濃密な1年……F1出走を果たした山本尚貴が2019年に見た“夢と現実”

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濃密な1年……F1出走を果たした山本尚貴が2019年に見た“夢と現実”
執筆:
2019/12/31 11:11

日本人ドライバーとして5年ぶりとなるF1出走を果たした山本尚貴の2019年を振り返る。

 2018年に国内2大カテゴリーを制し、2019年にはF1日本GPのフリー走行1回目に出走した山本尚貴。本業であるスーパーGT、スーパーフォーミュラのレースもこなすなど、彼にとっては“濃密な1年”だった。

 まもなく終わりを迎えようとしている2019年。日本のモータースポーツ界にとっても様々なニュースがあった1年ではあるが、中でも欠かすことのできないトピックのひとつが『山本尚貴のF1日本GPフリー走行1回目の出走』だろう。

 2018年にスーパーGT(GT500)とスーパーフォーミュラでダブルタイトルを獲得し、史上4人目となる国内2大カテゴリー同時制覇を成し遂げた山本。2019年には自身も“憧れの場所”だったと語るF1の舞台での走行チャンスを手にした。

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 事前にF1マシンでドライブする機会がなく、完全にぶっつけ本番で臨んだ山本だったが、セッション中は大きなミスもなく、出走した20台の中で最多となる30周を走破。関係者からも高評価を得る仕事ぶりだった。

「正直、『(憧れの)舞台に立ったな』という感慨深さみたいなものは、ヘルメットを被る前は感じていました。でもヘルメットを被ってからは完全にいつも通りレーシングカーをドライブするレーシングドライバーになっていたので、『これがF1なんだ』というのは(セッション中は)あまり考えていなかったです。とにかく目の前にあるレーシングカーをしっかりと操ることに集中していましたね」

「最初の1周はもうちょっとF1というものを楽しめるのかなと思いましたが、正直そんな余裕はなかったです。インスターレションラップではラジオのチェックをはじめ、やらなければいけないプログラムがたくさんありました。だから……あっという間の1周でした」

「ようやく(観客席を)しっかり目視できたのは、最後の周でしたね。もちろん最初のラップから全く目に入っていなかったわけではないですが、やっぱり(最後は)歓声も感じるものがあったし、F1は特別だなと感じた瞬間でしたね」

「本当は最後ゆっくり走って、みんなに手を振って帰ってきたかったんですけど、PU側やタイヤのデータ取りも含めて、あまりゆっくり帰ることができなかったです。なので、味わってインラップを帰ってくることはできませんでした。それでもいくつかのコーナーで、応援してくれていたファンのみなさんに手を振ることができました。すごく感動的な瞬間でした」

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 このF1での出走の準備のために、山本は主戦場である国内レースの合間を縫ってヨーロッパに渡りトロロッソホンダに帯同したり、F1走行のための準備に励むなど、例年になく多忙なシーズンを過ごした。

 その中で得られた数多くの経験……改めて山本は、自身の2019年をこのように振り返った。

「濃密な1年間……という感じでしたね。複数カテゴリーを掛け持つというドライバーはたくさんいますけど、その中でFP1のみでしたがF1を掛け持つというのはなかなか多くのドライバーが出来ることじゃないです。さらに乗ったことがないマシンに対して勉強して早い時間で習得しなければいけないというのは、かなり大変なことでした」

「でも、こういった機会を得られたのも、昨年(2018年)にふたつのタイトルを獲らせてもらって、それをきっかけに応援してくれたホンダとレッドブルという支援者がいたからこそ、ああいうチャンスをものにすることができました。そういった意味でもスーパーGTで一緒に戦ったジェンソン(バトン)をはじめ関係者の皆さんに対しては感謝しかないです」

 幼少の頃から憧れていたF1の舞台に立つことができた山本だが、その一方で“結果”という部分では悔しさの残る2019シーズンとなった。

 スーパーフォーミュラではチーム移籍初年度ながら開幕3戦連続で表彰台を獲得。特に第3戦SUGOでは予選からコースレコードを塗り替える速さをみせ、ポール・トゥ・ウィンを飾った。序盤から前年王者らしい安定した強さをみせたが、最終的にニック・キャシディに逆転され、僅差でタイトルを逃した。

 スーパーGTにもジェンソン・バトンと組んでGT500連覇を目標に臨んだが、不運なアクシデントが続くなど歯車が嚙み合わないシーズンとなり、ランキング8位で終えた。

 念願の出走を果たしたF1日本GPのフリー走行1回目でも、チームメイトのダニール・クビアトに対し遜色ないタイムを記録したものの、それぞれが装着していたタイヤも違うなど、セッション後は「悔しい」と語っていたのが印象的だった山本。シーズンを終えた彼は、改めて悔しいシーズンだったと語りつつも、2019年に経験したことを糧にして2020年の飛躍につなげたいと、すでに前を向いて歩み出していた。

「これでF1もうまくいって、GTとSFでチャンピオンを獲得できれば、それに越したことはありません。でも……良い時よりも、負けた時の方が“得られるもの”多いのかなと思います」

「SFに関してはニック(キャシディ)がチャンピオンを獲って、GTでは6号車(WAKO’S 4CR LC500)がチャンピオンを獲ったのを目の当たりにしました。やっぱり悔しくないわけがないです」

「この悔しさを晴らすには、ライバルに勝つことでしか打ち消せないです。それが自分にとってモチベーションになっているのかなと改めて感じた部分もあります。このまま終わらないようにしなければいけませんし、このままでは終われません。2020年は絶対に巻き返したいなと思います」

 今や『ニッポンのエース』と呼ぶにふさわしい活躍を見せている山本尚貴。2020年は彼にとって“新たな目標”と“新たな挑戦”に立ち向かう1年となりそうだ。

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この記事について

シリーズ F1 , スーパーGT , スーパーフォーミュラ
ドライバー 山本 尚貴
執筆者 吉田知弘