トヨタ、ル・マンで苦しんだ燃圧低下トラブルを解決。「非常に複雑な現象が起きていた」
トヨタは、8月に開催されたル・マン24時間レースで見舞われた燃料圧力低下の問題について、原因を特定し、改善をしたようだ。
写真:: TOYOTA GAZOO Racing
トヨタは今年、ル・マン4連覇をワンツーフィニッシュで達成。小林可夢偉を含む7号車は悲願の初優勝を挙げた。ただ、決して無風の勝利ではなかった。優勝した7号車、総合2位となった8号車ともに、燃料系のトラブルに見舞われたのだ。
TOYOTA GAZOO Racingヨーロッパのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンが、”クリエイティブな解決策”と評したように、チームはフィニッシュまで走り切れるような方法をリアルタイムで考え出し、ドライバーたちも毎コーナーのようにイレギュラーなステアリング操作をこなしてそれに応えた。その結果、マシンをガレージに入れて作業を行なうことなく、なんとか2台がチェッカーを受けることができたのだ。
バセロン曰く、ル・マンで起きた問題はポリウレタンの小片とグリスの混合物が、燃料フィルターを塞いだことが原因だという。
ル・マンの前に行なわれたWEC第3戦のモンツァでも、8号車に燃料系の問題が発生していた。ピットで燃料を調整するためのシステムに酸化アルミニウムの粒子が混入し、それが給油ノズルのコネクターに付着したグリスと混ざってフィルターを塞いでしまったことがその問題だった。
トヨタはル・マンに向けて、この問題を解決したと考えていたが、ル・マンでは異なる原因で同じようなトラブルが起きてしまったのだ。
「モンツァの後、燃料に酸化アルミニウムの粒子が混入しているのを発見したとき、我々は問題の原因を発見したと確信した」とバセロンは語った。
「しかしル・マンでは、非常に複雑な現象が起きていた」
バセロンの説明によると、燃料レベルの低下に伴い、燃料タンク内にあるブラダー(内袋/Gなどの影響で燃料が吸えなくなるのを防ぐバッファ的な役割)の内壁が擦れてポリウレタンの粒子が発生したという。
この粒子が給油コネクタのグリスと共にフィルターを詰まらせたことで、燃圧に悪影響を与えていたようだ。
解決策としては、LMP1マシンのTS050 HYBRIDから引き継いだ燃料システムのブリーザーを変更。ブラダーの固定方法も変更したという。
「LMH(規定のGR010)は、エンジンの出力が高く(TS050よりも)エンジンの効率が低いため、燃料流量が多くなっている」と、バセロンは説明した。
「そのため、燃料がタンクから出ていく速度がかなり速くなった。ブリーザーが小さすぎたのだ」
2021年シーズンのWECは、バーレーンでの連戦で締めくくられる。ル・マンで優勝した7号車が、僚友8号車を9ポイントリードしている。
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