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F1分析|2022年F1、勢力図”初”分析。バルセロナテストで見えてきたこととは?

全く新しいテクニカルレギュレーションが導入される2022年のF1。その規則下での最初のテストがカタルニア・サーキットで行なわれたが、勢力図はまだまだ見えてこない。本稿では、このテストで見えてきた”傾向“を分析する。

Max Verstappen, Red Bull Racing RB18

写真:: Carl Bingham / Motorsport Images

 先週、スペインのカタルニア・サーキットで、3日間にわたるF1のプレシーズンテストが行なわれた。

 今シーズンは、テクニカルレギュレーションが大変更される。そのためマシンの形状は、コンセプトから一新。いずれのチームも手の内を隠していた感があるため、その勢力図はまだまだ分からない。しかし、傾向と言えるようなモノは見えてきた。

 この後はバーレーンで2回目のプレシーズンテストが行なわれ、いよいよシーズン開幕を迎える。各チームはカタルニアのテストで”ポーポイズ現象”に悩まされたが、それまでに解決してくることができるかが焦点となろう。

 本稿では、カタルニア・サーキットでのテストで見えてきたことを分析してみたいと思う。

Nikita Mazepin, Haas VF-22

Nikita Mazepin, Haas VF-22

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

■後方グループが抱えた”問題”

 テスト2日目、ロシアがウクライナへの侵攻を開始したことにより、ハースF1に影を落とすことになってしまった。最終日にはメインスポンサーであるウラルカリのロゴがVF-22から外され、ロシア国旗を彷彿させる青と赤のラインも取り外された。

 チームはウラルカリとの契約を見直す可能性を示唆しているため、チーム自体の将来、そしてドライバーであるニキータ・マゼピンとの関係にも、懸念が生じている。

 そのハースは、実際の走行でも信頼性の問題に悩まされた。フェラーリが最多の439周を走行したのに対し、ハースは160周。全チーム中最小の周回数となった。

 ベストタイムは、マゼピンがC3タイヤで記録した1分21秒512で、全体の9番手。ただこのマシンは、ライバルチームの目も引く、複雑なデザインとなっている。

 アルファロメオも、ハース同様走行距離が少なかった。初日から信頼性の問題に苦しめられ、最終日にはルーキーの周冠宇がターン10のヘアピンでスピンし、赤旗の原因となった。

 このスピンは、最終日の午前中終盤、各車がパフォーマンスランを行なっている時に起きた。周は左コーナーのターンイン時にリヤのコントロールを失ってしまう。周はなんとかこらえようとしたが、それも功を奏さず。マシンはグラベルトラップにはみ出してしまった。

 ルーキードライバーがミスを犯すことは、ある程度避けられないが、こういう形で走行時間を失ってしまうのは、チームとしても厳しいところだろう。

Guanyu Zhou, Alfa Romeo C42

Guanyu Zhou, Alfa Romeo C42

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

■バルセロナでの”中団グループ”

 ここから言及するチームは、可能性を示す一方で、特定の問題に悩まされた集団である。

 アルピーヌは、最初の2日間では順調に周回を重ね、252周を走破。自信を見せていた。エステバン・オコンはレースシミュレーションを完了し、問題と言えるのはフロアのブラケットが少し壊れただけであり、その修正にはそれほど時間がかからなかった。

 最終日にはフェルナンド・アロンソがドライブを担当し、力強いペースを見せていた。そこで、トラブルに見舞われた。

 アロンソが走らせていたA522は、油圧系に問題が発生。マシンのリヤは火に包まれてしまった。この修復のために、多くの走行時間を失うことになってしまった。

 これだけでも、チームにとっては大きな損害だった。しかしそれ以上に重要なのは、最終日に目指していたもうひとつの改善を達成できなかったかもしれないことだ。

 アルピーヌは、A522のバランスを改善するために、重要な仕事をしているように見えた。同チームのドライバーは特に初日、ターン4などの比較的速度域が低いコーナーでマシンをコントロールするのに苦労していた。マシンはスライドし、特にアロンソは、パワーをかけるのに躊躇しているようにも感じられた。アロンソが見舞われたトラブルにより、この問題を解決するチャンスを失ってしまった可能性があるのだ。

 ただ彼らにとって明るい点のひとつは、セクター3のベストタイムで上位に位置したということだ。

 確かにテストでは、多くのチームが最終コーナーの立ち上がりからは加速スピードを緩め、ラップタイムを偽装するということがある。しかし独自に集計したデータでは、アルピーヌはラップタイムこそ8番手だったにもかかわらず、セクター3ではメルセデス、レッドブル、フェラーリに次ぐ4番手だった。

 明るい点を見出したにもかかわらず、良い形でテストを終えることができなかったもうひとつのチームがアルファタウリである。

 アルファタウリは、2日目にピエール・ガスリーがC4タイヤを履いて計測した1分19秒918が、3日間通じての6番手タイムとなった。ただそのガスリーは、最終日の午前中にターン5で激しくクラッシュしてしまった。

 このクラッシュによりマシンが負ったダメージは深刻で、マシン回収用のトラックには、チームメンバーふたりも同乗しなければならなかった。結局このクラッシュのせいで、午後に走行を予定していた角田裕毅は、全く走ることができなかった。

 アルファタウリAT03は、堅実な基盤を持っているマシンのように見える。しかしガスリーのクラッシュを考えると、そこに懸念がある可能性はある。

 チーム代表のフランツ・トストは、このクラッシュについて次のように語っている。

「今年は本当に力強い基盤があると思う」

「残念ながら、ピエールがフロントタイヤをロックアップさせてしまったため、スピンオフして(そしてマシンにダメージを与えて)しまった」

Pierre Gasly, AlphaTauri AT03, Nikita Mazepin, Haas VF-22

Pierre Gasly, AlphaTauri AT03, Nikita Mazepin, Haas VF-22

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 ウイリアムズは、ベストタイムの面ではアルファタウリの次というポジションである。しかし走破した周回数は”中団グループ”から抜け出し、374周。全体で3番目という多さだった。

 もちろん、現状では実際のポジションは分からない。しかしながらここ数年後方に苦しんできたウイリアムズにとっては、現状でもタイムシートの中団にいるということは、朗報であろう。つまり、最下位グループからは抜け出したという可能性があるわけだ。

 ウイリアムズにとっての懸念は、最終日にアルボンがドライブした際、スロットルを開けた時にマシンのリヤから微量ながら白煙が上がっていたことだ。チームはこれを、オイルを充填しすぎたためだと考えている。

 各チームが悩まされているポーポイズ現象により、マシンが激しく上下動する際には、エンジンを正確に動かすのは難しい。それが、この白煙の原因になっていた可能性がある。しかしながら、同じメルセデス製のパワーユニットを使うメルセデスやマクラーレンのマシンには、そういう傾向はなかった。

Marshals assist Sebastian Vettel, Aston Martin AMR22, after a technical failure results in smoke

Marshals assist Sebastian Vettel, Aston Martin AMR22, after a technical failure results in smoke

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 アストンマーチンは、最終日の午前中にセバスチャン・ベッテルがC5タイヤで記録した1分19秒824により、中団グループのトップに立った。しかしながらその直後、信頼性の問題に悩まされた。

 ベッテルはターン10でスピンし、グラベルにはまってしまうことになる。しかしこれはただのスピンではなく、マシンに問題があったことが原因だったと、すぐに明らかになったのだ。

 マシンにはオイル漏れが発生しており、火災が発生。AMR22のリヤからはすぐに煙が立ち上った。ベッテルはマシンから飛び出るとすぐに消火器を手にし、マーシャルたちと共に消火活動をおこなった。

「AMR22の第一印象は比較的ポジティブだった」

 そうベッテルは語った。

「僕はバーレーンでさらに前進するために、チームと協力することを本当に楽しみにしている。問題に見舞われて1日を終えるのは残念だったが、僕らは多くの周回をこなした(全体6番目となる296周)。今週の仕事には、満足することができるよ」

George Russell, Mercedes W13

George Russell, Mercedes W13

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

■ここまでの”トップチーム”

 バルセロナのテストの結果を見れば、”伝統的”な4つのチームが、明らかに先頭グループを形成しているように見える。彼らは現段階で既に力強いペースを発揮しているだけでなく、まだまださらに多くのモノを隠し持っているようにも見える。また、優れた信頼性もあった。

 ただ問題は、この4チームのみがシーズン開幕後も”トップグループ”を形成することになるのか、それ以外のチームが付け入る隙があるのか、もしくは昨年までのように2チームだけが抜け出すことになるのか……ということだ。

 フェラーリは3日のうち2日目に最速タイムをマーク。しかも3日間通しての走行距離は、全チーム中最多だった。これ以上ないシーズンスタートを切ったようにみえる。

 同チームのドライバーであるカルロス・サインツJr.は、次のように語っている。

「マシンの限界に近づいたり、パフォーマンスがどれほどのモノなのかを見つけることはできないだろう」

「F1マシンは、燃料の搭載量によって3〜4秒ほど遅くなったり、速くなったりする」

 しかし明らかなのは、F1-75がライバルたちに強い印象を与えたということだ。それは、F1-75がかつてのフェラーリが纏っていた濃い赤と黒のカラーリングであったからというだけではない(もちろん、この新しいカラーリングは、パドックでも好評である)。

 F1-75に否定的な見方がないというわけではない。そのひとつが”エンジン音”である。

 フェラーリの走行時のエンジン音は、ライバルと比べると明らかに大きかった。特にレッドブルの走行時の音はかなり静かであった。これを考えると、フェラーリはエンジンのパフォーマンスレベルをかなり上げて走っていた可能性があると言える。

 しかも一発のアタックタイムでは、フェラーリはマクラーレンの後塵を拝した。2日目の午後にシャルル・ルクレールがC3タイヤで記録した1分19秒689は、マクラーレンのランド・ノリスが初日にC4タイヤで記録した最速タイムから0.121秒遅れであった。

 そのマクラーレンも、現時点では有力チームの一角であると考えられる。

 マクラーレンは今回のテストで、頻繁にフロービズペイントを施し、空力の可視化を行なっていた。チームは、ウォーキングのファクトリーに新しい風洞を建設したばかり。その新風洞と、これまで彼らが使ってきたケルンにあるトヨタの風洞実験装置の数値を相関させるのは、今回のテストの最重要課題のひとつだったはずだ。

「チーム間の戦いは、非常に僅差になっている」

 マクラーレンのチーム代表であるアンドレアス・ザイドルはそう語った。

「チームによって、哲学や解決策は様々だろう。しかし現段階では、明確に速いチームや、極端に遅いチームは存在しないようだ」

Lando Norris, McLaren MCL36, with aero paint applied

Lando Norris, McLaren MCL36, with aero paint applied

Photo by: Steven Tee / Motorsport Images

 しかし現段階でのトップ2チームは、やはりと言うか、驚くべきと言うべきか、レッドブルとメルセデスである。多くのチームは、2021年にタイトルを争った2チームが、今シーズンの成功のための要素を手にしていると主張するが、少なくともバルセロナでのテストを見れば、彼らは今年も力強いだろう。

 コースサイドで見た印象では、レッドブルRB18も、メルセデスW13も、他のどのマシンよりもはるかに安定してコーナーに進入していた。そしていずれも、それなりの燃料を搭載して走っていたようだ。

 レッドブルのレースエンジニアリング責任者であるギョーム・ロケリンは、次のように語っている。

「バーレーンまでに、ここで学んだいくつかのことを整理するつもりだ」

「しかしそれは、大きな一歩を踏み出すよりも、熟考すべきことだ」

 この発言は、ある意味興味深いことだとも言える。レッドブルRB18のデザインは、メルセデスのW13よりもかなり複雑に見える。サイドポンツーンの周囲は特にそうだし、リヤサスペンションがプッシュロッド、フロントサスペンションがプルロッドになっているという点も、実に興味深い。

 2019年に起きたことから、覚えておくべき教訓がある。それは、メルセデスがバルセロナでの2回目のテストでは、1回目とは根本的に異なるマシンを持ち込んだということだ。このマシンには、最初のテストに登場したマシンに、開発によって新しい要素が追加されていたわけだ。

 今シーズンは予算上限額が設定されているため、当時のような大幅な変更は難しいと言える。しかし、メルセデスやレッドブルのような”スーパーチーム”なら、何らかの解決策を見出してきたとしても、決して不思議ではない。

 メルセデスについて言えば、ハミルトンは「克服すべきいくつかの障害」があったと説明している。ただ彼らの周回数は393周とフェラーリに次ぐ2位。信頼性に影響を及ぼすようなモノは何もなかった。

 そのハミルトンは、最終日の午後にレースシミュレーションを行なっている。そしてこの連続走行中、ハミルトンは下り坂の”ターン5”で左のフロントタイヤを度々ロックさせていた。これは、この段階では当然のこととも言えるが、ドライビング時のスイートスポットを見つけるのが難しいということを示唆している。

Lewis Hamilton, Mercedes W13

Lewis Hamilton, Mercedes W13

Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images

 なおこれらのこと全てについて重要なのは、各車が悩まされたポーポイズ現象に、しっかりと対処できるかどうかという点に尽きる。

 メルセデスも、レッドブルも、そしてフェラーリも、メインストレートでマシンが激しく跳ねていた。これは、グラウンド・エフェクト効果を生み出すためのベンチュリトンネル内の気流が何らかの形で阻害され、発生するダウンフォース量が安定していないことの表れだ。

 テストでは、週末のレースでは許されないセットアップで、マシンを調整することができる。しかしこれをレギュレーションに沿った方法で解決するのが、今後の最重要課題と言える。ポーポイズ現象に悩まされたことで、今週何か不利な事態が生じたということはない。しかし何が起きるか分からないため、一刻も早く解決するのが得策であろう。

 フェラーリのチーム代表であるマッティア・ビノットは、次のように言っている。

「早くそれを克服できたチームは、シーズン序盤に有利になるだろう」

 
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