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【コラム】確かに不評だった。でもある意味“スーパーGTらしい”予選だった。1年で終了したタイム合算方式を改めて考察する

2024年の1シーズンのみで廃止された、スーパーGTのタイム合算方式の予選。批判的な声も多く見受けられたが、“スーパーGT”というカテゴリーの性質にはマッチしたフォーマットだったようにも思う。

Kenta Yamashita, Sho Tsuboi, #36 au TOM'S GR Supra

写真:: Masahide Kamio

 2025年のスーパーGTが間もなく開幕する。そして今季は、予選方式が従来のノックアウト形式に戻される。賛否両論……というより否定的な声の方が多かったタイム合算方式の予選は、わずか1年で幕を下ろすことになった。

タイム合算方式導入の経緯

 そもそもなぜ、Q1とQ2の合計タイムで予選順位を決するという方式が採用されるに至ったのか? その背景を改めて整理する。

 大元を辿ると、きっかけとなったのはスーパーGTが取り組んでいる環境対策だ。プロモーターであるGTアソシエイション(GTA)は2022年末、『SUPER GT Green Project 2030』と呼ばれる2023年までにシリーズ全体の二酸化炭素(CO2)排出量を半減させるための環境対策ロードマップを発表した。その中には各車がレースウィークに使えるタイヤ本数の削減も含まれており、2024年からは1台のマシンが週末を通して使用できるタイヤが4セット(300kmレースの場合)まで減らされた。

 練習走行、予選(Q1、Q2)、決勝レースの第1・第2スティントを4セットのタイヤでやりくりするというのは、チームにとっては余裕のない、限界ギリギリの領域。タイヤ温存のために練習走行やサーキットサファリなどで走行を控える懸念があった。

写真: Masahide Kamio

 レーシングカーの走らないセッションは、ファンの満足度を低下させかねない……そういった懸念を解決する案として出されたのが、Q1、Q2、そして決勝第1スティントを同じタイヤで走ることを義務化するものだった。そうすればQ2に向けて新品タイヤを残す必要がなくなり、タイヤ管理にも余裕が出てくるのだ。

 つまりQ2は中古のユーズドタイヤで走るということになるが、そこから生まれた発想が、Q2のタイムでポールポジション(PP)を決めるのではなく、Q1とQ2の合計タイムで順位を決めるというものだった。これまではQ1上位の車両がQ2に進み、PP他上位グリッドを決するノックアウト方式だったが、タイム合算方式への変更に伴い全車がQ1とQ2を走ることになった。

批判された“分かりにくさ”

 かくして始まった新方式の予選だが、否定的な声が多かった面は否めなかった。中でもGTAが最も頭を悩ませたであろう要素が「分かりにくさ」だ。

 言うまでもなく、Q2で最も速いタイムを出した車両がポールポジション、という単純明快さは失われた。これに関しては、GTAがリソースを投じて中継映像のテロップ表示をテコ入れし、リアルタイムで出来るだけ多くの文字情報を伝えられるよう尽力していたのだが、やはり観る者にとっては『au TOM'Sが合算トップに来たな。でもQ2は最速じゃないのか。じゃあQ2の最速は……おっと順位が入れ替わった』といった具合に、脳内で処理すべき情報が増えた。

 またドライバーにとっても新方式によって複雑な心境を覚えることがあったようだ。ポールポジションを獲れたけど、自分が乗ったQ2はトップタイムではなかったから素直に喜べない、逆にQ2でコースレコードを更新する最速タイムを出したけど、合算タイムでポールポジションを逃したから全く注目されない、などなど……。またとあるドライバーからは、Q1とQ2ではタイヤや路面など諸条件が異なるとはいえ、合算方式になったことでチームメイトとのパフォーマンス差がこれまで以上にフィーチャーされるため、“残酷”なフォーマットだという声もあった。

写真: Masahide Kamio

 また、タイム合算という新たなフォーマットを取り入れる上で、できる限り公正な予選にしようとした結果、それがレギュレーションの複雑さを生んでしまうというジレンマも抱えていたように思う。

 特にQ1で2組に分かれるGT300は顕著であった。Q1 A組、B組それぞれの上位車両は上位グリッドを決める『Q2アッパー組』に、下位車両は下位グリッドを決める『Q2ロワー組』に回され、さらに最終的にはアッパー組下位とロワー組上位の順位をシャッフルするという流れは、関係者レベルでも理解に時間を要していた印象だ。

 また開幕当初は、タイヤ温存のためセッションを走らないマシンが出ることを防止するため、Q1もしくはQ2で基準タイムを満たさなかった車両をピットレーンスタートにする規則を設定したところ、Q1のアタックでトラックリミットをオーバーしタイム抹消になってしまったARTAの8号車が、この時点でピットスタートが確定したことからQ2を走らないという事案があった。要するに、セッションを走らないマシンが出ないように作ったはずの規則で、逆にセッションを走らない車両を生んでしまったということだ。こういったレギュレーションの整備にも、彼らは苦労していた。

 ただGTAは、一度設定したレギュレーションは変更しないといった強硬な姿勢をとっていたわけではない。開幕時から様々な意見を吸い上げて柔軟に対応する構えを見せており、上記の基準タイムの規則は即微調整。後半戦に向けては『Q1、Q2共に新品タイヤの使用可』『GT300 Q1の組分け撤廃』『GT300中位層の順位シャッフル撤廃』など、懸念が挙がっていた規則の変更に踏み切った。

 後半戦に向けた規則変更が発表された際には、「そもそも合算方式を廃止すべきだったのでは」というファンの声も散見されたが、これについてGTAレース事業部の沢目拓部長は当時、その点についてはかなり議論したものの、シーズン中に規則の根幹となる部分を変更するべきではないと考えたと説明していた。

障壁となった“雨”

 フォーマットに賛否はありながらも、規則のブラッシュアップを進めていたスーパーGT。しかし彼らには不運が襲った。後半戦で悪天候のレースが続いたことだ。

 そもそもウエットコンディションの予選では、時間経過による路面コンディションの変化、つまりタイムの変化が大きいため、Q2で組分けがあるGT300(Q1の組分けは撤廃)ではタイム合算方式は採用しないことになっていた。つまり雨が降ると、ブラッシュアップした予選方式の評価・検証がしっかりとできないのだ。

 にもかかわらず、後半戦最初のレースとなった9月の第6戦SUGOは雨で予選キャンセルとなり、公式練習のリザルトをグリッド順に採用。10月の第7戦オートポリスも土曜の予選が雨でキャンセルされ、日曜朝に計時予選が行なわれるイレギュラーな形を採った。11月の第8戦もてぎもウエット予選となったため、後半戦でドライでまともな予選ができたのは12月の第5戦(最終戦)鈴鹿だけだった。

写真: Masahide Kamio

 GTAは、このように分かりにくさを是正するために調整を施した予選の評価・検証が十分にできなかったことが、1年での廃止を決断した要因であるとしている。

 GTAの坂東正明代表はmotorsport.comの取材に対し、次のように述べた。

「(予選方式を)1年継続したのですが、それらのやり方に対する結論は天候の影響もありなかなか出ませんでした。(懸念として挙がっていた)分かりづらさに関しても、慣れの問題なのか、元々難しいものだったのか……評価するのがなかなか難しかった1年だったと感じます」

スーパーGTらしい予選

 タイム合算方式の予選は確かに複雑で、分かりにくさをはらんでいた。しかしながらGTAによる繰り返しの調整でそういった懸念は一歩一歩改善されつつあり、「合算タイムでポールが決まる」という根本的な部分も、観る者の慣れが進んでいくことが期待できたと言える。

 何よりタイム合算方式の予選は、“スーパーGTらしい”予選と言えた。スーパーGTは、ふたりのドライバーがペアを組み、チームと共に力を合わせて勝利を目指すというレースだ。そのふたりのタイムの合計でグリッド順を争うというのは、シリーズのコンセプトにも合致しているのではないか。

 象徴的だったのが、TGR TEAM au TOM’Sの活躍。彼らは山下健太、坪井翔というトヨタのトップドライバーふたりを起用しており、予選ではふたりがQ1、Q2で共に3番手に入ってポールを勝ち取ることもあれば、山下が振るわない時は坪井が、坪井が振るわない時は山下が好タイムをマークし、予選順位を押し上げた。昨年のようなau TOM’Sの独走劇は他チームのファンにとっては面白くないかもしれないが、彼らは新フォーマットの予選でまさに総合力の高さを見せつけていた。

写真: Masahide Kamio

「“ふたりでポールポジション”というものをちゃんと前面に出せなかった部分はあるかなと思います」と坂東代表は言う。

 チームの総合力が問われるタイム合算方式の予選こそが、スーパーGTの真髄……そんな新たな価値観をファンに根付かせるために、引き続き中長期スパンで粘り強く、新予選のブラッシュアップを進めていくというのも手だったのではないだろうか?

 坂東代表も「合算でのポールというものを継続してやっていけば、また違うのではないか、とも思う」と述べたが、一方で従来の分かりやすいルールに戻してモータースポーツの認知度を高めていくことを優先したのだと説明した。

「やはりお客様のわかりやすさを重視すると、2023年までの予選方式に戻すことが良いのかなと」

「我々やファンを含めたモータースポーツ全体で多面的な考え方を持てる状態であれば、色々なチョイスがあるのかもしれません」

「ただ今はモータースポーツ自体を浸透させ、認知度を高める段階にあることを考えると、一定の(既存の)ルールの中からスタートする方がいいのかもしれませんね」

 確かに不評だったし、現状はベストなフォーマットではなかったかもしれない。しかし試みとしては非常に興味深いものであり、いつかさらなる進化を遂げた形で、またタイム合算予選のスーパーGTを見てみたいとも思う。まずは単純明快な予選方式で幅広い層の方に楽しんでいただき、それがモータースポーツの認知度向上に寄与することを期待したい。

 

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