スーパーGT第2戦富士、FCY初運用で見えた今後の改善点。“不公平”はどこまで是正できるか?

スーパーGT第2戦から導入されたFCY(フルコースイエロー)のシステムに関しては、一部のドライバーたちから改善を求める声が挙がっている。

#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra

#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra

Masahide Kamio

 富士スピードウェイで行なわれた2021年のスーパーGT第2戦では、これまで導入に向けて準備が進められてきたFCY(フルコースイエロー)がついに運用開始された。ただし、ドライバーたちはシステム面について改善の余地があると主張している。

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 FCYはコース上の危険を排除する目的で、従来のセーフティカーと併用する形で運用される。FCY宣言下では追い越しが禁止され、各車が上限80km/hまで減速して走行するため、各車の間隔が基本的には保たれたままとなる。セーフティカー出動時はその前後にピットインすることで大きく得をするチーム、損をするチームが出てしまう一方で、FCYではその損得の度合いが小さくなるのだ。

 今回の富士戦は110周の長丁場だったということもあり、FCYが3度出された。まず最初のFCYは32周目、38号車ZENT CERUMO GR Supraの左リヤから脱落したタイヤを回収するために出された。この直前にピットインしていた17号車Astemo NSX-GTは結果的に得をする形となり、レースを制することになる。

 2度目のFCYは48周目に出され、デブリの回収が行なわれた。そして31号車TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTがストップした後、97周目に3度目のFCYとなった。

 このFCYの運用について疑問を呈したのが、36号車au TOM'S GR Supraの坪井翔だ。坪井はレース終盤まで8号車ARTA NSX-GTの福住仁嶺と優勝争いを繰り広げながらも、3度目のFCYが明けた直後にトラブルに見舞われてストップしてしまったが、各車がFCY宣言後に減速するタイミングがまちまちだったと指摘し、その結果トップ争いのギャップにも影響が出ていたと主張した。

「FCYの時、8号車は減速しないで行っちゃったんで、僕らは離されてしまいました。本来ならばもっと近くにいたはずです」と坪井は言う。

「8号車が5秒くらい前に行ってしまって、後ろの17号車にも追いつかれてしまいました。FCYの速度差は大きく違っていて、ちゃんと管理できているのか疑問符がつきます」

「やることに意味はあると思いますが、運用の定まっていない部分が多いです。減速をしっかりできていない人もいたのに、ペナルティも出ていない。やるなら運営側が徹底的に開示して公平性をちゃんと保つようにしてくれないと、FCYの意味がないと思います」

「“(FCYを)急にやる”ということになって、ちゃんと準備し切れていなかったんじゃないかと思います。セーフティカーは運の差があると思いますが、FCYでは技術的に損をしているので、もう一度考え直していただきたいです」

 その坪井と順位を争っていた福住も、減速するタイミングが遅かったドライバーがいたのではないかと話した。

「GT300のマシンが何台か前にいた時、僕は(FCYによる車速制限開始を知らせるカウントダウンが)ゼロになる直前でブレーキを踏みました。でも他のマシンは減速するのがかなり遅かったので、うまく機能していなかったのかなと思います」

 福住はそう語った。

「第2スティントを走ったドライバーたちからは、『10, 9, 8……』というカウントダウンがなかったと聞いています。だから問題点は色々あったと思います」

 また福住は、17号車がFCY発令直前にピットインしたことで優勝を手繰り寄せた件について、運に左右されがちなセーフティカーの代わりにFCYを導入したものの、依然として大きなアドバンテージを得るチームがあるという状況は変わっていないとの見解を示していた。

FCY board

FCY board

Photo by: Masahide Kamio

 一方、37号車KeePer TOM'S GR Supraをドライブし、最終的に3位でレースを終えた平川亮は、FCYが「うまく機能していた」と考える一方で、FCYが出されるタイミングな状況の一貫性がなかったのではないかと指摘した。

 37号車は、79周目のヘアピン手前で22号車アールキューズ AMG GT3がクラッシュした直後にピットイン。阪口晴南から平川にドライバー交代した。ここでFCYが出されれば37号車にとっては大きな追い風となったはずだが、結果的にFCYは出されなかった。

「2回目のピットストップを待っている時、ヘアピンでクラッシュしている車両がいたので『これは勝てる!』と思いました。でもFCYは出ませんでした」と平川。

「だから、いつ出されるのかに関しては少し疑問ですね。どういう時にFCYやセーフティカーが出て、どういう時に何も出ないのか、ハッキリしていないと思います」

 39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraのヘイキ・コバライネンも、初導入されたFCYに関してあまり批判的でないドライバーのひとりで、マーシャルポストで振られるフラッグやボードと、補助的に使われていた電子デバイスとがうまく連携していたと評価した。ただ彼もライバルに対してタイムを失った場面があったと感じている。

「最後のFCYが出された時、GT-R(3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-R)が僕の前にいて、レッドブル・ホンダ(16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT)が僕の3秒くらい後ろにいたと思う。でもリスタートされた時には、彼(16号車)が僕のバンパーのすぐ後ろにいたんだ」

 そうコバライネンは言う。

「(FCYに関しては)やらなきゃいけないことがあると思う。僕はきちんと80km/hを守っていたけど、他はけっこう速かった」

「最後のFCYは長かったので、ブレーキの温度が下がっていた。これでは他のドライバーを巻き込む可能性がある。80km/hで走っていればブレーキを温めることができないので、もう少し短くした方がいいだろうね」

「でもそれ以外の点では、システムはうまく機能していたと思う。電子的なガイダンスと、フラッグやサインボードがしっかりマッチしていた。初めてにしては悪くなかったと思う」

 

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