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スーパーGT“ちょい濡れ戦線”の仲間入り目指すブリヂストンが、新開発パターンのタイヤ導入を見送った理由。そこには「安全第一」のアプローチが

2023年シーズンのスーパーGTに向けて、“ちょい濡れ路面”でのパフォーマンス向上を狙った新タイヤをテストしていたブリヂストン。結果的に開幕戦での導入は見送られたが、そこには安全を何より優先するという彼らの考え方が背景にあったようだ。

#36 au TOM'S GR Supra

写真:: Masahide Kamio

 ブリヂストン、ミシュラン、ヨコハマ、ダンロップの4社による熾烈なタイヤ開発競争が繰り広げられているスーパーGT。特に近年では、各社によって特色の分かれるウエットタイヤ開発に注目が集まっている。

 最近ウエットコンディションで印象的な速さを見せているのがミシュラン勢。昨年の富士テストでは驚異的なタイムを記録して話題をさらい、昨年唯一のウエットレースとなった第6戦SUGOでは3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zと23号車MOTUL AUTECH Zが独走ワンツー。今季も先日行なわれた雨の開幕戦でワンツーフィニッシュを飾り、2015年以来8年ぶりのタイトル獲得に向け好スタートを切った。

 そんなミシュランが最後にタイトルを獲った後、2016年からGT500クラスを7連覇中なのがブリヂストンだ。彼らは今季、GT500を戦う15台のうち実に10台にタイヤを供給している。

 ただGT500で長きにわたって最強を誇ってきた彼らも、雨量の少ない状態でのダンプコンディション、いわゆる“ちょい濡れ路面”ではライバルの後塵を拝するケースもあった。昨年のSUGO戦では乾きかけの路面でミシュラン勢やダンロップ勢が順位を上げていく一方、ブリヂストン勢はペースを落としてしまうマシンも多かった。

 そしてブリヂストンは今季の開幕前テストに、新たなトレッドパターンのタイヤを持ち込んだ。縦溝がなく、斜めの溝が折り重なるように入ったパターン。このタイヤを試験投入した経緯について、ブリヂストンでスーパーGTタイヤの開発を率いる山本貴彦氏は次のように話した。

Bridgestone tyre

Bridgestone tyre

Photo by: Masahide Kamio

「昨年のSUGO戦では、ちょい濡れ路面でうちのウエットタイヤがタレてしまいましたが、そこを改善することが一番の狙いでした」

「乾いている路面をウエットタイヤが走ると、大なり小なり表面は荒れてしまうのですが、それが他社さんに比べると極端でした。あのタイミングでは1周3〜4秒遅く、レースにならない状況でしたから」

■新パターンのタイヤは“安全第一”で採用見送り

 タイヤ開発を司る要素はコンパウンドや構造など多岐に渡るが、路面が乾いた状態でも垂れないウエットタイヤを作るべく、パターンも工夫してきたブリヂストン。オフシーズンは散水によるウエットタイヤテストの日数も2日間と限定的だった他、“ちゃんとした雨”でないと評価できない項目もあることから、ブリヂストンは雨の中行なわれた3月の富士テストも性能評価の場として活用し、実戦投入に向けた検討を進めた。

 ただ、結果的にこの新パターンのタイヤは開幕戦岡山の場には持ち込まれなかった。これについて山本氏は、ブリヂストンが得意としている雨量が多いコンディションでのパフォーマンスの落ちが大きかったことを理由のひとつに挙げた。

 とはいえ、元々水量が多い路面に強いこともあり、パフォーマンスが落ちたといっても他社と同等レベルの安定性は担保できていた様子。ただ“安全第一”という考えもあり、投入は時期尚早と判断したという。

#1 MARELLI IMPUL Z

#1 MARELLI IMPUL Z

Photo by: Masahide Kamio

「(テストで試したタイヤは)現行パターンとの対比で、水量が多い際のパフォーマンスが落ち過ぎていて、危ないという声も出ていました」と山本氏は言う。

「ただあのコンディションでも、他社さん対比では劣っていなかったと思っています。そういう意味で他社さんと同じだからそれでいいという考え方もありますが、急に強い雨が来る場合もありますし、そうなった時にお客様が見に来られている中で誰も走らない、ということになるかもしれない。興行の面や安全第一ということを考えても、切り替えは見送ることにしました」

 雨の多いコンディションで強いということ……それはすなわち、タイヤが水膜の上に浮いて路面に接地できなくなってしまうこと(ハイドロプレーニング)を防ぐための排水性はもちろんのこと、接地したゴムが低い路面温度でしっかり発動するためのウォームアップ性能、濡れたコンディションに適したコンパウンド開発など、様々な要素が重要になる。ただそういった極端なウエットコンディションにおける性能を重視しすぎてしまうと、乾きかけの路面でのパフォーマンスを邪魔する可能性もあるが、山本氏はどちらかに性能を偏らせることで妥協はしたくないと語る。

「どちらかに性能を偏らせることはできますが、それではただの良いとこ探しになってしまいます」

「ある程度水量のあるところも妥協しない上で、負けているところを引き上げていくのが技術開発なので、うちとしてはそこをしっかり両立させていけるよう、進めていきます」

■「全戦ウエットでもチャンピオンを獲れる」タイヤを目指して

 ブリヂストンは現在GT500を7連覇中のため、「チャレンジャーと逆で失うものしかないんですよね」と苦笑する山本氏。連覇を途切れさせないためにも、課題であるウエットコンディションを改善し、“完全無欠”を目指していきたいと意気込んだ。

「7連覇中ということで、これを途切れさせるわけにはいかないと思っていますし、これほど多くのチームさんにBSを使いたいと言っていただいているのは、性能などを含めた信頼の証だと思っているので、引き続きそれにしっかり応えていきたいです」

 

Photo by: Masahide Kamio

「そういう意味では、ウエットコンディションというのはうちの明らかな課題です。極端な話ですが、例えば全戦ウエットになった時にチャンピオンをとれるかどうか……という状況なのは事実なので、ドライであろうがウエットであろうが、BSがチャンピオンをとれるというのが目標です。お客様にとっては面白くないかもしれないですが、技術屋として目指すのはそこですから」

 
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