ポーポイズ現象の解決策に最適? アクティブサスペンションとは何か

各チームの2022年用F1マシンが悩まされているポーポイズ現象。その解決策のひとつとして名が挙がっているのが、アクティブサスペンションだ。現時点では禁止されているデバイスだが、そもそもアクティブサスペンションとは何か?

ポーポイズ現象の解決策に最適? アクティブサスペンションとは何か
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 F1の2022年シーズン最初のプレシーズンテストが、先週スペインのカタルニア・サーキットで行なわれた。ここで各チームが悩まされたのが、”ポーポイズ現象”と呼ばれる問題だ。

 このポーポイズ現象とは、F1マシンのフロア下で発生するダウンフォース量が安定しないため、マシン自体が激しく上下動を繰り返してしまうというモノだ。

 今季のF1マシンは、レギュレーションの変更により、ダウンフォースの大部分を、床下と路面の間で発生する形となった。これは床下に設けられたベンチュリ・トンネル内に多量の空気を通し、床下と路面の間の気圧を下げ、車体を路面に吸い付ける……つまりダウンフォースを発生させようというモノだ。

 ただ、フロアが路面に接触してしまうなど、何らかの理由で床下の気流が阻害されてしまうとダウンフォースの発生量が減ってしまう。すると車体は浮き上がる…… 車体が浮き上がるとダウンフォースが復活し、そのダウンフォースで車体が沈み込むと再びダウンフォースを失い、車体が浮き上がる……ということを繰り返してしまう。これがポーポイズ現象である。

 各チームはこのポーポイズ現象を、なんとかして解決せねばならず、次のバーレーンでのプレシーズンテストまで、忙しい日々が続いていくことになる。そしてそれを早々に解決することができれば、シーズン序盤を有利に運ぶことができるだろう。

 この解決のために有効だと言われているデバイスがある。それが、アクティブサスペンションである。メルセデスのジョージ・ラッセルは「アクティブサスペンションがあれば簡単に解決できるかもしれない」と発言。さらにマクラーレンのテクニカルディレクターであるジェームス・キーも「テクニカルディレクターとして、個人的にはアクティブサスペンションの復活を望んでいる」と語っている。

 アクティブサスペンションと言えば、古くからのF1ファンであれば、1992年のウイリアムズFW14Bを思い起こすのではないだろうか? ナイジェル・マンセルとリカルド・パトレーゼがドライブするマシンはシーズン10勝。ダブルタイトル獲得はもちろんのこと、マンセルは8月のハンガリーGPで同年のドライバーズタイトル獲得を決めた。圧倒的な強さであった。

 当時のアクティブサスペンションは、サーキットの路面の凹凸をあらかじめ計測し、それをマシンにインプット。その情報に従ってサスペンションに組み込まれた油圧アクチュエーターが作動し、能動的(アクティブ)に路面の凹凸に対処しようというものだ。さらに加速時・減速時のピッチング動作も、このアクティブサスペンションで制御できる。

 なぜアクティブサスペンションを使いたかったのか? それは、安定したダウンフォースを発生するためだ。

 通常のパッシブ(受動的)サスペンションでは、どうしても車体と路面の距離が安定しない。そのため、床下で生み出すことができるダウンフォース量も安定しない。しかし路面と車体の間の空間を一定に保つことができれば、安定したダウンフォースを発揮できるのだ。

 このFW14Bをデザインしたのは、空力の鬼才エイドリアン・ニューウェイである。そう、現在レッドブルのチーフ・テクニカル・オフィサーを務める人物だ。FW14Bはアクティブサスペンションの効果もあり、ニューウェイがデザインした空力パフォーマンスを存分に活かすことができ、前述の通りの圧倒的な強さを発揮したのだ。

 このアクティブサスペンションは、1980年代初頭に考え出されたもの。当時もベンチュリ・トンネルを備える、いわゆる”ウイングカー”の最盛期だった。そのウイングカーで安定したダウンフォースを生み出すために考え出されたのが、アクティブサスペンションである。

 ただ、実戦投入されたのは、ウイングカーの使用が禁止された翌年の1983年。ロータス92だった。ただこれも数戦のみの投入。ちなみにドライバーは、ナイジェル・マンセルだった。

 その後、1987年にアイルトン・セナと中嶋悟がドライブしたロータス99Tで再び実戦投入。同年にはウイリアムズも、FW11Bにアクティブサスペンションを搭載した。ただ動力源はエンジンに頼っていたため、アクティブサスペンションを作動させるとパワーが”奪われて”しまうこととなった。

 その後ウイリアムズはテストで熟成を重ね、1991年の最終戦で再投入。翌年の1992年には信頼性も格段に上がり、圧倒的な強さに繋がった。翌年には他の多くのチームがこれに追従し、一気にトレンドとなったが、開発費が高騰したために同年限りで禁止。1994年からはふたたびパッシブサスペンションのみが許される形となり、現在に至っている。

 さて今アクティブサスペンションが解禁されれば、車体と路面の間のスペースを一定にすることができ、フロアが路面に接触することもない。つまり、安定してダウンフォースを生み出すことができるはずだ。各チームが悩まされているポーポイズ現象の解決には、大いに役立つだろう。

 気になるのはその開発コストだ。1992年当時は、まだコンピュータの技術も未発達。必要な演算を行なうためには、多額のコストが必要だった。しかしながら現在は、コンピュータ技術は格段に進歩。当時とは比べ物にならない。簡単に開発できるとは言わないが、当時と比較すればその導入に対するハードルははるかに低く、FIAが使用を解禁すれば、採用するチームは少なくないだろう。

 最大の障壁となりそうなのが、昨年から導入された予算制限。ただでさえ開発コストを切り詰める必要がある現状では、新たにアクティブサスペンションを開発する予算を捻出するには、各チームが頭を悩ませることだろう。

 なおアクティブサスペンションは、現在では様々な場面で使われている。最も身近なのは、新幹線車両だろう。

 営業速度300km/h超を目指した500系車両などで導入。横方向の振動を制御するために使われた。その後、様々な方面に向かう後継車両にも搭載され、現在に至っている。また在来線や私鉄の特急型車両にも使われている。 

 
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