MotoGP分析|アメリカズGPを揺るがせる、COTAの路面”凸凹”問題。その根本原因は一体どこにあるのか?
2019年以来の開催となっているMotoGPのアメリカズGP。しかし、その路面はあまりにもバンピーであるとして、ライダーたちから不満が噴出している。その原因は一体どこにあるのか?
写真:: Gold and Goose / Motorsport Images
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催できなかった、MotoGPのアメリカズGP。しかし今季は開催できることとなり、すでにMotoGPマシンがサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を駆け回っている。
しかしこのサーキットは、路面の凹凸が多いコースと言われ続けており、2019年にもこれが問題になった。しかしその問題は今シーズンも解決できておらず、多くのライダーがサーキットを全面再舗装すべきだと訴えている。
COTAは2020年のグランプリ開催に向け、サーキットの一部を再舗装。ターン1、ターン9、バックストレートなどの路面が新しくなった。
そして迎えた2021年のグランプリ。確かにバックストレートのバンプは改善されたものの、その他の部分では凹凸が以前よりも酷くなり、金曜日のFP2を終えた後、多くのドライバーが厳しい意見を口にした。
チャンピオンシップをリードするヤマハのファビオ・クアルタラロは、「モトクロスバイクでトレーニングする時に使うコースと似たようなモノだ」「なんて言っていいか分からないけど、ジョークみたいだ」と酷評している。
ドゥカティのフランチェスコ・バニャイヤは、今季のCOTAの路面は、排水性の問題により中止を余儀なくされた2018年のイギリスGP(シルバーストン)よりも悪い状態だと語った。
アプリリアのアレイシ・エスパルガロは、金曜日の夜に行なわれたライダー安全委員会の会合で安全上の懸念が提起されたため、今週日曜日にCOTAでレースを行なうには、十分な安全性が確保されていないと語った。
ではこのコースの問題を引き起こしているのは何なのだろうか?
これまでCOTAの路面に凹凸が多く存在する原因は、粘土質の土地に建設されているからだと言われてきた。
2015年、同サーキットは大洪水に見舞われ、地中に埋められた一部の配管が損傷。地下に水が染み出すという状況に陥った。COTAでは2012年からF1のアメリカGPを開催してきたが、洪水に見舞われるまではバンプが大きな問題だと指摘されたことはなかった。
Enea Bastianini, Esponsorama Racing
Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images
洪水は、サーキットに確かに影響を及ぼしただろう。しかしその後サーキットを修復するにあたっては、工事の請負業者はサーキット下の地層の性質を調べることができるはずであり、これが現在の問題の根本的な原因ではないはずだ。
「(COTAの路面の)実際の動きについてはコメントすることはできないが、過去にはシルバーストンも路面に凹凸があるとみなされ、その時にもコース下の粘土層が原因だと指摘されていたことを思い出しておく必要がある」
そう語るのは、サーキットの舗装を監督する企業であるドローモ・サーキット・デザインのオーナー兼創設者、ヤルノ・ザッフェリ氏である。同社は以前問題となったシルバーストンの舗装に対処した会社。シルバーストンでは2018年に水捌けが悪いという問題が発生し、MotoGPの全クラスの決勝レースが中止された。
「(シルバーストンでは)それが間違っていることが証明された。コンクリートの基盤……これは1942年から使われてきたモノだが、それに舗装をした時、我々は非常に素晴らしい請負業者を見つけ、正しい方法での作業を管理したのだ。だから、(粘土層の影響だというのは)誤解だったのだ」
「今ではもう凹凸はない。その路面は、まだ基準になっている。だから、路面を良くすることは可能なのだ」
このドローモ社は、F1オランダGPの舞台となったザントフールトや、現在アブダビで行なわれている改修作業など、近年のサーキットにおける大規模なプロジェクトの多くを担当し、現地の請負業者と協力して作業を進めてきた。
ザッフェリ氏は、現地の請負業者と協力して働くサーキット専門の会社が、仕事を成功させるためには不可欠であると語る。その存在により正しく舗装を行なうための方向性を見出し、また後日発生する可能性のある問題を迅速に特定して対処することもできるというのだ。
Johann Zarco, Pramac Racing
Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images
COTAを部分的に再舗装した際、請負業者が舗装面下の地層の問題に直面する可能性もあるだろう。しかしザッフェリ氏は、作業終了後すぐに問題が起きる可能性は少ないだろうと語る。
「私はただ考察しているだけだがね。下層に問題がある場合でも、作業が終わってすぐに問題が起きることはないだろう」
「作業終了後すぐに問題が発生した場合は、舗装方法が問題なはずだ」
COTAの最新の舗装作業は、専門業者と共同で行なわれたモノではないようだ。
2020年の1月には、WEC(世界耐久選手権)の多くのドライバーが、コースのバンプについて不満を漏らした。そして今週の金曜日、多くのライダーが、非常に異なるグリップレベルの路面が混在していることに気づくことになった。曰く3つの異なるタイプのアスファルトが使われており、特にウエットコンディションになったFP1では、それが顕著に見られた。
つまりMotoGPアメリカズGPで叫ばれている安全性の問題の原因は、コース下の地層の問題だけであるとは言えそうもない。
「もちろん、我々がシルバーストンでやったことと全く同じだ」
新たな路面が敷かれた後で、その下にある地層の状況を評価できるかと尋ねられたザッフェリ氏は、そう語った。
「証拠はそこにある。そして今でもそれを見ることができる。シルバーストンでは、6ヵ月ごとにモニタリングを行なっている。現地の請負業者と共に、コースのフルスキャンを行なっているのだ」
「実際、シルバーストンでは(路面下の地層は)全く動いていない。数ミリメートルでも動いているのであれば、その違いが分かる。そうなれば、シルバーストンの担当者と共に、それに対処する方法を理解しようとするだろう。しかしCOTAで見られた隆起はミリメートル単位ではなく、センチメートル単位のモノだ」
Miguel Oliveira, Red Bull KTM Factory Racing
Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images
MotoGPのライダーたちは、もし来季もここでレースをするならば、全面再舗装する必要があると感じている。もちろんこれには巨額の費用がかかるが、COTAは財政面での問題を抱えており、世界の他のほとんどのサーキットと同じく、コロナ禍によっても大きな打撃を受けている。COTAには100億円規模の資金注入が行なわれているようだが、コースの改修にはほとんど使われていないというのが実情だ。
しかしMotoGPにとってアメリカは重要な市場であり、運営するドルナ・スポーツにとっても、同国内でのレースを維持することは優先事項のひとつであるはずだ。ただ安全性の問題は無視するわけにはいかず、これが理由で開催カレンダーから外されたイベントもある。今季のチェコGPは、開催サーキットであるブルノの再舗装ができなかったため、カレンダーから除外されることになった。シルバーストンも、前述の2018年の問題の後、2019年に向けて完全再舗装を実施している。カタルニア・サーキットも2018年に同様の改修を行なった。
ここ最近、オートバイレースでは深刻な事故が相次ぎ、今年だけでも世界選手権レベルのイベントで、3人の若いライダーが命を落としている。この続いている悲劇を考えても、サーキットの安全性を確保するのは必須である。
なおMotoGPの3週間後には、同じCOTAでF1のアメリカGPが開催されることになっている。これまでF1では、この凸凹の路面が問題視されることはそれほど多くはなかったが、来季から18インチホイール用のタイヤが導入されれば、MotoGPのライダーたちが訴えているような問題をF1ドライバーたちも叫び出すことになるだろうと、ザッフェリ氏は考えている。
シルバーストンでは、問題に対処された後では、路面の凸凹が批判されることは少なくなっている。つまり、再舗装の作業を正しく行ないさえすれば、問題を最小限に抑えることができるかもしれない。
結局COTAの再舗装は、MotoGPとF1の両方にとって、必要不可欠になる可能性がある。問題は、サーキットにそれを行なうだけの”余裕”があるかどうかだが、果たして……。
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