F1アブダビGPの“知られざる”無線交信がSNSで拡散、論争再燃中……ブランドルも憤慨「ハミルトンが王者になるべきだった」
F1解説者のマーティン・ブランドルは、F1最終戦アブダビGPにおけるレースディレクターのマイケル・マシの無線交信について、議論が再燃していることを不愉快に感じているようだ。


先日、2021年F1最終戦アブダビGPでのとある無線交信がSNSで拡散され、波紋を呼んだ。それはレースディレクターのマイケル・マシと、レッドブルのスポーティングディレクターであるジョナサン・ウィートリーとのやり取りだった。
レース終盤にセーフティカーが出された際、首位ルイス・ハミルトン(メルセデス)と2番手マックス・フェルスタッペン(レッドブル)との間には周回遅れのマシンが数台いた。この際ウィートリーは「周回遅れのマシンは、(セーフティカーの)前に行かせてから隊列の最後方に追い付かせる必要はない。とにかく彼らを前に行かせるだけでいい。そうすれば“モーターレース”ができるんだ」とマシに呼びかけたのだ。
これに対してマシは「分かった」と返答。その後ハミルトンとフェルスタッペンの間にいる周回遅れのマシンのみをセーフティカーの前に出し、最終ラップにハミルトンとフェルスタッペンがガチンコ勝負できるような状況を作り出した。これに関して、メルセデスのトト・ウルフ代表は無線でマシに不満を訴えたが、マシは奇しくもウィートリーの言葉を引用するかのように、こう返答した。
「トト、これが“モーターレース”と呼ばれるものだ。いいかい?」
ただ、このやり取りは決して最近公開されたものという訳ではなく、アブダビGPの翌週にF1が公開したもの。しかし、多くの論争の中でファンがこれを見逃していたため、年をまたいで新たに火種となった形だ。
ひとつ興味深いのは、この映像が公開されたのは12月16日であり、メルセデスがアブダビGPの結果を不服とする控訴を取り下げた数時間後のことだったということ。メルセデスがこの会話を知ることなく、控訴取り下げの判断をしたということも考えられる。
アブダビGPでSkyスポーツのコメンテーターを務めていた元F1ドライバー、マーティン・ブランドルは、同GPでの論争が今になって再燃したことは、FIAの対応に対するファンの怒りの大きさを示していると述べた。
「これは新しいニュースという訳ではない。マイケル・マシが知らないことを全て教えてくれるとは限らないということは、理解しておくべきだ」
「もちろん、本当に不愉快だし、多くの人々が不満に思っている。ハミルトンファンや、メルセデスファンなどだ」
「ハミルトンファンでなくとも、彼が8度目のワールドチャンピオンになるべきだったと思うだろう。それはなぜか? 私としては本当に重要なレギュレーションが実行されなかったと思っているし、(実際にセーフティカーがピットに戻った)次の周にセーフティカーが戻るべきだったと思っている」
「しかし、『セーフティカー先導のままレースを終えることがないようにしよう』という不文律があるのだ。そんなものが優先されるべきではないと思うが……」
「非常に許しがたいことだ。特に昨年初めてF1を見たファンなどが、この出来事に対して非常に動揺していた」
ブランドルはまた、チームがレースコントロールに直接働きかけ、自分たちの思うようにレースを進めようとすることがいかに間違っているかが、アブダビGPで示されたと語る。
「レフェリーがコース上のマシンやトラブルが起きたマシンに対処する上で重要な判断を下そうとしている時、チームがそこに詰め寄るようなことはしてはならないし、今後もそれは同じだ」
「マシンが燃えていたことだってある。彼はそれを何とかしようとしているんだ。サッカーやラグビーのグラウンドでそんなことをするのは、まったくもって許されない」
FIAは、アブダビGPでの出来事に関する調査結果を2月14日にF1委員会に提出する予定で、今後同じようなミスが繰り返されないよう、FIAのレースコントロール体制やルールの変更も提案される予定だ。また、マシの去就に関しても未だ明らかになっておらず、FIAは彼が更迭される可能性があることを認めている。
ブランドルは、ハミルトンに関する全ての決定に対して厳しい目が向けられることになるため、マシがレースディレクターを続投することは難しいと考えている。
「マイケル・マシを更迭しても問題は解決しない。つまり、ひとりの人間には重すぎる仕事なんだ」とブランドルは言う。
「だからといって、マイケル・マシのことを全面的に支持しているということでもない。彼がその立場を続けるのは難しいと思う」
「問題なのは、彼にスポットライトが当てられ、全ての決断が分析されることだ」
「ルイスがペナルティを受けたら? 逆に彼の裁定が甘くなったら? 彼はどうしようもない状況にあると思う」
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