コラム
Blancpain Endurance
ヨーロッパで見る機会が減った国内メーカーのGT3……その理由を探る:英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
日本を拠点に活動するmotorsport.comグローバル版のニュース・エディター、ジェイミーがお届けするコラム。今回のテーマは、ヨーロッパのカテゴリーでの参戦が激減した日本メーカーのGT3車両について。

Jamie Klein
公開日時: 2022/08/30 9:24
Copy link
Viberでシェア
Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

先月末、ベルギーのスパ・フランコルシャンでは伝統のスパ24時間レースが開催されました。GT3規格のマシンにとっては最高峰ともいえるレースですが、そのエントリーリストには2年連続で日本のメーカーの名前がありませんでした。
アウディ、BMW、メルセデス、ポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニ、アストンマーチン、マクラーレン、ベントレー……そこには世界を代表するビッグネームがズラリと並んでいます。しかし、日産のGT-R NISMO GT3、ホンダのNSX GT3、レクサスのRC F GT3といった日本のマシンは、ヨーロッパのメーカーに負けない力を持っているにも関わらず、スパのグリッドに並んでいないのです。
こういった状況を鑑みると、日本の自動車メーカーは、ヨーロッパという賑わいのあるマーケットで自社の製品を売り出そうとしていないようにも感じてしまいます。
GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCE)を主催するSROはスパで、各メーカーのGT3車両が世界でどのくらい走っているのかに関するデータを公表しましたが、これは非常に興味深い数字でした。日本のメーカーは軒並み下位に沈んでいて、4台のレクサスはベントレーと並んで同率最下位。日産は9台、ホンダは14台(アキュラブランド含む)でした。ちなみに上位のメーカーを挙げると、メルセデスが63台、アウディが50台、ランボルギーニが42台と、その差は歴然です。
もちろん、スーパーGTやGTワールドチャレンジ・アジア、スーパー耐久など、日本のレースでは国内メーカーのGT3車両が盛んに走っています。また北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権でも、アキュラ(ホンダの北米ブランド)とレクサスがGTデイトナクラスで活躍しています。ただ、ヨーロッパにおいては話が違うということなのです。
数年前までは、日産もレクサスもホンダも、ファクトリーチームやそれに準ずる体制でGTWCEやインターコンチネンタルGTチャレンジ(IGTC)に参戦していました。その一環としてスパ24時間にも出場していたのです。3社ともその実力は折り紙付きだったのですが、それでも積極的に自分たちのマシンを選んでもらえるほど、カスタマーチームを納得させることはできなかったようです。
2015年には日産(NISMO)がバサースト12時間に参戦し、千代勝正の活躍もあり総合優勝を収めており、日本のGT3が世界の舞台で通用することを証明しています。ちなみに彼らは翌年のレースでも1.2秒差の2位に入っています。
RJNとタッグを組み、RJNがチーム運営をするという形で参戦していた日産ですが、残念ながら日産の資金提供は2018年シーズンを最後に終了となり、パートナーシップは解消となりました。当時チームに参加していたとあるドライバーによると、GT-Rのランニングコストは欧州車の2倍であり、スペアパーツも高価だったそうです。プライベーターチームにとれば、GT-Rを走らせるのは経済的ではないようです。
2019年にはKCMGがGT-RでIGTCに参戦し、バサーストにも出場しましたが、翌年KCMGはポルシェにスイッチ。それ以来、日産はヨーロッパのトップレベルのGT3選手権に参戦していません。
#14 Emil Frey Lexus Racing Lexus RC F GT3: Christian Klien, Albert Costa, Marco Seefried
Photo by: Marc Fleury
レクサスに関しても、2018年のポール・リカール1000kmでエミール・フレイ・レーシングがRC Fで優勝しましたが、彼らは翌年からランボルギーニに車両を変更。その後はテック1レーシングがRC Fを走らせていましたが、その関係も2020年をもって終了となりました。
そしてホンダは、JASモータースポーツがファクトリーチームを運営する形で2019-2020年のIGTCに参戦しました。優勝こそありませんでしたが。2019年のラグナセカではポールポジション、2020年のインディアナポリス8時間では表彰台を獲得、そしてシリーズ最終戦のキャラミでは不運なコーションに勝利を奪われたものの、優勝まであと一歩というところまで迫りました。
当時スーパーGTに参戦する傍ら、IGTCでNSX GT3をドライブしていたベルトラン・バゲットは、NSXが2年間のプログラムの間に優勝できなかったことが、ホンダがその後プロジェクトを継続しなかった理由ではないかと考えています。
しかし一方でバゲットは、少なくともヨーロッパにおいてはホンダというブランドがそれほど魅力的ではなく、カスタマーチームを惹きつけることができなかったのではないか、とも考えています。彼は昨年、「クルマは良いのに残念だ。ポルシェやメルセデス、アウディと戦うのに十分な性能を持っている。信頼性も高いし、24時間レースも全て完走しているのに、なぜSROの選手権でもっと多くのチームが(NSXを)使わないのか分からない」と話していました。
#29 Team Honda Racing Honda Acura NSX GT3: Dane Cameron, Mario Farnbacher, Renger van der Zande
Photo by: SRO
バゲットの指摘は興味深いです。NSX GT3が速かったとしても、フェラーリやポルシェ、ランボルギーニといったブランドの魅力がそれを上回るということです。
残念ながら、現行のGT-R、NSX、RC Fがヨーロッパのレースに復帰して勝利を収めることは現実的とは言えません。アップデートは何度かされているとはいえ、ベースとなるモデルは比較的古いものであり、日産、ホンダ、トヨタ(レクサス)がそこに多額の投資を行なうとは考えにくいからです。
だからこそ、注目すべきは新世代の日本製GT3マシンの登場です。1月の東京オートサロンで発表されたトヨタのGR GT3コンセプトはその出発点となりそうです。これが成功を収めるかどうかは、車両自体のパフォーマンスよりも、トヨタがヨーロッパのチームに対して、無数の選択肢がある中からいかにこの車両を選んでもらえるように仕向けられるかにかかっているでしょう。
2024年には、WEC(世界耐久選手権)とル・マン24時間レースにおけるGTクラスの車両がGT3規格に完全移行しますが、そうなればGT3の市場競争はますます激しくなるでしょう。ただそれは、トヨタやホンダ、日産にとっても、この新時代に自分たちのマシンを再びヨーロッパのグリッドに並べる上でのモチベーションにもなり得るはずです。
Read Also:
- メルセデスGT3、世界での高シェアも納得? イレギュラーなコンディションの富士戦で垣間見えた“幅の広さ”
- フェネストラズとアレジ、対照的なシーズン送るふたりの外国籍選手:英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
- ホンダの“ドライバー育成メソッド”に変化アリ!:英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
- もしも、スーパーGT車両がル・マン24時間に参戦したら?:英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
- ポルシェ、新型の911 GT3 RSを発表。レースで培った冷却システム搭載、F1でお馴染みのDRSも装備
























あなたの意見が聞きたい!
Motorsport.comで何を見たいですか?
5分間のアンケートにご協力ください。
- Motorsport.comチーム
コメントを読んで投稿する
関連ニュース :
記事をシェアもしくは保存
Copy link
Viberでシェア
前の記事 バレンティーノ・ロッシ、四輪デビュー戦は混乱するピットで痛恨の“行き過ぎ”! 17位に終わる|GTWCヨーロッパ
次の記事 バレンティーノ・ロッシ、今度はBMWのワークスドライバーに! 将来はWECやル・マンでハイパーカー??
Top Comments
コメントはまだありません。 最初のコメントを投稿しませんか?
View More & Comment

More from
Jamie Klein

来年はGT300の1戦に。“お祭り”色の強い今年の鈴鹿1000kmも存分に味わおう|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
スーパーGT
スーパーGT
第5戦:鈴鹿
12 日前
来年はGT300の1戦に。“お祭り”色の強い今年の鈴鹿1000kmも存分に味わおう|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記

雨のSF富士で予選トップ3に入ったブラウニングとオサリバン。知られざる数奇な“腐れ縁”|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
スーパーフォーミュラ
スーパーフォーミュラ 1 ヵ月前
雨のSF富士で予選トップ3に入ったブラウニングとオサリバン。知られざる数奇な“腐れ縁”|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記

WECトヨタの祝福すべき50勝目。しかしBoP非公開で“真の実力”はブラックボックス|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
WEC
WEC 4 ヵ月前
WECトヨタの祝福すべき50勝目。しかしBoP非公開で“真の実力”はブラックボックス|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
最新ニュース

「マルケスがタイトル争いを制するハズ」アコスタ、来季チームメイトの勝利を確信?
MotoGP
MGP MotoGP
サンマリノGP
20 分前
「マルケスがタイトル争いを制するハズ」アコスタ、来季チームメイトの勝利を確信?

ラッセルのPU交換は10月末の“ADUOアップグレード待ち”。それまでグリッド降格を避ける格好に
F1
F1 F1
スペインGP
33 分前
ラッセルのPU交換は10月末の“ADUOアップグレード待ち”。それまでグリッド降格を避ける格好に

ハイリスクでカオス? 新サーキットのマドリンクに対するドライバーの評価
F1
F1 F1
スペインGP
53 分前
ハイリスクでカオス? 新サーキットのマドリンクに対するドライバーの評価

モンツァではかなりやらかした……角田裕毅が語る、新世代F1の難しさ。エネマネ失敗で「これほど大きな代償があるとは」
F1
F1 F1
イタリアGP
1 時間前
モンツァではかなりやらかした……角田裕毅が語る、新世代F1の難しさ。エネマネ失敗で「これほど大きな代償があるとは」
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。
次の 2 つのオプションがあります。
- サブスクライバーになります。
- 広告ブロッカーを無効にします。
購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします
広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード
お知らせの管理
登録