MotoGP ポルトガルGP

MotoGPでの義務化が期待されるヘルメット安全技術「MIPS」とは? Kabutoユーザーのエスパルガロ兄が初採用

アプリリアのアレイシ・エスパルガロは、ポルティマオテストにてMIPSと呼ばれるヘルメットの安全技術をMotoGPで初めて使用した。

Aleix Espargaro, Aprilia Racing Team

 MotoGP2023年シーズン開幕に先駆けて、3月11日~12日にポルトガルのアルガルヴェ・サーキットで行なわれたプレシーズンテストでは、アプリリアのアレイシ・エスパルガロがMIPSと呼ばれるヘルメットの安全技術を使用した。

 MIPSはMulti-directional Impact Protection Systemの略で、日本語にすると「多方向衝撃保護システム」。1996年に英国王立工科大学の専門家と脳外科医のハンス・フォン・ホルストによって開発された頭部の保護技術だ。

 地面と接触したヘルメットに強い衝撃が加わるのは想像に易いが、落車した際にかかる進行方向へ向けた回転エネルギーがそこに加わると脳への衝撃は増加する。

 しかしヘルメット内部に可動域を持たせた薄いレイヤーを入れることで、接地時の衝撃を受け流そうというのがこのMIPSだ。

 既にMIPSはロードバイクやスキー用ヘルメットで採用が進んでおり、MIPS及び類似のシステムが2027年までにMotoGP用ヘルメットにも搭載が義務付けられる可能性が高いのだ。

 

 ロードサイクリストとしてツアーチームと自転車トレーニングを行なう一面も持つエスパルガロは、この安全技術をMotoGPでテストしている。

「今年はMIPSを使っている」

 今季から日本のオージーケーカブトが展開する”Kabuto”ブランドのヘルメットを使用するエスパルガロはそう語る。

「MIPSを使うライダーは僕が初めてだ。マレーシアのテストでは使わなかったけど、今回のテストではMIPSを使ったんだ」

「聞いた話では、今年KabutoはMIPSを開発しているそうだ。3年後……2026年か2027年かは分からないけど、MIPSが(MotoGPで)義務化されると思う」

「ロードバイク用のUCI(国際自転車競技連合)ヘルメットでは既に義務化されているが、脳への衝撃はコントロールが難しいものだ。だから本当に良いことだと思う」

「これはどれだけ頑丈なヘルメットを持っているかの問題じゃないんだ。MIPSは助けになるし、MIPSの初期バージョンの開発に携われたことを非常に嬉しく思っている」

Aleix Espargaro, Aprilia Racing Team

Aleix Espargaro, Aprilia Racing Team

Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images

 MotoGPの脳震盪に対する対応は、表向きには2022年シーズンに向けて強化されたものの、ここのところも注目を集めている。

 昨シーズン当時、テック3に所属していたラウル・フェルナンデス(現RNF)は、クラッシュ後に体調不良を感じながらも2度のライディングを許可されている。

 またポルティマオテストではグレシーニのファビオ・ディ・ジャンアントニオが初日の終盤に転倒。脳震盪により一時意識不明となった。その後の病院での検査の結果、テスト2日目の出走が許可されなかった。

 ディ・ジャンアントニオはテスト終了後、脳震盪を起こした原因としてアルガルヴェのコース脇に敷き詰められた「壁のような」グラベルを挙げている。衝撃を横方向へ流すMIPS搭載のヘルメットであれば、脳へのダメージも低減できていたかもしれない。

 
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