富士を沸かせた猛追撃。D'station最後尾からの3位表彰台、藤井「全てがうまく回った」

WEC富士6時間レース、LM-GTE Amクラスで3位表彰台を獲得した777号車D'station Racing。藤井誠暢と星野敏は、実力で獲得した表彰台を喜んだ。

富士を沸かせた猛追撃。D'station最後尾からの3位表彰台、藤井「全てがうまく回った」
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 3年ぶりに日本での開催が実現したFIA世界耐久選手権(WEC)。多少スピンする車両などはあったものの、大きなクラッシュやセーフティカー出動もなく、クリーンなレースでトヨタのGR010 HYBRIDがワンツーフィニッシュを飾った。

 だが日本のファンを最も沸かせたのは、トヨタではなかったかもしれない。777号車D'station Racing(星野敏/藤井誠暢/チャールズ・ファグ組)が、スタート直後の追い上げで魅せたからだ。

 LM-GTE Amクラスを最後尾13番手からスタートした777号車は、藤井が怒涛のオーバーテイクショーを展開。レース開始から30分も経たずに、首位に躍り出ることに成功したのだ。

 そもそも、777号車はFP1でクラス2番手タイムを記録するなど、出足は上々だった。藤井と星野は共に「行ける」という感触を掴んでいた。しかし、予選で黄旗時の減速違反をとられ、4番手タイムが幻になってしまった。

「練習から良いタイムが出ていて、これは予選行けるなと思っていたんですけども、ちょっとセッティングがおかしかったのか、オーバーステアになってしまってなかなかタイムが出ませんでした」

 そう星野は予選を振り返った。

「なんとかアジャストして最終ラップで出した4番手タイムが抹消になり、最下位からのスタートになってしまったんです」

 そうしてレースを迎えた777号車。スタートを任された藤井は前述のような凄まじいまでの走りを見せた。

「元々頑張って表彰台に行きたいなと思っていました」と、藤井は語った。

「自分のスティントでとにかく前に出て、マージンも築いておかないと順位が上がらないですからね。後ろにいたら、ずっと後ろになっちゃうので。とは言っても、厳しいなと思っていましたが、全てがうまく回りました」

「富士は日本だと大きいコースなんですけど、海外と比べたら小さいので、意外と抜くところが少なくて難しいかなと思っていたんですが、思った以上にクルマが決まっていたし、思った以上に前をうまく処理できました」

「(アストンマーチンの)若手ファクトリードライバーのデイビッド・ピタード(98号車ノースウェストAMR)とのバトルになったんですが、彼を引き離すこともできたし、2台でいいペースで走ったので、周りに対してもっと(タイムを)稼げたことになります」

 藤井から首位でバトンを受け取った星野は、プレッシャーが大きかったとこぼしたが、格上のドライバーたちと遜色ないペースでダブルスティントを駆け抜けた。

「藤井選手があっという間にトップになってくれました。その後私が引き継いだんですが、プレッシャーがありながらも、死に物狂いで維持したいなと。頑張ってダブルスティント2時間走り抜けたので、自分の仕事はしっかりできたのかなと思います」

「平均ラップタイムを見たら、ブロンズの中でベン・キーティング(優勝した33号車TFスポーツ)の次でしたね」

 3番手として登板したファグもきっちりと仕事をこなし、レース終盤に表彰台圏内の3番手を走行。しかし、そこに強敵が襲い掛かった。54号車AFコルセのダビデ・リゴンだ。

 リゴンは、DTMと開催日程が被ったために欠場となったニック・キャシディの代役。キャシディの方が与し易かったと言うつもりは毛頭ないが、リゴンはフェラーリのファクトリードライバーとして耐久レースで実績を重ねてきており、星野が”ほとんど違反”と零すほどの名手だ。

 リゴンがファグの後ろに迫ったことで、777号車は戦略変更を余儀なくされたと、藤井は言う。

「最後、もう一度僕が走る予定だったんですが、星野選手のスティントを伸ばせたので最後のピットストップをスプラッシュ(短時間の給油のみ)でいけそうになったんです」

「そこでドライバーが代わると時間がオーバーしちゃうので、チャーリーが行くことになりました。ですがリゴンがあまりにも速かったので、タイヤも替えてフルプッシュというデッドヒートのレースになったんです」

 実際、リゴンは最後のピットストップを済ませたファグの前に1度出ることに成功する。しかし、ファグが新しいタイヤのアドバンテージを活かして逆転。見事に表彰台をもぎ取って見せたのだ。

「タイヤは替えて正解でした。(一旦抜かれた後)よく抜いてくれましたよね。相手は名手なので」と藤井はファグを称えた。

 今季、速さはありながらも、なかなか結果が出ていなかった777号車。藤井は、たとえ予選4番手からスタートできていたとしても簡単にはいかなかっただろうと語った。

「前からスタートして全てが決まったとしても簡単じゃないです。世界には速いブロンズドライバーがたくさんいます。シルバーとは言えないシルバーばっかりだし(笑)。ゴールドやプラチナはほとんどファクトリーのドライバーだしで、全部のカテゴライズで本当にみんなトップクラスです。ノーミスで行くとみんな僅差になっちゃいます」

「タイヤもイコールだし、BoPも僅差でやってるので、それがWECの醍醐味かもしれないですね。道具の差が大きいわけじゃないから、本当にドライバー勝負、チーム勝負なので、やりがいはすごくあります」

「終わってみて今日、ラッキーで獲った3位じゃないのですっごく嬉しいです。チームD'stationとしても良かったと思います」

 
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