インタビュー
スーパーGT
営業経験も活かせてます! 安定を捨て、レース業界に……2度とないかもしれない好機に飛び込んだMUGENマネージャー|モタスポ就職白書
モータースポーツ業界で働く人たちに、その実態などをインタビュー。今回はTEAM MUGENの安藤巧マネージャーに話を聞いた。
戎井健一郎
公開日時: 2025/01/25 10:33
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写真:: Masahide Kamio
人生は巡り合わせと、それに伴う選択の連続だ。日々生きる中で様々なチャンスが生まれては、それに気付かぬ者、見て見ぬふりをする者、掴み損ねる者、そして見事掴み取る者……人それぞれだ。
TEAM MUGEN(株式会社M-TEC)でアシスタントマネージャーを務める安藤巧氏は、「2度とないかもしれない」チャンスを掴んでレース業界に入ったひとり。今年で入社3年目を迎えるが、既にスーパーフォーミュラ、スーパーGTのパドックでキビキビと仕事をこなしており、現場でのメディア対応ではそのフットワークの軽さとフレンドリーさに、我々も常々助けられている。
小さい頃からクルマ好きで、そこからF1やスーパーGT、スーパーフォーミュラなどのモータースポーツにも興味を持ったという安藤マネージャー。就活を始めるにあたり、自動車やモータースポーツに関わる仕事がしたいと意識するようになり、大学卒業後に自動車メーカーに就職。3年ほど営業職を務めた後、M-TECに入社することとなる。
「いわゆるディーラーマンの仕事もしましたし、町の自動車屋さんに車を卸売りする“業販営業”も経験しましたね」と語る安藤マネージャー。そんな安藤マネージャーがM-TECに入社するきっかけは何だったのか?
「業販営業で担当する販売店の社長さんがスーパーフォーミュラの外注メカニックとしてM-TECで働いていたんです。担当として仲良くさせていただいている中で、たまたまM-TECがマネージャーを募集していて、『応募してみれば』と言われたことがきっかけでしたね」
「それからスーパーフォーミュラの現場に招待していただき、実際に現場を見て、やってみたいと思いました」
「僕は元々文系だったので、車には興味があるといっても手に職があるわけではありませんでした。いきなりメカニックとして入ってクルマに触ったり、エンジニアとしてセットアップを考えるのはなかなか無理だなと……その中で自分でも活躍できそうな職種があるんだと思ったことも(決断した理由の)ひとつでしたね」
そう語った安藤マネージャー。レースチームのマネージャーの仕事は多岐に渡り、またチームによって業務内容が異なることもあるため表現するのは難しいと言うが、「サーキットでの仕事はいわゆる体育会の部活のマネージャーという言葉が一番近いのではないか」という。セッション後に車両保管所でマシンを降りてピットに戻るドライバーの傍らで、装備品を預かりながらドリンクやタオルを渡したり……そんなマネージャーの姿は中継映像でも捉えられることが多い。
またサーキット以外での仕事に関しては、テストやレースで毎週のように出張するチームスタッフたちのホテルの手配に始まり、レースウィークの移動などをはじめとするスケジュール管理、装備品のメンテナンスなどがメイン。ルーティン化された仕事も多そうだ。
自動車メーカーの営業マンから、レーシングチームのマネージャーへ……一見すると全く異なるスキルが求められる仕事のようにも感じられるが、安藤マネージャー曰く営業での経験は現在の仕事に大いに活きているという。
「営業職に限らないことではありますが、特に営業は色々なところから電話がかかってきます。その電話に対してできるだけ早く対応したり、優先順位を決めたりと、その場その場で降りかかる仕事をこなしていくスキルは営業で培いました。それが今に活きていると思います」
営業経験が、レースチームでの仕事にも活かされている
写真: Masahide Kamio
ドライバーやエンジニア、メカニックと同じように、突発的に起こるイレギュラーに対応する力が求められるマネージャー職。その他にも、空気を読んで行動を起こす“気遣い力”もプラスになるようだ。
「周りを見て、『この人何が欲しいんだろう』とか『何か困ってそうだな』と考えたり……やはり一番は気を遣えること。相手の表情や雰囲気から察する力は必要というか、あるといいなと思いますね」
モータースポーツ業界は安藤マネージャーに限らず、その多くがレース好きが高じて業界入りした人だと言える。“好きを仕事にする”ということは、当然決して良いことばかりではなかったりもするが、そこでしか味わえない尊さもある。
安藤マネージャーが現在の仕事を「これ以上ない環境だ」とする根拠は、“勝利”を味わえるということ。社会人になると、スポーツチームに属したりと特殊な環境に属さない限り、勝利の喜びや感動は味わえない。
「(2024年に所属)2年目になって自分の中でも気持ちに余裕が出てきて、自分の好きな場所、好きな環境にいるということをより実感できています。これは仕事のやる気にもつながります」
「それに、勝つことでドライバーとチームと一緒に喜びを分かち合うことができるというのは、素晴らしく、これ以上ない環境だなとすごく思いますね」
昨年スーパーフォーミュラではTEAM MUGENとして、スーパーGTではARTA無限として共に勝利を記録
写真: Masahide Kamio
「前職の営業でも、確かにクルマを1台売って嬉しいという気持ちは少なからずありました。でも売ること自体が仕事ですから、そのひとつひとつが喜びに繋がるかというと、徐々に薄くなっていってしまうというのも正直なところです」
「ただうちのチーム(TEAM MUGEN)はありがたいことに、SFでもGTでも勝つことができています。そういう経験はなかなかできないと思うので、かなり恵まれているなと思います」
モータースポーツ業界は、あらゆる企業、チームが大規模な採用活動をしているわけではなく、現状狭い業界と言わざるを得ないのも確か。安藤マネージャーも、前職での縁が業界入りに繋がった。彼はこの業界を志望するならば、一歩踏み出す勇気は必要になってくると語った。
「この業界に入るには、やっぱりアンテナを張るしかないかなとは思いますね。それこそ募集がなくともチームに直接メールや手紙を送るとか、やり方はいくらでもあると思います」
「僕も含めた今の若い世代にとって、その1歩を踏み出すのはなかなか難しいとは思います。そこには勇気がいると思いますが、やっぱり勇気を出すのが一番大事かなと。僕も(M-TEC入社は)ご縁があったのは確かですが、安定した職に就いていた中で、このマネージャーという仕事に応募するかどうかを決断したのは自分ですから」
「自分はどちらかというと安定志向だと思っていますが、レース業界に入るのは絶対に無理なことだと思っていた中で、閉ざされていたはずの道が開けた……もう2度と入れないかもしれないから、いくしかないと思いました。ご縁があったら、そのご縁を逃さないように自分で動くことも、絶対的に大切なことだと思います」
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