赤井邦彦の編集長日記:「F1マネージングディレクター」
motorsport.com日本版の編集長、赤井邦彦が日々経験する様々な事柄の中から、琴線に触れるようなものをピックアップ。
写真:: Motorsport.com / Japan
motorsport.com日本版がスタートして今年で3年目に突入したが、これまで当サイトには定期的な原稿は書いてこなかった。理由は幾つもあるが、書くべきテーマが見つからなかったり、書くためのエネルギー充電が出来ていなかったり、というところが正直なところだ。そんな時間を過ごして、最近やっと書いてみたいと思うようになった。
何をと問われると、日々経験する様々な事柄の中から、琴線に触れるようなものをピックアップしようと思う。日記と銘打ったけれど、毎日続けられるか、1日おきになるか。まあ、ノンビリ書いていくのでお付き合いをよろしく。
2019年3月10日・日曜日
「F1マネージングディレクター」
先週末に鈴鹿サーキットで行われたイベントで、ホンダの山本雅史さんに会ってきた。モータースポーツ部長職を経て、今年はF1専属になったと聞いた。肩書きはF1マネージングディレクター、いわゆるF1特命大使である。ホンダのF1に賭ける意気込みが伝わって来るようだが、山本さんにとっても勝負はこれからだと思う。
その山本さんから今年のレッドブルとホンダのF1話を聞いたけれど、話しはざっくばらんにあちこちに飛んで、あまり勝敗とか技術的なことには触れなかった。山本さんにとれば今年の予想なども聞いて欲しかったのかと思うけど、シーズンが始まる前から予想しても、その予想は大方はずれるので聞かなかった。興味があったのはビジネスの話しで、ホンダもやっとF1をビジネスに結びつけて語れるようになったのだと思った。
ホンダはF1を1960年代から断続的に続けているが、これまでは本田宗一郎さんの「世界一になる」という気概だけで戦って来たようなところがあり(私の個人的な見解です)、世界一になった後もあまり変化はみられなかった。これから先はどうするんだろうと心配していたが、山本さんによればレッドブルと手を組むことでビジネスに目覚めたように思われた。まあ、F1をはじめとするエクストリーム・スポーツをビジネス路線で展開してきたレッドブルに刺激を受けたということだろう。
レッドブルのビジネス路線は徹底していて、レッドブル・ブランド向上のためなら手段を選ばない。ご存じのようにF1チームのタイトルスポンサーはアストンマーチンである。ジェームス・ボンドの映画『007』に出て来る英国高級乗用車のアストンマーチンだ。去年までレッドブルが使用していたPU(パワーユニット。数年前まではエンジンと言っていたのに)はルノー、今年からはホンダだが、そうした名前は吹っ飛ばしてレッドブルの公式チーム名の頭にはアストンマーチンの名前が付く。
ホンダ社内の取締役会でもアストンマーチンの名前が問題視されたらしいが、レッドブル側はアストンマーチンはあくまでタイトルスポンサーであり、外すつもりはないと返事をし、ホンダが渋々折れたという。この話しを聞いて、流石ビジネス百戦錬磨のレッドブルだと感心したが、名を捨てて実を取ったホンダはレッドブルと組むことで早速ビジネスを学んだといえるだろう。
山本さんが取締役会で「名を捨てて実を取りましょう」と提言したとしたら、F1マネージングディレクターとしての最初の仕事はまずまずのスタートを切ったと言えるだろう。
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