今季F1に新導入のフリー走行での”ルーキードライバー起用義務”。残り6戦でどのチームが誰を起用する?
F1チームには、ルーキードライバーを年間2度フリー走行に起用することが今季から義務づけられた。これまでどのようなドライバーが走ってきたか、そして残り6戦で「誰がどのチームで走るのか」を整理する。
写真:: Erik Junius
2022年からF1に導入されたレギュレーションのひとつとして、F1チームはF1出走が2回以下のルーキードライバーをフリー走行で年間2度起用することとなっている。
今季から技術レギュレーションが刷新されたことでマシンも大きく変更されたため、シーズン序盤、フリー走行はレギュラードライバーが走り込む機会に当てられた。シーズン後半に突入しても、熾烈なコンストラクターズランキング争いを繰り広げているチームもおり、レギュラードライバーがFP1を走る傾向は続いている。
加えて、予算制限レギュレーションが導入されていることで、2017年メキシコGPでフォース・インディアからFP1に出走したアルフォンソ・セリスが引き起こしたクラッシュのような、ルーキーが高額な損害を与えることにチームはこれまで以上に警戒している。
今季は残り6戦。ルーキーをフリー走行で乗せる機会も6回だが、うちサンパウロGPはスプリント形式でのレース開催のため、予選前のフリー走行が1回しかないことを考えると、そこでの起用はありえないだろう。
つまり、2度のルーキー起用の義務を果たせていないチームは、5戦のいずれかで妥協を強いられることとなる。
次戦シンガポールGPはリスクの大きい市街地サーキットということもあり、選ばれにくいだろう。特に2019年の開催以来、レギュラードライバーもシンガポールを走っておらず、新マシンでの適応が重要となる。
鈴鹿サーキットで行われる日本GPも、その難しいコースレイアウトからマシンに損傷を与える確率が大きく、ルーキードライバーの起用はあまり行なわれてこなかった。日本GPもシンガポールGPと同様に2019年以来の開催となる上、例年通り台風などによる悪天候も予想される。セットアップが重要なサーキットで、レギュラードライバーも走行距離を稼ぎたいところだろう。
ただ、2014年にはトロロッソ(現アルファタウリ)からマックス・フェルスタッペンが鈴鹿サーキットでF1デビューを果たしており、不可能という訳でもない。
また日本GPと続くアメリカGPでは、2023年に向けたピレリタイヤのテストがフリー走行で行なわれ、通常1時間のFP2が90分に延長される。仮にFP1をルーキードライバーへ譲ったとしても、レギュラードライバーとしては30分の走行時間ロスで済む。ただ、タイヤテストが義務づけられていることから、走行プランは他のイベントよりも複雑になってしまう。
鈴鹿サーキットやサーキット・オブ・ジ・アメリカズでのピレリタイヤテストが雨に見舞われた場合は、メキシコシティGPが予備開催地とされているが、ルーキーが走る場として舞台となるエルマノス・ロドリゲス・サーキットは良い機会になりそうだ。
最後のチャンスである最終戦アブダビGPのFP1には、スペアパーツでの心配も少ないことから、多くのルーキーが出走すると予想されている。ただ併催されるFIA F2に参戦しているドライバーにとっては少し厄介な状況になる。金曜日はF2でフリー走行を行なった後にF1でFP1を走り、その後F2の予選に出るという、マシンを乗り換えながらの過密日程となるからだ。
そうした点を踏まえ、今後は誰をどこで起用するのかを以下で紹介する。
Nyck de Vries, Mercedes W13
Photo by: Alastair Staley / Motorsport Images
メルセデス
メルセデスはフランスGPで、リザーブドライバーのニック・デ・フリーズを起用。残るレースでもう一度彼がマシンに乗る予定となっているが、彼が他チームとレギュラードライバーの契約を結んだ場合は、所属先となるチームがデ・フリーズのFP1での起用を求める可能性もある。
レッドブル・レーシング
レッドブルはスペインGPでユーリ・ヴィップスをFP1で起用したが、人種差別的発言によって数週間後にチームから解雇されている。今後はフェルスタッペンのマシンでF2ドライバーのリアム・ローソンが2回目の走行を行なうようだ。
フェラーリ
フェラーリは開発ドライバーとしてシミュレータ作業を行なっているロバート・シュバルツマンをアメリカGPとアブダビGPのFP1で起用する。ちなみに、フェラーリがサードドライバーのためにFP1を使用するのは初めてのことだ。
アルピーヌ
アルピーヌは育成ドライバーのオスカー・ピアストリを起用することで2回の義務を消化する手はずだった。ただピアストリはマクラーレン陣営への加入が決まり、計画はおおよそ破綻している。
ただF2参戦中の育成ドライバーであるジャック・ドゥーハンは、ハンガロリンクで2021年マシンによる旧型マシンテスト(TPC)を実施することが決まっており、彼をフリー走行でも起用するのが筋だ。
ドゥーハンが来季のアルピーヌ候補であることに間違いないが、仮にチームがデ・フリーズを獲得した場合には、彼をマシンに乗せる動きが出てくるかもしれない。
Alex Palou, McLaren F1 testing at Barcelona
Photo by: Monaco Increase Management
マクラーレン
マクラーレンとしては、アルピーヌがピアストリの早期放出に応じれば彼をフリー走行で走らせたいところだろうが、現時点でプランは不透明な状態だ。
チームはインディカー・シリーズ参戦中のコルトン・ハータやパトリシオ・オワード、アレックス・パロウに2021年マシンでのTPCの機会を与えており、3名はFP1出走に十分なマイレージを走っている。ザク・ブラウンCEOはオワードがメキシコシティGPでドライブすることを示唆していたが、3名ともフリー走行出走が確約されている訳ではない。
アルファタウリ
ベルギーGPではローソンを走らせており、2回目の起用も決定済みだ。ただこちらも、チームがデ・フリーズ獲得に動き、彼をチームで走らせることが効果的とされた場合は、プランが変更される可能性がある。
アストンマーチン
アストンマーチンは独自の育成プログラムを有していなかったため、イタリアGPではデ・フリーズをFP1に起用していた。しかし、その週末のF2で今季の王者となったフェリペ・ドルゴビッチと育成契約を結び、アブダビGPでは彼がフリー走行に出場することとなった。
ウイリアムズ
アストンマーチンと同様に、ウイリアムズもデ・フリーズをスペインGPで起用。イタリアGPでレギュラードライバーのアレクサンダー・アルボンの代役参戦を果たした際の、実質的な準備となった。
ウイリアムズは義務消化に向けて、育成ドライバーでF2参戦中のローガン・サージェントを彼の母国GPとなるアメリカGPで走らせることを発表している。
Valtteri Bottas, Alfa Romeo C42
Photo by: Alessio Morgese
アルファロメオ
今季、アルファロメオはルーキーである周冠宇をレギュラードライバーとして起用しており、FIAは開幕戦バーレーンGPでのF1デビューをルーキーセッションとしてカウントすることを認めた。
残る1回の義務では、育成ドライバーのテオ・プルシェールを起用。彼が帯同するアメリカGPとメキシコシティGPのどちらかのフリー走行でバルテリ・ボッタスのマシンを駆り出走することとなっている。
ハース
ハースはまだプランを明らかにしていないが、他のドライバーを起用する緊急の理由がない限り、ピエトロ・フィッティパルディがルーキーセッションを担当することになりそうだ。
ただ、アメリカGPでは元アルファロメオのアントニオ・ジョビナッツィがドライブする予定となっているため、フィッティパルディが担当することはない。
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