乱気流を低減するようデザインが刷新され、併せて導入された18インチホイールの上部を覆うようにフロントにはウイングレットが追加された。ホイールにはダーティーエアを低減するカバーが標準パーツとして装備されている。

 また、燃料にはエタノールを10%使用した「E10フューエル」を導入。シャシーにはより厳しいクラッシュテストに合格するよう求められ、より安全かつ重くなった。そのため、今年のマシンの最低重量は798kgと過去最大に引き上げられた。

よりサステイナブルなPUへ

 前述の通り、新しいPUレギュレーション導入は2026年シーズンに予定されている。その詳細はまだ未定となっているが、複雑かつ高額なMGU-Hは廃止される見通しとなっている。

 一方で、MGU-Kからの出力は現在の120kWから350kWへ引き上げられ、100%サステイナブルな燃料が使用されるという。ただ、全体としてのパワーは低減するため、スピードを取り戻すべくマシン寸法は現行マシンよりも小さく、車重は削減もしくは重量増が抑制されることが予想されている。

 時代に併せてF1レギュレーションは様々な形に変容してきたが、世界最速を目指そうとする人々の心は変わらない。人類の叡智が結集するという点は、不動かつ唯一無二であり続けるだろう。

 
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