MotoGP開幕延期、王者マルケスにとって“福音”に? タイトル争いにもたらす影響とは

感染が広がる新型コロナウイルスの影響を受け、MotoGP最高峰クラスの開幕は少なくとも1カ月遅れることとなった。開幕戦カタールGPと第2戦タイGPの延期は、新型マシン開発やタイトル争いに影響を与えることになりそうだ。

MotoGP開幕延期、王者マルケスにとって“福音”に? タイトル争いにもたらす影響とは

 世界中で感染拡大を続ける新型コロナウイルス。開幕が間近に迫っていた2020年のMotoGPも、その影響を避けることはできなかった。

 シリーズを運営するドルナ・スポーツは、開幕戦カタールGPのMotoGPクラス中止を発表。同地当局が感染の拡大するイタリアからの旅行者、もしくは過去2週間以内に滞在していた者に対し、2週間の隔離措置をとることを決定したためだ。

 MotoGPクラスはイタリアのメーカーやイタリア人ライダーが多く参加しているため、この旅客制限は痛手となった。カタールGPでのMotoGPクラス開催中止が決まった数時間後には、第2戦タイGPの開催延期も正式に発表された。

 タイでの開催は当初こそリスクは低いとされていたが、タイ国内で死亡例が確認され、感染者数も増加していたため、彼らは大規模イベントの中止を決定したのだ。

 その結果、MotoGPクラスの開幕戦が4月のアメリカズGPとなる可能性が高まった。しかし新型コロナウイルスの影響は刻々と変化しており、その状況を鑑みれば確実にアメリカズGPを開催できるかどうかは誰にも分からないと言える。

 しかし約1カ月の開幕延期は、MotoGPのチャンピオンシップの命運に大きな影響を与える可能性がある。

■ホンダ、連覇に向け貴重な時間を得る

Alex Marquez, Repsol Honda Team, Marc Marquez, Repsol Honda Team

Alex Marquez, Repsol Honda Team, Marc Marquez, Repsol Honda Team

Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images

 現チャンピオンのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)は昨年12月に、亜脱臼を負った肩の状態の悪化を防ぐために手術を受けた。ただ術後の回復には時間がかかり、その結果プレシーズンテストには100%の状態では挑めていなかった。

 セパンテストでは6〜7割の体調だったことを認めたマルケス。さらに施術の際に神経に影響が出てしまい、その影響はカタールテストの時期になっても残っているほどだった。

 テストを通じて、2020年型のRC213Vは万全の仕上がり、とはいかなかった。LCRホンダのカル・クラッチローはフロントのフィーリングの悪化を指摘し、マルケスも転倒を数度喫した。

 ホンダは最終的に2019年型との比較作業に戻り、マシンの問題が新型のエアロカウルに起因するものだと結論づけた。

 そのため、ホンダにとって開幕の延期はふたつの利点をもたらすはずだ。まずひとつはマルケスにフィジカル面の回復のための時間を与えたこと。そしてもうひとつは問題のあるエアロカウルを修正する時間を手に入れたことだ。

「僕のフィジカル面が100%の状態なら、(他のホンダ勢が苦しむバイクの)問題は避けられるし、解決することが可能だ」

 マルケスはそう語る。昨シーズンで彼が示した走りを考えれば、体調が万全であるならば、マシンは問題にならないというのもうなずけるだろう。

「でも100%じゃないなら避けられないし、他のホンダ勢と同じレベルになる」

 ホンダの開発部隊にとって、レース中止と延期で得られた1カ月は貴重だ。現在のテクニカルレギュレーションでは、エアロカウルについてはシーズン中に変更は可能なものの、初戦に向けてホモロゲーションを取得する必要がある。

 そして現在、事実上の開幕戦はアメリカズGPなのだ。ホンダは昨年11月のテストから新型のエアロカウルを試行してきた。しかしそれが効果的ではないと分かった今、彼らは少なくとも製図に向かう時間を確保できたことになる。

■ビニャーレス、ポイントを稼ぎたかった……。

Maverick Vinales, Yamaha Factory Racing

Maverick Vinales, Yamaha Factory Racing

Photo by: Motogp.com

 第3戦アメリカズGP、第4戦アルゼンチンGPはマルケスが非常に得意としているコースが舞台だ。そのためマーベリック・ビニャーレスに(ヤマハ)とって、カタールGP中止とタイGP延期は非常に悪いニュースと言える。

 ビニャーレスはプレシーズンテストで非常に良いパフォーマンスを見せており、今シーズンはマルケスの強力なライバルになるだろうと見込まれている。

 カタールテストにおけるビニャーレスのレースペースの良さは、ライバルが即座に指摘するものだった。1周のタイムも同様に強さを示しており、彼の弱点でもあるスタートを改善するためのホールショットデバイスの導入も相まって、カタールGPでビニャーレスを負かすのは用意ではなかったはずだ。

 更に第2戦の舞台であるチャーン・インターナショナル・サーキットも、ビニャーレスが強さを発揮するだろうと考えられるトラックだった。つまり序盤戦で体調が万全ではないライバルに差をつけるチャンスを失ったとも言えるのだ。

 ビニャーレスが寄せたコメントからも、彼がこの2戦に期待を寄せていたことが伺える。

「僕らにとって、カタールGPの中止とタイGPの延期は残念なことだ。ふたつのトラックは、僕が本当に気に入っていて、強さを発揮できると考えていたところだからね」

「カタールテストをとてもポジティブなフィーリングで終えていたから、開幕戦を待ち遠しく思っていたんだ」

 今季仮にマルケスが僅かなポイント差でビニャーレスに勝った場合、それは新型コロナウイルスの“おかげ”と指摘されることになるかもしれない。

■ドーピング疑惑のイアンノーネ、シーズン開幕に間に合うか?

 マルケスやビニャーレスのチャンピオン争いとは別のベクトルで、開幕延期は影響を及ぼす点もある。それはドーピング疑惑を掛けられているアプリリアのアンドレア・イアンノーネの問題についてだ。

 イアンノーネは現在、禁止薬物である蛋白同化ステロイドの摂取を疑われ、暫定的な出場資格停止処分を受けている。カタールテストに先駆けてその公聴会が開かれたが、その処分はまだ通達されていない。

 イアンノーネ側は無罪を一貫して主張しており、原因は汚染された食品の摂取だとしている。彼は毛髪検査等の証拠を提出し、今も争う姿勢を示している。

 この1カ月の間にイアンノーネの無罪が決定した場合、彼は開幕からレースの世界に戻ることが可能となる。アレイシ・エスパルガロとアンドレア・イアンノーネのコンビを維持したいと望むアプリリアにとっては、救いの1カ月となる……かもしれない。

 

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