【スーパーGT】GT-Rからバトン受け継いだ”Z GT500”。空気抵抗減でストレートスピードが向上か?

日産は2022年シーズンから、スーパーGTの車両をGT-RからNissan Z GT500へと変更。首脳陣からの期待も大きい”Z ”だが、2021年がラストシーズンとなったR35 GT-Rの戦いぶりを踏まえて、Zに期待される進化について考えた。

【スーパーGT】GT-Rからバトン受け継いだ”Z GT500”。空気抵抗減でストレートスピードが向上か?

 日産の2022年シーズンのスーパーGT参戦マシンとなる”Nissan Z GT500”が、12月5日、富士スピードウェイでベールを脱いだ。残念ながら、ベースモデルの実物はまだ見ていないのだけれど、S30やZ33など、歴代の名車を彷彿とさせるシルエットがデザインされているように思う。もちろん、レーシングカーなので最も問われるのはそのパフォーマンス。

 シェイクダウンからまだ間がない段階で結論付けるのは早計というものだが、ひとつだけ確実と思われるコトは、ストレートスピードが、R35 GT-Rに比べて引き上げられているであろうということだ。 

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富士を得意としていた第三世代のR35 GT-R

 2017年にデビューした第三世代のGT-Rは、富士スピードウェイをむしろ得意としていた。そもそも、17年の規定変更は、コーナリングスピードが高くなりすぎたことに対応してレギュレーションを変更、ダウンフォースを約25%低減させることでコーナリングスピードを低下させる目的があった。想定した通りにコーナリングスピードをは下がったものの、ダウンフォースの低減はドラッグの低減にもつながることからストレートスピードはより速くなり、ラップタイムは前年までのマシンよりも速くなったほどだった。

2017年型の#23 MOTUL AUTECH GT-R

2017年型の#23 MOTUL AUTECH GT-R

 実際、第6戦の鈴鹿ではR35 GT-Rの24号車が、第8戦のもてぎでは同じくR35 GT-Rの23号車が、公式予選でコースレコードを更新してポールポジションを奪っている。そして富士で行われた第2戦では23号車が予選2位から決勝4位を奪い、開幕からライバルを一蹴する速さと強さを見せつけてきたレクサスLC500勢に食い込む活躍を見せ、第5戦でも23号車が予選2位から決勝でも2位につけていた。

 R35 GT-Rは翌2018年も富士に強いところを見せ、第2戦は23号車が勝ち、第5戦では23号車と24号車がフロントロウを独占していた。さらに2019年シーズン、第2戦は23号車が予選でトップ3が従来のコースレコードを更新しているが、ポールが23号車で12号車も3番手につけている。そして第5戦では23号車と3号車が、予選でフロントロウを独占。コンディションやタイヤなど様々な理由はあるだろうけれど、この世代のR35 GT-Rが、決して富士を苦手とはしていなかったことは間違いないところだ。 

新型コロナウィルスの感染拡大で作戦は裏目に

 2020年には3年ぶりにレギュレーションが変更され、トヨタは新たにGRスープラを投入、ホンダもベースモデルはNSXで変わらないものの、実態はフロント・エンジンにコンバートするなど、こちらも車両を一新してきていた。

 これに対して日産は、R35 GT-RをベースにしたNISSAN GT-R NISMO GT500は、第三世代のそれを一層発展させたモデルとして登場していた。そして高速サーキットの富士を得意としていた高速性能はそのままに、鈴鹿やSUGOなど高速テクニカルサーキットでのアドバンテージを追求していたようだ。言ってみれば得意科目はそのままに、苦手科目の対策を重視した格好だったが、しかしこの年のスーパーGTシリーズは、新型コロナウィルスの感染拡大により、開幕が大きく遅れてレースカレンダーも大幅に変更され、何と全8戦のうち半数となる4戦が富士スピードウェイでの開催となった。そしてこれがGT-Rを苦しめることとなった。 

 正確なところは分からないが、ダウンフォースを増したがためにドラッグが大きくなってストレートスピードでのアドバンテージを失うこととなったようで、結果的に富士を苦手とするようになったのだ。

 さらにその“苦手な富士”が全8戦中半分の4戦もあることで、GT-Rの苦戦ぶりが一層クローズアップされることになった。その一方で鈴鹿やSUGOでは好調さをキープし、2020年シーズン第3戦の鈴鹿では23号車が予選2番手から優勝、第6戦は予選でクラッシュした23号車が決勝では最後尾から怒涛の追い上げを見せて大逆転で優勝。さらに今年の鈴鹿でも予選3番手から逆転優勝で鈴鹿3連勝。さらに2年ぶりに行われた第5戦のSUGOでは12号車が5年ぶりに優勝……こうなると富士での苦戦がウソのように思えるが、やはり超高速の富士から高速テクニカルの鈴鹿&SUGO重視への作戦が裏目に出たと見てよいだろう。

 もうひとつ、2021年シーズンは、1基目のエンジンでもビハインドを背負っていた、とも聞こえてくる。それが証拠に、2基目のエンジンに換装したシーズン後半には、GT-R勢がスピードを取り戻していたのだ。もっともチームやドライバーサイドからは「もう少し馬(パワー)が足りない」との声も聴かれたが、ドライバーが「パワーはこれで十分」と言った例はないから、2基目のエンジンに進化してもなお、パワーでライバルに後れを取っているというのは不確かなところだが……。 

エアロ・コンシャスなボディシルエット

2021 Nissan GT-R GT500 NISMO(L) & 2006 Nissan Z GT500(R)
2021 Nissan GT-R GT500 NISMO(L) & 2006 Nissan Z GT500(R)
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写真:: Ryo Harada

Nissan Z GT500 unveil
Nissan Z GT500 unveil
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写真:: Motorsport.com / Japan

Nissan Z GT500 unveil
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写真:: Motorsport.com / Japan

Nissan Z GT500 unveil
Nissan Z GT500 unveil
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写真:: Motorsport.com / Japan

 このような条件下で誕生したZ GT500が、空力を徹底的に追求したのは明らかだろう。もっとも、あるチーム関係者によると「カウルを変えればGT-RがGRスープラにもNSXにもなる」と揶揄するようにモノコックを始めとするシャシーに関しては手を入れる部分は多くなくて、ライバルに差をつけるとしたらカウル(ボディワーク)、つまり空力が勝敗の分かれ目となる。

 そして確かに、スポーツカー然としたGRスープラやNSXに対して、リア部分にノッチのついた2ドアクーペのようなシルエットを持ったGT-Rは開発を始めた段階から大きなビハインドを背負っていたと言えるだろう。

 それが、こちらもスポーツカー然とした新型フェアレディZ(ちなみに、レーシングカーのネーミングはフェアレディが取れてZ GT500となる)をベースにしたことで、このビハインドはなくなったはずだ。

 風洞実験のデータが開示されているわけではないから、あくまでも推論に過ぎないのだが、ノーズの先端が低くなり、同時に左右が絞り込まれた形状は、いかにもドラッグが低減されたような印象がある。シェイクダウンから間がない今の状況で、Z GT500のポテンシャルを判断するのは早計とは分かっている。ただ栴檀は双葉より芳しい、と感じたのが先見の明だったかどうか。2022年シーズンの開幕がますます楽しみになってきた。 

 
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