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モータースポーツとの共通点がたくさん? 星野一樹が競馬に魅了された理由【連載:レース以外のこと聞いてみた】

レース関係者がハマっている趣味や、レース以外に情熱を傾けているものを特集する本企画。今回は、競馬を愛する星野一樹にロングインタビューを実施した。

親交のある田辺裕信騎手(中央)を囲んで。左から本山哲、安田裕信、星野一樹、池田和弘

写真:: 星野一樹

 モータースポーツ業界に携わる者たちは、根っからのレース好きが多く、趣味が高じて現在の職に就いている者が多い。とはいえ、そんな彼らにもレース以外の趣味があったり、レース以外でも情熱を傾けるものがあったりする。本企画では、レース関係者たちの“好き”にスポットライトを当てていく。

 今回インタビューしたのは、昨年限りでスーパーGTを引退し、現在は父が率いるTEAM IMPULを陰ながら支える星野一樹。レース界きっての競馬好きで知られる星野には以前から本企画のインタビューを打診していたが、ありがたいことに「5時間はちょうだいよ!」と前のめり。という訳で、オフシーズンに時間をいただき、5時間……とまではいかないものの、約2時間半に渡る過去最長のロングインタビューを敢行するに至った。


——それではよろしくお願いします。そもそも、なぜ競馬が好きになったのですか?

「元々、ダービースタリオンという育成シミュレーションゲームから入ったんですよ。高校1年くらいの時にどハマりしまして。どうやったら日本ダービーで勝てるのか。どうやったら凱旋門賞で勝てるのか。攻略本を買って、血統表を見ながら、馬の配合のことばかり恐ろしいくらい考えていました。めちゃくちゃオタク気質というか、色々調べちゃいます。野球のゲームにしても、プレイヤーじゃなくてチームを運営する方に回るのが大好きだったんですよ。だからレースにしても、実は乗り手じゃなくてマネージングサイドが向いてるのかなと……(笑)」

「レースを始めてからも競馬を見てはいましたが、ギャンブルとして馬券を買って、というところからは一旦離れていました。数年前に再開してからは一口馬主にハマりました。“リアルダビスタ”ができる訳ですよ。もちろん配合を自分で決めることはできませんが、血統を見ながら所有する競走馬を選べますからね」

——“自分の馬”が活躍することに喜びを感じているのですね。

「もちろんスポーツとして競馬が好きなので予想するのも楽しいです。予想する上では血統というファクターが一番上にいますね」

——ここまで何度か話題に挙がっている“血統”ですが、私のような競馬に馴染みのない人は、競走馬において血統が重要ということにあまりピンと来ないかもしれません。

「そうでしょ? 実はレースのクルマ作りと一緒なんですよ! 例えばF1のクルマがル・マン24時間は勝てないですよね? それは24時間走れるように設計されていないからです。これは馬も同じ。ダートの1200mと芝の2400mではまるで違う訳です。同じ芝2400mでも競馬場によって求められるものも違いますし。ル・マンに勝つためにネジ1個から作り始め、F1に勝つためにネジ1個から作り始める訳です。競馬もブラッドスポーツなので、東京競馬場2400mの日本ダービーに勝つために、この馬とこの馬を掛け合わせて……とものすごく手前の段階から始まっているんですよ」

「競馬は好きで始めましたが、レースをやっていく中で、レースと競馬はこんなに似ていたんだということで、さらにハマっていきました。仕組みもまるで同じで。ドライバーとジョッキーがいて、クルマがあって競走馬がいる。チームがあって厩舎があって、そこには調教師がいて監督がいて、厩務員がいてメカニックがいて……。それで馬主がいてやっと走れる訳ですが、レースにもスポンサーがいます。もっと言うと、その馬を生産する牧場があります……これは自動車メーカーのようなものですね」

——牧場が自動車メーカーで、厩舎はチームのようなもの……なるほど。

「今の日本の競馬界を席巻している牧場はノーザンファームです。これは社台ファームから派生していったもので、このふたつの牧場を傘下に収める社台グループが今の日本の競馬を牛耳っています。でも古くから残っているプライベーター的な牧場もあるので、気持ち的にはそっちを応援したくなったりもしますね。そういった牧場から、インパルやKONDO RACINGのような厩舎に行くわけです」

——いわゆる“良い牧場”は他とどういった違いがあるのでしょう?

「持っているデータ量も、お金も違います。世界中から良い繁殖牝馬を買い付けてきたり……とんでもない財力ですよ。町工場がF1作ってきたって絶対勝てないだろというのと同じで……でもたまに突然変異があるんですよね」

——ではメカニックと似ているという厩務員さんは、どんなことをされる方ですか?

「毎日馬と向き合って育てている人たちです。馬はエサのあげ方ひとつとっても、全部一緒ではないんでね。それぞれの馬の性格や癖とかを見抜いて育てています。メカニックも、工場で毎戦終わる度に全部バラして、一から組み上げている訳ですからね」

——馬の性格が競馬にも関係してくるというのも、競馬を知らない人にとっては驚きかもしれません。やはりかなり影響するのですか?

「めちゃめちゃしますね。走りたい走りたい!と常に全力で行きたいという気持ちが強すぎる馬は距離持たないです。途中で息抜きできないから。でも短距離は速かったりします。馬のスタミナは心肺機能だけでなく、気性も関わってくるので、性格によって全然変わりますね」

——なるほど、奥が深いですね。ちなみに星野さんは一口馬主ということですが、いわゆる馬主(個人馬主)とはどういった違いがあるんですか?

「ファンド会社のような形のクラブ法人があるんです。競りで買い付けてきた馬を『400人で1頭持ってみませんか」と売るような感じですね。僕らはそこの会員になることで、カタログや血統表などを見ながら出資したいと思った馬を申し込み、抽選で当たれば出資できます。1頭400口だったり、ハイリスクハイリターンなのは40口などで設定されたりしています。クラブ法人は色々な会社がありますが、僕はほぼほぼ全部入っています(笑)」

——個人馬主と比べると、気軽に出資できるんですね。出資している馬の数も結構いるんですか?

「見せますよ〜(スマホの画面を見せる)」

——こんなにたくさんいるんですか!

「今出世しているのはベレヌスとアリーヴォという馬です。未勝利に終われば1円にもならないというパターンもありますが、こうやって走ってくれた馬は回収率が1000%になったり……滅多にないですけどね。たまんないですよ〜」

「普通に馬券を買って見る目線と、1歳から見た馬を見る目線は違います。クラブから写真やレポートが送られて来たりして、我が子のように1年以上見てきて、デビューを迎える訳ですよ。競走馬ってデビューするまでも大変なんです。故障と隣り合わせなので。そこから勝ち上がって行くとなると相当大変です。そして3歳の夏くらいまでに少なくとも1勝しないと、そのまま引退させられてしまいます」

——そこもレーシングドライバーと似ていますね。デビューしても、下位カテゴリーで結果を残せなければキャリアが終わってしまう。

そう、結果を残していかないと。

——ちなみに有馬記念や日本ダービーなどの『重賞』の名前は自分もよく聞きますが、これに出るための基準はあるのですか?

「これもレーシングドライバーと一緒です。カートからFIA F4へ、という風にステップアップするじゃないですか。競馬も新馬戦、未勝利戦というのがあり、勝てば1勝クラス、2勝クラス、3勝クラス、オープンという風に進み、オープンレースの中に重賞があります。重賞は獲得賞金順に出られるレースですが、出走馬が足りなかったとしても未勝利(獲得賞金0円)の馬は出られません(一部例外のレースあり)」

——その中で、最もアツいレースを挙げるとするならば?

「それはね、全員一緒。日本ダービーです。これはなぜかというと、その世代の馬しか戦えないから(3歳馬のみが出走できる)。言ってみれば、甲子園みたいなものです。みんな球児は甲子園目指すじゃないですか。やっぱり世代の頂点になりたい訳です。各世代で7000頭くらい世にサラブレッドが輩出されますが、そのナンバーワンを決めるのが、日本ダービーです」

「ただ必ずしも、勝つ馬が一番強いと限らないのが日本ダービーです。やっぱり特性があるので、ダービーに特化している能力の馬が、4歳以上になった時に有馬記念に勝てるかといったらそうではない。ダービー馬が最強であるかと言われると、難しいです。“3冠”と呼ばれるレースの中で、速い馬が勝つのは皐月賞、強い馬が勝つのが菊花賞、運の良い馬が勝つのがダービーとよく言われます」

——なるほど、確かに甲子園という例えがよく当てはまりますね。それでは競馬の予想に関する話もぜひお聞かせください。馬券の買い方にこだわりはありますか?

「あまりないんですよね。色んな買い方するので。例えば安田(裕信)も競馬仲間ですが、あいつはとにかく単勝(1着に入る馬を予想して投票)か3連単(1着、2着、3着に入る馬を着順通り予想して投票)で、1着を当てること以外興味ないって感じです(笑)」

「3着以内は堅いけど1着はないかもしれない、そういう馬は単勝を買っても意味ないですが、でも馬券はその馬を軸にして入りたい……そういう時は複勝(着順問わず、3着以内に入る馬を予想して投票)、3連複(着順問わず、1着~3着に入る馬を3頭予想して投票)という考え方もあるし……僕はけっこうフレキシブルですね」

——やはり、予想する上で注目するのは血統ですか。

「やっぱり血統ですね。レーシングカーでも、もてぎはNSXが速いとか、サーキットによる特性とか、そういうところから入っちゃうかも」

——血統以外で注目する点はありますか?

「僕はレースのセットアップにしても、良くも悪くも細かかったんですよ。自分でも嫌になるくらい。競馬も全部の要素を知らないと嫌なんですよ。調教での状態、過去の対戦成績、色んなファクターがあるんですけど、全て確認するタイプです。本気で予想する時は、全出走馬の過去5戦くらいのVTRを全部見ます。不利があって負けたかもしれませんからね。例えば前走は9着だったけど、前が詰まって追えてない(つまり全能力を出しきていない)な、とか。そういうところまで知りたいタイプなので……疲れちゃうんですよね(笑)。でも、全ての要素を見ることが良いか悪いかは分かりません。ブレちゃうので」

——競馬は馬が横一列に並んでスタートしますが、内枠、外枠といった枠順はレースに影響を与えるのですか? 

「これは永遠のテーマなんですよ……。競馬場の距離によっても違うし、芝か砂か、スタートしてすぐにコーナーか、ある程度行ってからコーナーなのかによっても違います。内枠が得意な馬、得意じゃない馬がいるので大変です。ちなみに枠順は抽選で決まります」

「あとダートのレースで言うと、芝コースの上からスタートすることがあります。途中からダートに変わりますが、外枠の方が芝の上を走れる距離が長かったりします。芝の方がスピードが出るので、外の馬が前に出て良いポジションが取れたり。ただ、距離が短い方が速いので、一般的には外の方が不利ですね。レースでもアウトからではなかなかまくれないですし、インサイド取った方が勝ち……というのと同じです」

——ここまであまりジョッキーの話が出てきませんでしたが、ジョッキーがレースに与える要素はどうですか?

「これもレースと同じで、クルマが良くないとそもそも勝てないんですよね。それは馬も同じです。でも、もし全馬が同じ能力だったら、ジョッキー勝負です。職業柄ジョッキーで買いたくなることもありますね」

——それではこの辺りで最後の質問に……。これはお話を伺った全員に聞いているのですが、「あなたにとって競馬とは?」

「一生の趣味かな……。これだけは一生辞めることもなければ、死ぬまでやっていたいんで。でも趣味って軽く言いたくないかもな……。俺だけの新しい言葉なんかないのかもしれない。他の人はなんて言ってるんですか?」

——例えば、釣りの話をしていただいた高木真一さんは「攻めてるけど、心休まるひと時」とおっしゃっていましたね。

「僕はのめり込み過ぎちゃってるので、疲れちゃうんですよね(笑)。なんだろう……逆に競馬の魅力を言葉で伝えられる人っているの?って思います。分からないからのめり込むんでしょうし。『競馬ってここが楽しいんですよ!』とか分かっちゃったら、飽きちゃいそうだし……じゃあ、『分からない』が答えだ!」

——星野さんらしい良い答えだと思います。

「一生かけても分からないと思います。血統にしたって、絶対がない。でも傾向は出ちゃうから、それに基づいて予想するなど、『え〜こんなことが起きるの?』ということがある。だから『分からない』というのを答えにします。一生出ないものを追い求めているので」

——これはレースも同じですか?

「同じです。僕にとってレースとは何かと言われても……分からないです。取り憑かれちゃってるので……じゃあ(競馬も)職業なのかな?(笑)」

——本当に好きだからこそ、簡単に言葉では表せない、というのは痛いほどよく分かります。本日はありがとうございました!

 ちなみに今回お届けしたインタビュー内容は、ほんの序の口。さらにディープな競馬の世界について語ったインタビュー後半の模様も近日公開!

 
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