FIA F2とスーパーフォーミュラ、セッティングへの”考え方”の違い
FIA F2とスーパーフォーミュラ、いずれもF1への入り口として高い注目を集めるカテゴリーであるが、そのセッティングへの考え方は、大きく異なっている。
11月29日〜12月1日にアラブ首長国連邦(UAE)アブダビのヤス・マリーナ・サーキットで実施されたFIA F2テストと、12月5〜6日に鈴鹿サーキットで実施されたスーパーフォーミュラ(SF)テストの光景を比較すると、特にピットガレージ内の動きが明らかに異なる。
SFではマシン調整を繰り返して最善のセットアップを細かく探ろうとマシンをいじりまくっているのに対し、FIA F2ではそうした光景をあまり見かけない。たとえば、セッション中にカウルを外す場面などはほとんど見られない。どうして異なるのだろう?
アブダビのFIA F2テストに参加した佐藤万璃音によると、彼がここ2シーズン戦っていたFIA F3ヨーロピアン選手権(ユーロF3)で所属していたモトパークなども、FIA F2と同じ傾向にあるという。
「レースの現場へ持ち込んだセットアップは基本的に変えたがりません」
F2チームのエンジニアは走行データや車載ビデオを徹底的に見せながら、ドライバーに走り方を教えたり変えさせたりする作業に多くの時間を割く。過去のデータやビデオも持ち出し、F2マシンの走らせ方を徹底的に叩き込むのだという。彼らはそう簡単にマシンを触らない。
なおビデオについては佐藤が面白い逸話を教えてくれた。「ユーロF3でもFIA F2でも、ランド・ノリス(来季からのマクラーレンF1ドライバー)のビデオがゴロゴロしている」と。これの意味するところはズバリ、ノリスは多くのチームで公式・非公式の場を問わず徹底的に走り込んできたという事実である。
FIA F2でもユーロF3でも、チームはファクトリーで徹底的にデータを検証したうえで最適と思われるセットアップを現場へ持ち込む。ドライバーからのフィードバックにいちいち合わせるのではなく、まずは自分たちのセットアップを基本に走らせる。
まったくセットアップを変更しないわけでもない。しかし、それは必要最小限に留める。もしフロント・ウイングのフラップを立てるなら、その調整幅に沿ったオプションのセットアップをマシン全体に施し、隘路へはまり込まないような手段を採る。エンジニアは手探りではなく、自分たちの理解が及ぶ範囲内で済ませる。
FIA F2に限ればセッション中でもセッション合間の時間でも、ダンパー/スプリングの変更、車高調整やサスペンション調整などが頻繁なチームはむしろ苦労することが多い。そういう忙しくしているチームは概ね、トラック上では決して速さを見せていなかったという事実もある。
FIA F2とSFのこうした違いは、両者のポジショニングによるものと想像できる。前者はあくまでF1などを目指す通過点としての選手権でありドライバーの新陳代謝が速い。一方、最近は外国人ドライバーの参戦も目立つSFではあるが、こちらは日本国内最高峰としての選手権でキャリアの長いドライバーが優位である。
また、FIA F2はSFと違いすべて異なるサーキットで開催されるうえ、練習走行時間が半分以下という事情もあるだろう。FIA F2では限られた時間の中、マシンのセットアップではなくドライバーが走りで対処するよう求められるわけだ。だからこそ、FIA-F2ではエンジニアリングに秀でたチーム選びが必要不可欠なのだ。
もっとも、チームへの持ち込み資金に加えて、ドライバーの移動・滞在費、フィジオやバックマンの雇用費などモロモロを含めると、3億円弱というFIA F2の年間レース活動費を簡単に支払えるドライバーなど、そうそういないという現実もある。
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