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コラム

WECトヨタの祝福すべき50勝目。しかしBoP非公開で“真の実力”はブラックボックス|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記

日本を拠点に活動する英国人ニュースエディター、ジェイミー・クラインによるモータースポーツコラム。今回のテーマは、WEC開幕戦で達成されたトヨタの通算50勝目と、今季からのBoP非公開について。

#8 Toyota Gazoo Racing Toyota TR010: Sebastien Buemi, Brendon Hartley, Ryo Hirakawa

写真:: FIA WEC / DPPI

 世界耐久選手権(WEC)の開幕戦イモラは、トヨタにとって間違いなく記憶に残る一戦となりました。記念すべき100戦目で、アップグレードされたハイパーカー『TR010 ハイブリッド』を投入し、そのデビュー戦で通算50勝目を挙げたからです。

 このトヨタ8号車の勝利に平川亮が大きく貢献したという事実も、日本のファンにとっては大きな意味を持つでしょう。彼は予選で2番手に入り、フェラーリ勢の間に割って入りました。僚機7号車のニック・デ・フリーズよりもコンマ3秒早いタイムでした。平川はレースでの走りも素晴らしく、中盤スティントでアレッサンドロ・ピエール・グイディが駆る51号車フェラーリからのプレッシャーを受け流し、最後はリードを広げてセバスチャン・ブエミにバトンタッチしました。

 なおトヨタにとっては、フルコースイエロー(FCY)のタイミングが幸運だったことは指摘しておくべきですが、そのチャンスを引き寄せたのはトヨタ自身でもありました。8号車はブレンドン・ハートレーから平川に交代する際、タイヤを交換せず。一方でフェラーリはテストやプラクティスの分析からミシュランタイヤのトリプルスティントはリスクが高いと判断し、51号車は右側の2本を交換していました。そんな中でFCYが出されたのです。

 仮にグリーンフラッグのままでレースが続いていたら、結果はどうなっていたか分かりません。ただ結果的には、かつてトヨタのドライバーとして平川らと共に日本で戦っていたニック・キャシディが乗るプジョーがグラベルスタックしたことで、古巣と元チームメイトを“援護”するような形となりました。

 FCYが出たことで平川は、フリーストップを敢行してタイヤを4輪交換。フェラーリの前に立つことができました。ピエール・グイディが乗る51号車は左側のタイヤも新品に交換しましたが、イモラではオーバーテイクが特に難しいため、逆転はなりませんでした。

 トヨタ・レーシングのテクニカルディレクター、デビッド・フローリーはレース後、フェラーリの“本拠地”であるイモラで勝利したことに満足感を示し、昨年の最終戦バーレーンからの連勝により、トヨタが「軌道に戻った」と語りました。

写真: FIA WEC / DPPI

 昨年はBoP(性能調整)が大きな論争の的となり、GR010は重量や出力の面で不利な条件を課されることが多くありました。ただフローリーは、昨年のCOTAや富士など、いくつかのレースではチームのオペレーション面でも最善を尽くせなかったと認めています。イモラの結果を見る限り、そうした問題は完全に過去のものとなったようです。

 また、トヨタが大きな期待を寄せていた空力アップデートも前進を見せているようです。平川は、TR010のドライバビリティが一貫性と予測可能性の面で大きく向上し、特に第2スティントではタイヤの持ちも非常に良かったと語っています。

 ただし、TR010がどれほど大きく進歩したのかを正確に知るのは難しくなってしまいました。FIAとACOが、BoPの数値を非公開とするという物議を醸す新方針を打ち出したためです。

 私は、イモラでACO競技副ディレクターのブルーノ・ファミン(元アルピーヌのF1・WEC代表)によるブリーフィングに参加した数少ないジャーナリストのひとりでした。ファミンは、BoPは各車のホモロゲーション(認証)パラメータ、つまり機密情報に基づいて決定されているものであるため、その公平性についてファンが理解することは不可能だと説明しました。

 同じブリーフィングでWECの広報担当は、ファンがルールメーカーを「信頼すべき」だと述べ、ハイパーカーは性能的に完全に均衡していると主張しました。しかし昨年、時に大きな偏りが見られたことを考えると、BoPに関してACOやFIAが十分な「信頼」を得ているとは言い難いです。

 例えば昨年の最終戦バーレーンは、もともとトヨタに有利なコースではありましたが、あの時GR010が圧倒的な強さを見せた理由のひとつとして、ポルシェ963やキャデラックVシリーズ.Rに対して遅ればせながら大幅な性能調整がなされたことが背景にあります。

 またイモラでも、レース後のフェラーリのドライバーからは最終コーナー立ち上がりでの加速不足が指摘されており、フェラーリ499PがトヨタTR010より重かった、あるいは出力が低かったのではないかと考えるのも自然なことです。トヨタのタイヤライフの優位性も、この仮説を裏付ける要素と言えます。しかしこれらの仮説が正しいのかどうかは、チーム関係者から内部情報が漏洩しない限り、知る術はありません。

 これは「トヨタが有利なBoPによって勝たせてもらった」と言いたいわけではありません。フェラーリとしても、ポールポジションを獲得して2位にも入っており、決して悪い結果ではありません。ただ、例えばTR010が最低重量1075kgで走っていたのか、それとも1035kgだったのかが分かれば、8号車の勝利の見え方は変わってくるでしょう。

 噂では、ACOとFIAが方針を転換し、再びBoPの数値を公開する可能性があるという話も既に出ています。個人的にはそうなることを望んでいます。そうなれば、トヨタであれ他メーカーであれ、本当に最も優れた仕事をしているのは誰なのかを、はっきりと判断できるようになるからです。

 

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