美しきオーバーテイク……クビアトがイモラで見せた美技は、”信頼感”のおかげ?
アルファタウリ・ホンダのダニール・クビアトは、F1エミリア・ロマーニャGPのセーフティカー明けにルクレールを抜いたシーンを解説。ルクレールの動きを信用できたからこそオーバーテイクを仕掛けることができたと語った。
写真:: Charles Coates / Motorsport Images
アルファタウリ・ホンダのダニール・クビアトは、先週行なわれたF1エミリア・ロマーニャGPを4位でフィニッシュした。この好結果には、レース終盤のセーフティカー明けのリスタートをうまく決めたことが大きく作用したと言えよう。
クビアトはレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがコース脇にマシンを止めたことでセーフティカーが出動した際、8番手を走っていた。チームはこのタイミングでクビアトをピットに呼び戻し、ソフトタイヤを履かせた。しかもクビアトは、ポジションを落とすことなくコースに復帰することができた。
マクラーレンのランド・ノリスがピットストップを行なったことでクビアトは、7番手でレース再スタートを迎えた。ここからの彼の動きは凄まじかった。
再スタート直後にセルジオ・ペレス(レーシングポイント)とアレクサンダー・アルボン(レッドブル)を抜くと、ピラテッラでフェラーリのシャルル・ルクレールを豪快にオーバーテイクし、わずか半周の間に4番手まで浮上してみせた。
その後は前を行くルノーのダニエル・リカルドにプレッシャーをかけ続けたが、イモラは抜きにくく、結局は4位でのフィニッシュとなった。
クビアトはmotorsport.comの取材で、再スタート時の秘訣について明かした。曰く、レースが再開される前に、躊躇することなく動けることは分かっていたという。
「ハードタイヤを履いている人たちよりも、タイヤのウォームアップという点でアドバンテージがあるのは分かっていた。だから、できるだけ早いタイミングでそれを活かさなければいけなかった。そうしないと、ハードタイヤも暖まってしまうからね」
クビアトはそう語った。再スタート時、前をいくリカルド、ルクレール、アルボンは、いずれもセーフティカー中にタイヤ交換をせず、ステイアウトを選択したドライバーたちだった。
「だから僕は、最終コーナーからの立ち上がりに気をつけて、良い形でスリップストリームを得ようとした」
「セルジオはどこに行こうか、少しためらっているように見えた。そしてその後、彼は右に動いたんだ。だから僕は自分自身に対して言ったんだ。『よし、アレックス(アルボン)のマシンのスリップストリームを使って、左に行こう!』とね」
「僕は、彼がおかしな動きをしないことを祈っていた。あの速さでそういう動きをされてしまうと、重大な結果に繋がる可能性があるからね。しかもとても狭くて、スペースもあまりなかった。それでも、ターン1(実際にはターン2)へのブレーキングはとてもうまくいった」
ペレスとアルボンを抜いたクビアトはそれで満足せず、間髪を入れずにルクレールにも襲いかかっていった。前述の通り、ハードタイヤが温まる前に、仕留める必要があったのだ。
高速のピラテッラ(ターン9)は、オーバーテイクがしやすいコーナーだとは言えない。しかしクビアトは、トサコーナー後の短いストレートでフェラーリのスリップストリームに入り、一気に抜きにかかった。
「時々、物事についてよく考えなきゃいけないことがある」
ルクレールを抜いた動きについて、クビアトはそう語り出した。
「彼は、僕ほど自信を持って走れていなかったことは分かっていた。彼のタイヤは冷えていたからね。だから僕は、『彼がどう反応するか見てみよう』というようなことを考えたんだ」
「トサコーナーから良い形で脱出することができた。僕はできるだけ良い形でトサコーナーを立ち上がり、良いトラクションを得られるように準備していたんだ」
「少しブーストをかけ、良いスリップストリームを使うことができた。ほんの短い時間だったんだけど、かなり良い形でそれを活かすことができたんだ」
「そして、僕は彼よりもブレーキを遅らせようとした。彼は僕よりも早くブレーキをかけたから、内側にスペースさえ残しておけば、オーバーテイクできると思ったんだ。まさにそれが実際に起きたことだった。そしてこういう状況の時には、数人のドライバーなら信頼することができる」
クビアトはルクレールをオーバーテイクしたことで、ルノーのダニエル・リカルドの真後ろにつけることになった。ただクビアトはルクレールらを攻略した際に回生エネルギーを使い切ってしまったため、再充電する必要があった。しかしその間にリカルドのタイヤはしっかりと暖まり、クビアトのチャンスは潰えてしまった。
「その時点で、僕はかなりバッテリーを使ってしまっていた」
そうクビアトは語る。
「ダニエルに追いついた時、チャージを始めなければならず、(攻撃するには)あと数周待つ必要があった」
「それから僕は、再び彼にプレッシャーをかけた。でも彼は、僕が他のドライバーと戦っている間も使って、タイヤをしっかりと暖めた。ルノーは直線スピードが速く、オーバーテイクを仕掛けるのは難しかった。もっと周回数が多く残っていれば、可能だったかもしれないけどね」
クビアトは表彰台獲得は逃したものの、フェラーリとのコンストラクターズポイント差を縮めることができたため、4位は良い結果だったと語った。
「フィニッシュラインを越えて数メートル進んだ後、それについて考えた。力強いレースだったよね。だからもちろん、僕は結果について満足している」
「再スタート後の追い越しも振り返れば、気持ちよかったよね」
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