F1メカ解説|最終戦、各チーム”手持ち”パーツで最適セッティングを探る。来季向け”テストパーツ”を投入したチームも

F1最終戦アブダビGPでは、アップデートがほとんど持ち込まれなかったため、各チームが手持ちの空力パッケージを生かして、最適なセッティングを探った。しかし一部チームは、来季に向けた”テスト用”パッケージを投入していた。

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 F1の2022年も、先日行なわれたアブダビGPをもって閉幕した。シーズン後半には各チームとも、今季マシンの開発を終了させ、2023年用マシンの開発に主軸を置くようになった。これは例年のことである。

 今季マシンのパフォーマンスを引き上げるためのパーツがサーキットに届けられる量が減った結果、各チームは今あるパーツの中でセッティングを試すことになる。そのため、チームメイト間で異なるセッティングや空力の組み合わせを試し、最適なモノを試すということがシーズン終盤にはよくある。

 ただ予選が近づいていくにつれ、チームメイト間のセッティングの差は縮まっていくものだ。しかし、必ずしもそうであるとは限らない。

 最終戦アブダビGPでは、メルセデスの2台は金曜日に同じ空力パッケージで走り始めた。いずれもミディアム-ハイダウンフォース仕様のリヤウイングで、メイン画像の右上のように、フラップの後端が削り取られたデザインのものだ。しかしふたりのドライバーは、共に中間セクターでもう少しパフォーマンスを求めたため、よりダウンフォース発生量の少ない仕様のリヤウイング(メイン画像の右上)を試すことになった。

 これにより、中間セクターに存在する長い2本のストレートで最高速が向上した。しかしその一方、セクター1とセクター3ではパフォーマンスが失われることとなり、ラップタイムは遅くなることとなった。そのため、予選に向けて2台のマシンにさらに変更が加えられることになった。

 いずれのマシンも、メインプレーンは両端が厚い複雑な形状のモノに戻され、フラップも後端の切り欠きのないシンプルな形状のモノとなった。しかしジョージ・ラッセルは、フラップの後端にガーニーフラップを取り付けた。これはルイス・ハミルトンのマシンには取り付けられていなかった。なおラッセルは、勝利したブラジルGPでは翼端板の角に切り欠きを設けたデザインを使っていたが、今回は角がフルサイズで存在していた。

Ferrari F1-75 rear wing comparison

Ferrari F1-75 rear wing comparison

Red Bull RB18 rear wing comparison

Red Bull RB18 rear wing comparison

 レッドブルとフェラーリも、フリー走行で異なる構成のリヤウイングを試した。最終的には低ダウンフォース仕様のリヤウイングを使ったが、フリー走行では高ダウンフォースのオプションも試したのだった。

 なおフェラーリは、最終戦にもかかわらず新仕様のフロア(下イラスト)を投入し、これもフリー走行で試した。ただこれは、今季用マシンのパフォーマンス向上を目指すためのモノではなく、2023年に実装予定のフロアの試験バージョンである可能性が高い。おそらく、CFDや風洞実験での結果を検証するため、実際に走行させてデータを収集したのだろう。

Ferrari F1-75 floor comparison

Ferrari F1-75 floor comparison

Photo by: Giorgio Piola

 この新しい仕様のフロアは、特にリヤタイヤの直前に変更が加えられている。エッジ部分が上向きに巻き上げられるようになっており、これによって空気の流れるコースを変更している。これによって、タイヤの表面に当たる気流の挙動に変化をもたらしているのだろう。

 これは非常に小さな変更に見えるが、タイヤが生む乱気流を対処する上で役立つ可能性がある。前方からの気流がリヤタイヤに当たると、これが内側と外側に押し退けられるような格好になる。このうち内側に押し退けられた気流は、ディフューザーに悪影響を及ぼし、ダウンフォース発生量の一貫性が失われてしまうのだ。新しいフロアは、これに何らかの形で対処するモノだと考えられる。

McLaren MCL36

McLaren MCL36

Photo by: Giorgio Piola

McLaren MCL36 floor detail

McLaren MCL36 floor detail

Photo by: Giorgio Piola

 マクラーレンもまた、新しいフロアを最終戦に投入してきた。これも、2023年シーズンに向けた先行開発だろうと思われる。

 マクラーレンの場合は、フェラーリとは違ってフロアを大々的に変更した。このフロアはレッドブルが今季途中に導入したモノに酷似している。このレッドブル式のフロアは、今ではグリッド上で幅広く使われているものだ。

 従来仕様では、波型のフロアエッジは、より単純化されたガーニーに置き換えられた。その後ろに切り欠きが存在し、リヤタイヤ直前ではフロア全体が先細りするような格好になっている。

 また通常では見えないが、フロア下に”アイススケート”と呼ばれるフィンを取り付けてきたと言われる。これもレッドブルが最初に取り入れ、その後フェラーリやアルピーヌ、アストンマーチンなどが追従したモノだ。

 このアイススケートは、上下に伸びるようなフィン状のモノであり、そこから側面に、小さな爪状のウイングが取り付けられている。この爪上のウイングは、前述のフロアエッジ部の切り欠きからも確認できる。

 この爪状のウイングは、スケートの回りのフロアではなく、スケートの高さに対する気流に作用し、タイヤが生み出す乱流によって引き起こされる問題のいくつかに対処するのに役立つ。

 このスケートは、当初はフロア剛性を高めたり、最低地上高を確保するのがメインの役割だと考えられていた。しかし後方への気流の流路を確保するなど、空力的な効果もあるようだ。

 マクラーレンは、来季のマシンに投入するのに先んじて、これが実際にどの程度の効果をもたらすのかを確認しようとしたのだろう。アブダビGPを前に発表された書類には、新しいフロア使用理由について、次のように記されている。

「このフロアエッジがマシンの車高挙動に与える影響を評価することを目指している」

 今回アブダビで収集されたデータは、2023年用マシンを作り上げるのにあたって、大いに参考にされることになるだろう。

 
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