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モータースポーツで実現する脱炭素社会へ……スーパー耐久で広がる挑戦。トヨタ、マツダ、スバルが取り組んでいること

スーパー耐久では、様々なメーカーが”カーボンニュートラル”社会の実現を目指した開発車両を走らせている。舞台となった鈴鹿サーキットでは会見も開かれ、各社、各車両が目指す方向性が語られた。

水素カローラの給水素風景

写真:: 皆越 和也

 スーパー耐久シリーズでは、昨年水素エンジン搭載のカローラがデビューしたのを皮切りに、カーボンニュートラル実現に向けた“選択肢”を広げるべく、各自動車メーカーが様々な開発車両を投入している。2022年シーズンの開幕戦に開発車両を持ち込んだトヨタ、マツダ、スバル……彼らはどのような車両を登場させ、そして何を目指しているのか? モータースポーツを通じて推し進められる、環境に優しい未来の姿が見えてきそうだ。

■トヨタは水素エンジン車とカーボンニュートラル燃料車の二本立て

 トヨタは、昨年のスーパー耐久シリーズ(S耐)富士24時間レースで、水素エンジン搭載のカローラ「ORC ROOKIE Corolla H2 Concept」をデビューさせた。その後レースの度に記者会見を開き、その経過と進化を発表してきた。

 水素エンジン車の「ORC ROOKIE Corolla H2 Concept」はデビュー戦以降改良を重ね、4戦目となる2021年の最終戦では、エンジン出力は24%、トルクは33%向上。異常燃焼の制御も実現するなど、エンジン性能をガソリンエンジン並みまで鍛え上げた。

 そして2022年のS耐開幕戦では、カーボンニュートラルに関しての協賛企業や自治体の数が、昨年の富士24時間では8だったのが、22にまで増えたことが発表された。常々「仲間を増やしたい」と発言していたトヨタ自動車の豊田章男社長だったが、今後もその数が増えていくことが予想される。

 エネルギーとして使う水素の精製や輸送についても、新たな施策がスタートしているようだ。トヨタは燃料に関して”「つくる」「はこぶ」「つかう」”と題した取り組みを進めているが、その中には当然水素も含まれる。

 開幕戦鈴鹿では、福島県浪江町の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)でつくられた太陽光由来水素に加え、山梨県、東京電力HD、東レが連携して製造する太陽光由来水素を使用したという。

 また輸送に関しても大きな課題だ。水素でレースをするとしても、その輸送で二酸化炭素を排出してしまっては、とてもカーボンニュートラルとは言えない。そのため、トヨタ輸送のバイオ燃料で走るトレーラーや、トヨタが保有するCommercial Japan Partnership Technologies社(CJPT)のFC(水素)小型トラックなどを使い、鈴鹿まで輸送したという。CJPTのFC小型トラックには燃料電池車であるMIRAIの開発で培われた樹脂ライナー製タンクを用いたカードルを搭載。従来の金属タンクに比べ、タンク圧力は20MPaから45MPaまで上げることが可能となり、水素の運搬量も4倍になったという。今後はタンク圧力を70MPaまで上げ、水素をさらに効率的に運ぶことにも挑戦していくという。

 また水素エンジン車には、航続距離の改善と水素充填時間の短縮という課題もある。開幕戦鈴鹿では1回の水素充填で走行可能な距離は昨年最終戦より約20%向上。また今回使用されたのは気体の水素だが、液体水素を使うための新技術への挑戦も開始したという。これが実現すれば、エネルギー密度の向上に繋がり、航続距離を大きく伸ばすことが可能になるという、さらに使用できる水素の状態の選択肢も広がるとしている。

 水素充填時間については、昨年のシリーズ中にも車両の片側だけでなく両サイドから充填できるようにして充填時間を短縮してきた。今回は安全性を高めながら大流量に対応できるよう、充填口と配管を変更し「大流量充填」に挑戦。前戦の2分弱から1分半まで短縮した。

 トヨタはスーパー耐久に、水素エンジン車だけを投入しているわけではない。様々な方向性でカーボンニュートラルを実現しようと、様々なエネルギー源を使う車両で参加しようとしている。

 今回の開幕戦には、水素エンジン車の「ORC ROOKIE Corolla H2 Concept」(佐々木雅弘/MORIZO/石浦宏明/小倉康弘)に加え、カーボンニュートラル燃料を使用する「ORC ROOKIE GR86 CNF Concept」(蒲生尚弥/豊田大輔/大嶋和也/鵜飼龍太)を開発車両のクラスであるST-Qクラスに投入した。

 このカーボンニュートラル燃料を使うGR86は、GRヤリスと水素エンジンカローラのエンジンをベースにした1.4Lターボエンジンを搭載。このエンジンは、次期86用のダウンサイジングエンジンとして使うことも予定されている。なおカーボンニュートラル燃料は、走行時には二酸化炭素を排出するものの、大気中の二酸化炭素を合成して製造されているため、二酸化炭素の排出量はプラスマイナスゼロとなるわけだ。

 この2台に加え、次の富士24時間レースからは、排気量1.5〜2.4LのST-4クラスにガソリンエンジン搭載のGR86「TOM’S SPIRIT GR86」(松井孝允/山下健太/河野駿佑)がデビュー。その学びを市販モデルやパーツの開発に活かすという。

 なお今回の開幕戦では、「ORC ROOKIE GR86 CNF Concept」が115周を走破してクラス2位、「ORC ROOKIE Corolla H2 Concept」が8回の給水素で97周を走り、クラス5位と完走を果たした。

■マツダは2.2Lバイオディーゼルエンジン搭載車の登場をサプライズ発表

 マツダは、昨年の最終戦岡山で次世代バイオディーゼル燃料を使用するSKYACTIVE-D1.5(ディーゼルエンジン)を搭載した「MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO」を投入。トヨタの水素カローラとのバトルを制して初参戦ながらクラス優勝を遂げた。

 この車両は元々ST-3クラスにアクセラディーゼル、ST-5クラスにデミオディーゼルで参戦していた野上敏彦率いるNOPROとジョイントという形で生まれたもの。使用するバイオディーゼル燃料は、使用済み食用油や微細藻類油脂を原料としたユーグレナ社の「サステオ」。このバイオディーゼル燃料を使用するにあたり、NOPROでは戦闘力アップのためにエンジン補機類を変更し、ディーゼル粒子フィルター(DPF)をエンジン下部に装着。このため従来装備していたエアジャッキを外すことになったという。ただエンジンはノーマルであるものの、コンピュータを変更。エキゾーストを作り直したという。

 それまでのデミオディーゼルは、ディーゼルエンジンの排気ガスや煤でテール部分が真っ黒になるほどだったが、バイオディーゼル燃料を使ったマシンはレース中に黒い排気を出すこともなく、レース後もテール部分は綺麗なままだったことが驚きだった。

 そして今年は昨年のデミオに現行のマツダ2の”顔”(バンパー、ヘッドライト、ブレーキ冷却ダクトなど)を移植。さらにエンジン周りの補機類を進化させ、タービンや制御関係のパーツを変更したという。カーナンバーも91年ル・マン24時間優勝車”787B”と同じ「55」とし、「前田(育男)さん(マツダ常務執行役員でレース参戦ドライバーのひとり)にプレッシャーをかけた」(野上)ようだ。

 今季開幕戦では、マツダ丸本明社長が記者会見。「開発陣から2.2Lで300馬力を発生するディーゼルエンジンを開発させてくれということで同意した。後半戦にはライバルとガチで勝負する」とサプライズ発表し、搭載される車両が何になるのかということが話題になった。NOPRO野上氏は「アクセラに2.2Lエンジンを載せましたが270馬力がやっとで、排気の煤は消せませんでした。やはりメーカーの力はすごいです。個人的にロードスターに積んでみたいけれど、車格的にも現実的にはマツダ3でしょうね」と話した。

 その後マツダは4月15〜17日に千葉・幕張メッセで開催される「AUTOMOBILE COUNCILL 2022」で、「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio Concept」を世界初公開すると発表(注:4月11日の時点で出展見送り)。これに300馬力の2.2Lディーゼルエンジンを搭載していることは間違いなく、開発はかなり早く進んでいることが伺える。丸本社長が述べた”後半戦”とは7月末のオートポリスか9月上旬のもてぎなのか気になるところだ。

 S耐開幕戦鈴鹿では昨年最終戦同様、寺川和紘/井尻薫/関豊/前田育男という布陣で臨んだ「MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO」。NOPROとの3台体制となったことでホイールの本数が不足したこともあり、108周の走行でクラス4位でレースを終えた。

■SUBARUはカーボンニュートラル燃料車で技術者を育てる

 そしてSUBARUは、今季開幕戦よりTeam SDA Engineering(SDA=スバル ドライビング アカデミー)としてNAエンジンのSUBARU BRZをベースとした「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」をST-Qクラスに投入。チーム監督は本井雅人スバル研究実験センター長が務め、スーパーGTでもBRZをドライブする井口卓人/山内英輝と車両運動開発部の廣田光一が組む。使用する燃料は二酸化炭素と水素、その他一部非食用のバイオマスなどを由来とした成分を合成製造されたものだという。

 開幕戦の記者会見ではSUBARU中村友美社長が「カーボンニュートラルすべてを電気自動車に振るという考えはない。内燃機関を本当になくして良いのかと、その可能性を追求している。水平対向というのはSUBARUの強いアイコン。1年間やってみて、エンジニアの輪がつながって育成になれば」と語り、また藤貫哲郎最高技術責任者(CTO)は「レースに参戦することでファイティングスピリットを持ったエンジニアを育てられればと思う。競争に勝つエンジニアを育てたい」と語ったように、この車両は入社3〜4年の若い技術者を中心に、部署の垣根を越えた100名以上を募って開発されたという。

 これまでのレースやラリーへの参戦はSTIや外部のレーシングチームが実戦部隊となっていたが、今回はあくまでもSUBARUとしての参戦で、メカニックなどはレーシングチームのスタッフがサポートするスタイルとなった。カーナンバーもスーパーGTで昨年GT300クラスのチャンピオンを獲得したBRZと同じ「61」を使用。「六連星が一番になれるように頑張りたい」(本井監督)ということだ。

 この車両はレース専用の改造は最低限にとどめているとのことで、重量的にはハンディを背負うことになるが、既存技術をレースの場で試すことも目指されているという。そのため将来的にはアイサイトが装着できるようなスペースを持ったロールケージが搭載されていたり、高速光レーダーにより横後方の車両の接近をドアミラーで知らせるスバルリヤビークルディテクションやステアリング連動ヘッドランプなども装着したままとなっている。

 鈴鹿に登場したBRZは、SUBARUエンジニアの情熱を象徴するブルーの炎とカーボンニュートラル燃料を象徴するグリーンの炎をモチーフとしたカラーリングをまとった。レースではカーボンニュートラル燃料のトヨタGR86とのバトルを繰り広げるなどピットやスタンドを沸かせ、5時間115周をノントラブルで完走。GR86とは1分3秒差のST-Qクラス3位で表彰台を獲得した。

 レース前に中村社長は「ガチンコで勝負をしたいと言ってしまい後悔している」と笑っていたが、この開発でエンジニアたちのやる気もアップしたはず。今後の活動に注目したい。

 
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