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美しきF1マシン:「メルセデス、F1への第一歩となる漆黒の”始祖機”」ザウバーC12

1993年のF1シーズンに登場した1台の漆黒のF1マシン。これは1950年代以来久々のF1復帰を目指したメルセデスが、F1への復帰第一歩を記したザウバーC12だった。

田中 健一

編集: 2020/04/22 10:30

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Karl Wendlinger, Sauber C12

Karl Wendlinger, Sauber C12, leads JJ Lehto, Sauber C12

Karl Wendlinger, Sauber C12 overtakes Pedro Lamy, Lotus 107B

Karl Wendlinger, Sauber C12

Karl Wendlinger, Sauber C12

Karl Wendlinger, Sauber C12

JJ Lehto, Sauber C12

JJ Lehto, Sauber C12

JJ Lehto, Sauber C12

JJ Lehto, Sauber C12

JJ Lehto, Sauber C12

Mechanics work on a Sauber C12 powered by an Illmor engine

12

 今やF1の世界で圧倒的な強さを誇っているメルセデス。昨年まで6年連続でダブルタイトルを獲得するなど、他を寄せ付けない強さである。

 その歴史は古い。メルセデスが最初にF1に挑戦したのが1954年。当時はコンストラクターズチャンピオンが設定されていなかった時期であるものの、チームのドライバーであるファン-マヌエル・ファンジオがドライバーズタイトルを獲得(開幕戦と第3戦はマセラティのマシンをドライブして優勝。メルセデスは第4戦から参戦)。メルセデスは4勝を挙げた。また翌1955年にはメルセデスが7戦中5勝を挙げ、ファンジオが2年連続でチャンピオンに輝いている。

 ただこの1955年を最後に、しばらくの間メルセデスの名はF1から消えることになる。同年のル・マン24時間レースで、クラッシュしたメルセデスのマシンが観客席に飛び込み、多くの死傷者を出すという大事故を起こしてしまったからだ。この事態を重く見たメルセデスは、全面的にモータースポーツ活動を中止。彼らがレースのシーンに戻ってきたのは、1980年代になってからだった。

 ただ、メルセデスが80年代に参入したのはスポーツカーレースである。F1に彼らの名前が戻ってきたのは1993年まで待たねばならなかった。

 1993年のF1には、ひとつの新チームがデビューした。ザウバーである。そのマシンC12は漆黒に塗られ、エンジンカウルにはこう書かれていた。

「Concept by Mercedes-Benz」

 ザウバーはメルセデスと共にグループCレースに参戦していたスイスのコンストラクター。そのザウバーが、メルセデスの本格参戦を前に、F1に打って出たのだ。ちょうどフォーミュラEの第5シーズンに、メルセデスの先鋒として参戦したHWAの立ち位置に似ている。

 C12に搭載されていたエンジンは、イルモア製V10(2175A)。基本設計は前年ティレルが使っていたモノと大きな変わりはないが、コンパクトかつ軽量のため、マシンの特性に好影響を及ぼした。

 またマシンもシンプルなモノだった。当時はハイテクデバイス全盛の時代であり、ウイリアムズを筆頭にマクラーレンやベネトン、フェラーリなどもハイテクで武装していった。そんな中、トラクションコントロールやセミオートマチック・トランスミッションは積んだが、アクティブサスペンションなどには手を出さなかった。

 マシンの基本設計はハーベイ・ポストレスウェイト。しかしメルセデスとの反りが合わず、プロジェクト途中でザウバーを離脱。フェラーリを経て、ティレルへと移籍していった。そのためこのC12は、ティレルの1994年用マシン022とよく似ているとも言われる。ポストレスウェイトの離脱後は、レオ・レスがマシンをまとめ上げた。

 ドライバーはJ.J.レートとカール・ヴェンドリンガーだ。ヴェンドリンガーは、メルセデス育成ドライバーであり、当時メルセデス”三羽ガラス”と呼ばれたうちのひとりだ。他のふたりとは、ハインツ-ハラルド・フレンツェンと、ミハエル・シューマッハーである。

 開幕戦南アフリカGPでは、レートがいきなり5位入賞。サンマリノGPでは4位に入った。ヴェンドリンガーは、なかなか入賞にたどり着けなかったものの、第7戦カナダGPで6位に入ると、ハンガリー、イタリア、ポルトガルと計4回の入賞。イタリアGPでは4位となっている。

 この結果、ザウバー初年度のランキングは7位。老舗ロータスと同ポイントだった。

 翌年からはメルセデスが本格復帰。エンジンもイルモア製ながら、メルセデス・ベンツの名称がつけられた。ただ、ザウバーが”メルセデスエンジン”で走ったのは、この1994年限り。メルセデスは翌年から、マクラーレンをパートナーに選び、その関係が長く続いていくことになった。

 一方のザウバーはその後、フォードZetec-Rを2年使った後、ペトロナス名となったフェラーリエンジンを使うことになった。この関係は2005年までと長く続いたが、BMWが参画したことにより”BMWザウバー”としてF1参戦。2007年にはコンストラクターズランキング2位(マクラーレンの失格処分を受け)、2008年のカナダGPではロバート・クビサの手により初優勝を挙げた。

 ただ2009年限りでBMWがF1から突如撤退。ザウバーはフェラーリエンジンを再び手にし、F1への継続参戦を可能とした。フェラーリとの関係はその後より密になり、2018年からはアルファロメオと名称変更。今に到る。

 なお話は前後するが、本来ならばこのC12には、ヴェンドリンガーのチームメイトとして、シューマッハーが乗るはずだった。1992年、ザウバーはF1参戦を発表した際に「ドライバーはミハエル・シューマッハーとカール・ヴェンドリンガーの予定」と明記していたのだ。しかしチーム代表のペーター・ザウバーは救いの手を差し伸べ、シューマッハーにベネトンから1992シーズンを戦うことを許したのだ。

 そして結局、グループCを共に戦ったシューマッハーとザウバーのコンビは、F1で再現されることはなかった。

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