ホンダ、新型ESについて解説「F1で最後の大プロジェクト……カーボンニュートラルにも活きる技術」

ホンダは、今シーズン後半から投入している新型のエナジーストア(ES)について解説。ホンダのF1活動最後の一大プロジェクトであり、将来のカーボンニュートラルにも活きる技術が使われていると明かした。

Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B

Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B

Jerry Andre / Motorsport Images

 ホンダ・レーシングは、ロシアGPを前にホームページにF1パワーユニット責任者である浅木泰昭のコメントをウェブサイトに掲載。シーズン後半に投入された新型のエナジーストア(ES)について説明した。

 この新型のESは、まずベルギーGPでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)のマシンに投入され、その後セルジオ・ペレス(レッドブル)にはオランダGPで、ピエール・ガスリー(アルファタウリ)にはイタリアGPでそれぞれ投入されたものだ。

 なおESとは、MGU-K(運動エネルギー回生システム)やMGU-H(熱エネルギー回生システム)で回生されたエネルギーを蓄える、いわゆるバッテリーのこと。この効率が良ければ、エネルギーを貯蔵する際にも、使用する際にも、有益である。

「新型ESの開発プロジェクトは、エネルギー効率の改善と徹底した軽量化の両立を目標に、数年をかけて進めてきました」

 浅木はそう説明する。

「ホンダとしては、今年でF1最終年となりますが、そのシーズン後半戦になんとか間に合わせて、低抵抗で高効率な超高出力軽量バッテリーセルを搭載した新型ESを実戦投入できました」

「悲願である、打倒メルセデス、そしてチャンピオンシップ獲得を実現するためには、さらなるパフォーマンスの改善が必要な状況でしたから、当初の開発計画では2022年シーズンを予定していた新型ESの開発計画を大幅に前倒しして、2021年シーズン中の投入を達成しました」

 ESの軽量化を実現した結果、マシンの重量配分の最適化にも役立ったという。

 なおこの新型ESの開発は、イギリスのミルトンキーンズにあるホンダF1の欧州での活動拠点”HRD-UK”が主に行なったという。ただ日本のメンバーもこれに協力し、ホンダの総力を挙げて完成させたものだという。

 これについては、ホンダのウェブサイトでは次のように説明されている。

「ESは、高電圧・高出力といった特殊要件が求められることから、開発や製造に際して専用の治具や組立設備の環境構築が必要になります。化学製品としての特性から、レースでのクラッシュ時における安全性確保について多岐にわたる検証テストが行われ、航空機輸送のための認証取得もあるなど、その他のパワーユニットコンポーネントに比較して、非常に長い開発期間を要します」

「このESの設計、テスト、解析、組立製造を行ったのが、英国のミルトンキーンズに拠点を置くHRD-UKのプロジェクトチーム。日本人メンバーはもちろん、欧州を中心に10ヵ国以上の多国籍メンバーから構成され、ホンダF1にとって最後の一大プロジェクトを成就するべく、寝食を惜しんで必死に取り組んできました」

「さらに、開発にあたっては、本田技術研究所(先進技術研究所)や本田技研工業(四輪事業本部ものづくりセンター)の量産事業向けバッテリー開発チームから全面的な開発支援を受けています」

「今季のチャンピオンシップ獲得という大きな夢を叶えるため、まさにホンダの総力を結集して取り組み、8月中の投入を果たすことができました」

 ホンダは今季限りでF1活動を終了し、同社のパワーユニット(PU)はレッドブル・パワートレインズが運用を引き継ぐことになっている。そしてこの新型ESも、引き続き来季もレッドブル/アルファタウリが使うという。そういうこともあり、「将来への想いを込めたものだったとも言えるプロジェクト」だったと説明されている。

 また今回のESに使われた技術についてホンダは、「”F1でワールドチャンピオンを獲得した技術”と言えるようにする」ことが目標だとしている。さらに浅木は、ホンダが目指すカーボンニュートラルにも役立つモノだと説明した。

「この新バッテリーセル(エネルギー)技術は、F1活動終了後も、レース以外においても『移動』と『暮らし』の新価値創造によるカーボンニュートラル社会の実現という、ホンダの将来技術に大きく貢献していくことになります」

 

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