日本のチャンピオン坪井翔にとって、F1とはどんな存在なのか? 国内ダブルタイトルを獲得したからこそ言えるホンネ|特別インタビューその3
2024年にスーパーフォーミュラとスーパーGTでダブルタイトルを獲得した坪井翔。今は彼らトヨタドライバーにも「F1への道」が開けてきているが、坪井にとってF1とはどんな存在なのか?
写真:: Masahide Kamio
2024年、日本のスーパーフォーミュラに新たなチャンピオンが誕生した。その男は坪井翔、29歳。スーパーGT・GT500クラスで既に複数回のタイトルを獲得するなど、日本のトップドライバーのひとりとして地位を確立しつつあった坪井が、ついにフォーミュラでも戴冠を成し遂げたのだ。しかも同年にはGT500でも3度目の王座に輝き、国内トップカテゴリー2冠となった。
国内最強ドライバーとして以前にも増して注目を集めることになった坪井には、F1への思いを尋ねる質問も飛ぶようになった。それもそのはず、時を同じくしてF1パドックではトヨタが存在感を示しはじめており、坪井と同じくトヨタのドライバーである平川亮や宮田莉朋が、テストやフリー走行で次々F1ドライブのチャンスを手にしているからだ。
ハースF1チームとの提携を含めたトヨタの一連の動きは、同社が2009年を最後にF1から撤退したことで、トヨタ系ドライバーがF1という夢を公言し追い求めることが難しくなっている、そんな現状をどうにかしたいという豊田章男会長の思いもあったと言われている。坪井もまさに、F1の夢は「半分諦めていた」という。
さて、今は周囲の環境的にも自身の実績的にも申し分ない状態だ。F1の夢を語っても誰も文句は言うまい。前述の平川や宮田と違い、F1に対する思いを積極的に語ってこなかった感がある坪井だが、内心どう思っているのか? 開幕前のロングインタビューの中で胸中を尋ねた。
写真: Masahide Kamio
「5歳からカートを始めて、小学校、中学校の卒業文集でも『将来の夢はF1レーサー』と書いていました。子供の頃からF1を夢見てやってきました」と坪井は明かす。
「ただ僕がトヨタに入った時は(トヨタがF1から)撤退していたので、その夢はないなと勝手に半分諦めていたのが正直なところです。でも今は(トヨタが)ハースと提携をしたり、(トヨタ系の)日本人ドライバーがF1のFP1に乗ったり、チャンスが広がってきている感覚があります」
「ただ夢を追いかけるにしても、現実問題年齢もそれなりのところまで来ているので、本当に最初で最後のチャンスかなと思っています。夢である以上1回は乗ってみたいし、レースに出られるチャンスがあるなら掴みに行きたいと思っています」
「今、ダブルタイトルを獲ることができたからこそ、そう思えるようになったというのが本音です。たぶん、去年スーパーフォーミュラでタイトルを獲れていなかったら、F1に乗りたいと公言できなかったと思います」
坪井は、大きな夢を叶えるためにその夢を口にするということは大切なことだと尊重した一方で、自らはあくまでリアリストであり、あまり壮大な夢物語を語りたくないタイプなのだという。次の目標に目を向けるのは、今いる場所で結果を残してから——。そういった価値観も、これまで坪井からF1というワードがなかなか出てこなかった理由のひとつなのだろう。
それに、坪井にとってF1は夢であるものの、そこにこだわっているわけでもない。何より目指すのは、圧倒的な速さ、強さで子供たちに夢を与えるレーシングドライバーだ。
「夢を追い求めるなら今しかないし、逆にこのチャンスが掴めなかったら、僕は日本でやり続けるしかないと思っています」
写真: Masahide Kamio
「そういった夢を追うことも大切ですが、僕はカテゴリー云々というよりも、やっぱりレースが好きなんです。だから日本でレースをするならスーパーフォーミュラやスーパーGTに長く乗り続けたいと思っています。小さい子たちに夢を与えるようなドライバーになりたいですし、『坪井には誰も勝てない』とみんなに言わせたい……F1に乗ったからそうなれるわけでもないし、どのカテゴリーでも勝てないと思わせたいですね」
「夢はF1ですが、そこにしがみつくというよりは、誰もが認めるような、日本一、世界一のドライバーになりたいのが一番です。日本一になれないと世界一になれないので、まずは日本一だとみんなから言われるドライバーになることですが、ありがたいことに最近はお世辞でもそうやって言ってくれる人が増えてきているので、そこはひとつ大きいですね」
「その先にF1のチャンスがあるのなら、目指すべきだと思っています。特に去年は『日本一速いのは俺だ』と示せた年だったと思いますから。ライバルはたくさんいますが、チャンスは掴みたいですね」
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