スーパーフォーミュラで6連勝! ダンディライアン、翼をもがれたはずなのになぜ強い……今も残る『独自設計ダンパー』の遺産を探る
スーパーフォーミュラでは、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGが開幕4連勝。昨年末からの年またぎで6連勝と、圧倒的な強さを見せている。彼らはかつてダンパーを独自設計していた知見が今も活かされているようだが、その点について改めて吉田則光監督に聞いた。
写真:: Masahide Kamio
F1ではレッドブルから覇権を奪ったマクラーレンが抜きん出た強さを見せているが、スーパーフォーミュラでマクラーレンと同等、いやそれ以上に強さを発揮しているのがDOCOMO TEAM DANDELION RACING(ダンディライアン)だ。
NTTドコモをメインスポンサーに据えて25年以上国内トップフォーミュラに参戦し、特に近年はタイトル争いの常連となっているダンディライアン。車両変更があった2023年の前半戦こそつまずいたが、後半戦から戦闘力を格段にアップさせると2024年にはチームチャンピオンに輝いた。奇しくもF1のマクラーレンと同じ流れを辿っている。
今シーズンは開幕から牧野任祐と太田格之進が勝利を分け合い、4連勝。昨年最終大会での連勝も含めると年またぎで6連勝となった。同一チームによる4連勝は2009年のNAKAJIMA RACING(小暮卓史/ロイック・デュバル)以来16年ぶり。6連勝以上となると、F1帰りの高木虎之介がNAKAJIMA RACINGでシーズンを席巻した2000年以来、実に25年ぶりとなるのだ。
「うちのチームは(スーパーGTやスーパー耐久にも参戦する他チームと違って)SFにしか参戦していませんし、地道に細かいことを積み重ねた成果が出ているのだと思います」
そう語るのは、チーム監督であり太田のエンジニアも兼ねる吉田則光氏だ。この吉田監督は、人呼んで“ダンパーマイスター”。ダンパーは車体の前後左右の傾きなどを制御して安定したグリップとダウンフォースを確保するために非常に重要なパーツであるが、ダンディライアンは長く吉田監督が設計したオリジナルのダンパーを用いることでそれを強みとしていた。
「自分で(ダンパーの)デザインをして、加工屋さんに製造をお願いして、そこからのアッセンブリ(組み立て)は自分でやっていました。スーパーフォーミュラがまだスウィフト製シャシーを使っていた頃からなので、2010年ごろからですかね」
またダンパーを独自設計することになった経緯について吉田監督は、昨年のインタビューで次のように説明していた。
「それぞれのダンパーの良い部分を色々とミックスして、一番良いであろうダンパーを作ることができればと思っていました」
「ダンパーメーカーの場合はパテント(特許)など色々と引っかかってしまい、(他メーカーの良い部分が)良いと思っていても使えないと思いますが、ただ我々はダンパーメーカーではないので、自分たちだけで作って使う部分には特許に引っ掛かりませんから」
しかし、スーパーフォーミュラでは2024年からダンパーがオーリンズ製の共通パーツに。つまりオリジナルダンパーは使えなくなった。またそれに加えて、車両の加速度に応じて反力を生むことで加減速時のピッチング(前後の傾き)を効果的に制御できていたイナーターも廃止。サードエレメントは、スライダーと呼ばれる減衰機能を持たない簡素なものに置き換えられた。これらの規則変更は、ダンパーマイスターにとっても痛手になるかと思われた。
ただリザルトを見れば分かるように、ダンディライアンは戦闘力を落とすどころか、むしろ強さを増している。吉田監督は以前、ダンパーが共通化されたとしても、ダンパー内製によって得た知見によって、他のチームが踏み込んでいない領域のセットアップができると話していたが、まさにそれが強みになっているようだ。
「ダンパーやスプリングが自由で、イナーターダンパーを使っていた頃が一番楽しめました(笑)。おそらく他のチームのエンジニアさんもみんなそう言うと思いますよ」と言う吉田監督。逆に言えば今ではダンパーでの差別化要因が少なくなっているためダンディライアンのアドバンテージが小さくなるのではと思ってしまうが、ダンパーの中身や構造まで熟知していることで、今のオーリンズ製ダンパーのウィークポイントを確かに感じ取っているのだという。
「ダンパーをデザインしていたので、今のコントロール(共通)ダンパーの構造上のウィークポイントも分かるんです。これはオーリンズも分かっていることだと思いますが」
「単純にダンパーをダイナモ(試験装置)にかけて、数字の擦り合わせをするということはもちろんしていますが、その中身がどうなっているかについては、おそらく皆さんあまり分かっていないんじゃないかと思います。その中身を理解しているからこそ、それを踏まえてアジャスターをどうするかなどを考えますので、そこは少しプラスになっているかなと思います」
そんなダンディライアンのマシンは、他陣営のエンジニアから見ても驚くほど安定しているという。ThreeBond Racingの一瀬俊浩エンジニアは、その挙動をこう解説する。
「なんと言えば良いのか分かりませんが、“尖ってない”と言いますか……クルマ的にはどこに行っても(前後左右に)動いているのですが、しっかりタイヤが接地していて、それでいてダウンフォースもしっかり出ています」
「普通はクルマを動かしていくと、全然ダウンフォースが出ないといったことになりがちですが、そこがないように見えます。結構跳ねがちなオートポリスの1コーナー手前でも、跳ねはしてもすぐにグリップが戻っている雰囲気があります。どうなってんのという感じです(笑)」
週末に行なわれる第5戦の舞台であるオートポリスも、昨年牧野が優勝したコースであり、チームとしても苦手意識はない。週末の雨予報が波乱を起こす可能性もあるが、果たしてダンディライアンの7連勝/開幕5連勝はあるのか……?
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