白熱のバトル実現へ! F1新規則の狙いは成功?「新型マシンは”ブレイクスルー”を果たした」
F1チーフテクニカルオフィサーであるパット・シモンズは、2022年のF1マシンは互いに追従し追い抜くことを可能となった、”ブレイクスルー”であると確信している。
写真:: Carl Bingham / Motorsport Images
2022年に、新しいレギュレーションを導入したF1。計6日間行なわれたプレシーズンテストで、より簡単に他車を追従できるようなマシンを作るという新規則の主な目的が、達成できたという初期証拠が得られたという。
F1のチーフテクニカルオフィサーを務めるパット・シモンズは、他のマシンに追従するのがより簡単になったとドライバーたちが認めていると説明した。
「バルセロナでは、多くのドライバーと話をして、後続のクルマがどう感じたかを聞いたんだ。他のクルマの後ろについたドライバーはもちろん、そうでないドライバーも含めて、全員がとても褒めてくれた」
「アレックス(アレクサンダー・アルボン/ウイリアムズ)が最も面白い答えをくれたと思う。彼は前のクルマにこんなに近づけるなんて思っていなかったから、再調整や再考を迫られたと言っていたからだ」
「そしてそれは、我々が行なった大きな変化の、最高の証明だと思う」
今年は、コーナーでバトルを繰り広げるマシンが見られる可能性があるのか、と聞かれたシモンズは、以前のレギュレーションではそれが難しかったと言う。
シモンズは昨年のイギリスGPでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とルイス・ハミルトン(メルセデス)の事故についてシミュレーションをした結果、2021年までのマシンはサイド・バイ・サイドのバトルでもダウンフォースを大きく失っていることが分かったという。
「以前のクルマは、ウェイク(後方乱気流)の範囲がとても広かったんだ」
「昨年のシルバーストーンでのハミルトンとフェルスタッペンの事故について、私のグループで興味深いシミュレーションをしたんだ」
「サイド・バイ・サイドになったときにマシンが失うダウンフォースの大きさには、我々でさえも驚いた。これまでにも、後続車やオフセットした(真後ろから少しズレた)マシンは見てきたが、本当のサイド・バイ・サイドの状況は調べてこなかった」
「我々は本当に抜本的な変化を遂げ、突破口を開いたと思う。だから、そのことに感謝して、自分たちが何を得たのかを見てみよう」
シモンズは、一部のドライバーが指摘しているように、2022年の空力パッケージによってスリップストリームの効果が減少していることを認めた。
しかし彼は、それよりも追従性の向上が勝っており、オーバーテイクは可能だと考えている。
「それ(スリップストリーム)はそれほど強くない」
「すべてを手に入れることはできないんだ。たとえF1でも残念ながら物理法則に従わなければならない。時々、とても腹立たしい気持ちになるけど、やらなければならないんだ!」
「当然、後続車に質の良い空気を送り込もうとすれば、その空気はより多くのエネルギーを持つことになる。その空気はダウンフォースを生み出すと同時に、空気抵抗も生み出す。だから、スリップストリームの効果はあまりないんだ」
「でも、ダウンフォースの変化と比べれば、それは些細なことだろう。ストレートでのオーバーテイクはまだ可能だと思う」
「我々は、まだDRSが必要だと考えている。そのニーズが減っていることを願うし、いつの日かポジション争いではなく、バックマーカーをオーバーテイクするためだけにDRSを使うのが、私の夢なんだ」
またシモンズは、F1の目的は必ずしもオーバーテイクを容易にすることではなく、ドライバー同士がより接近してバトルできるようにすることであり、それはF1のファンからも要望されていたことだと指摘する。
「F1では、クルマなどの技術的なことだけでなく、ファンが何を求めているか、特に視聴者が何を求めているか、様々な方法で非常に高度なリサーチを行なっている」
「その結果、多くの人がオーバーテイクについて話すが、本当のエンターテインメントはオーバーテイクではなく、バトルであることが分かったんだ」
「オーバーテイクされたら、そこでバトルは終わる。だから、より良いマシンが勝つんだ。でも、そのオーバーテイクをするために、いいチャレンジをしてほしいんだ」
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