インタビュー

F1

【インタビュー】F1デビューのリアム・ローソンに訊く。日本の“家族的”なレース界はどう映ったか? レッドブルからの日々の“要求”は?

今季日本のスーパーフォーミュラで活躍し、オランダGPでは急遽F1デビューも飾ったリアム・ローソン。彼から日本のレース界はどう見えたのかなど、様々な角度から聞いた。

赤井邦彦

公開日時: 2023/09/03 8:28

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リアム・ローソン

 8月末のオランダ・グランプリでいきなりアルファタウリからF1グランプリデビューを飾ったリアム・ローソン。金曜日の練習走行中、ダニエル・リカルドが事故によって左手を骨折、その代打としていきなりの起用が決まったのだ。

 そのせいで、ローソンが初めて実戦でF1マシンを走らせたのは土曜日のフリープラクティス3回目。それも雨で路面が濡れている状態で、インターミディエイトタイヤの初経験にもなった。その日の午後に行われた公式予選Q1では、1分23秒420で20番手のタイム。チームメイトの角田裕毅のQ1でのタイムが1分21秒781だから、約2秒の差である。

 ビークル・パフォーマンスのエンジニアは、「初めての実戦F1グランプリ、それも濡れた路面の予選でリアムは良い仕事をしたと思う。ただし、レースが晴れた状態で行なわれれば、いろいろ学ぶことが多いだろう」と、ローソンを評価する。

 このF1グランプリデビューを前にして、motorsport.comではスーパーフォーミュラもてぎ戦の週末にローソンにインタビューを行った。


——日本のレースを戦いに来て半年が過ぎました。来日のきっかけを聞きたい。

「去年、僕はF2を戦っていたけど、余り良いシーズンじゃなくて、夏休みが始まる前にレッドブルで会議があり、今年はF2とは違うカテゴリーのレースに出ようということになった。そこでどこのレースがいいのか検討し、日本のレースに絞られた。そこでスーパーフォーミュラが良いだろうということになり、11月に無限と契約を結び、12月になって日本行きを正式決定した。それは事前テストがあって、そこに参加しなければいけなかったからだ。この日本行きを決めたのは、レッドブルの(ヘルムート)マルコさん。我々にとれば日本でのレースがロジカルなチョイスだったといえる」

——スーパーフォーミュラに関する知識はありましたか?

「スーパーフォーミュラは技術的にも非常に高度で、戦いも熾烈なものだと同郷の友人のニック・キャシディが教えてくれた。そこでシーズン開幕前にレースをビデオで見て勉強した。その結果、チームの力が素晴らしく高いことに驚いた。クルマのセットアップなどのレベルがF2と比べて遙かに進歩的だった。だから今年は学習すべきことが非常に多くあった。基本的に我々のチームのクルマは素晴らしく、シーズンを通して好調だった。とはいえ、チーム間の差はほとんどなく、戦いはハイレベルで、気が抜けない」

——日本のレース界の印象は?

「ドライバーは誰もが何年もレースをやっていて、家族のようなつながりを持っているように思える。だから、僕のように外から来たドライバーは最初は入りにくい。でも、ひとたび仲間に入れば居心地は良い」

リアム・ローソン, TEAM MUGEN

リアム・ローソン, TEAM MUGEN

Photo by: Masahide Kamio

「ただ、昔はあったと思われるF1への上昇志向がドライバーからあまり感じられない。みんながプロのドライバーとして現状をキープしようとしている。来年のシートを失わないように最大限の努力をしているように思える。以前、F1を狙っていたときには誰もがライバルを蹴落とそうとして戦いは激しかったけれど、今は仲間内のレースみたいだ。来年も仲良くやろうねって感じで、お互いを尊敬していることはよくわかる。高度なリスペクトだね。でも、戦いは相変わらずハイレベルだ」

——スーパーフォーミュラのクルマに関しての印象は?

「F2と比べるとスーパーフォーミュラはよりF1に近い。特に空力性能は相当高く、これまで経験のない僕は学ぶことが非常に多かった。チームの陣容もスーパーフォーミュラはF2に比べて厚い。例えばF2はエンジニアが1台について1人しかいないけど、スーパーフォーミュラは3人、4人も携わっている。それにメカニックは10人。まるでF1のスケールと変わらない」

「クルマに関しては、F2の方がよりレギュレーションが緩く、チームが変更したい点があれば自由にそれができる。日本ではそれぞれのチームを自動車メーカーが支援しており、トヨタとホンダの間で高いライバル意識があり、技術競争は激化している。第1戦で予想外の優勝を挙げてからは選手権争いに加われそうだという気持ちがあって、その後も2勝を加えて選手権2位につけることができている。しかし戦いは厳しいので気が抜けない」

——ニュージーランドのモータースポーツは日本にとって情報が少なく、遠いものに感じるが。

「母国ニュージーランドはかつてはモータースポーツが非常に盛んで、何人もの世界チャンピオンを生み出している。でも最近は出ていないので、みんなが新しいチャンピオンの誕生を待っている。いまF1ドライバーはいないが、チームマネージャー、エンジニア、その他のポジションで働くニュージーランド人が多い。ニュージーランドはF1に非常に近いと思っている。問題は、ニュージーランドにはお金がないと言うことだ。人口は400〜500万人(羊は3000万頭!)だが、モータースポーツに注ぎ込まれるお金は決して多くない」

——あなたが今のポジションを得られたのは大きな資金のバックアップがあるから?

「いや、そうではないけど、僕を支援してくれる人がグループを作って、毎年その人の数が増えていった。父親はゴーカートのレースの時期までは支援してくれていたけど、12歳でカートを卒業してから後は、支援グループの人たちがサポートしてくれた。非常に幸運だったと思う」

——レッドブルのジュニアプログラムに抜擢されたのもステップアップのきっかけですね。

「2019年にレッドブルのジュニアプログラムに選ばれて、イギリスへ渡った。それまではニュージーランドのスポンサーが支えてくれていた。19歳でイギリスに行ってからはレッドブルが全面的にサポートしてくれている。ニュージーランドのスポンサーは今でも個人的に支援してくれていて、大変ありがたく思っている。僕は会社を作ってスポンサー対応、投資を行っている。次に必要なのは結果だ」

 

Photo by: Masahide Kamio

——レッドブルに加わるということは、ドライバーにとればどういうことか?

「非常に高い可能性を与えてもらったということだ。レッドブルとは定期的に連絡を取り合っているが、普段彼らが与えてくれる情報は決して多くはない。日本のレースの結果を教えろとか、F1を狙うにはスーパーフォーミュラで最高の成績を出せとか、とにかく優勝を目指せとか、リザーブドライバーとしてF1に乗れるように準備しておけとか。そういった要求が多い。でも、具体的な要求はあまりない。それだけに自分で自分を律しなければならない。結構厳しい条件だ」

——日本の生活は?

「結構楽しんでいる。といってもあまり日本にいる時間はない。レースのある数日前に来て、レースが終わればすぐにイギリスに帰る繰り返しだ。住まいはレッドブルチームの本拠地のあるイギリスのミルトンキーンズにあるので、そこと日本を行ったり来たり。レッドブルF1チームのリザーブドライバーなのでF1全戦に帯同しなければならず、それはスーパーフォーミュラと日程がぶつからない限り、実行している。レースで日本に来るときはいつも一人だ」

「ガールフレンドはいるけど、アメリカ人でアメリカに住んでいて、最終戦鈴鹿には来る。世界各国に彼女がいれば良いけどね。うそうそ、彼女に聞かれたら怒られる。ガールフレンドは一人だ」

 

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