若手・ベテラン群雄割拠のスーパーフォーミュラ、タイヤ・メーカー・チームそれぞれの胸中を追う
2021年のスーパーフォーミュラも開幕が近づいてきた。3月11〜12日にかけて行なわれた鈴鹿テストでは若手ドライバーも多数参加。ベテラン勢も油断できない速さを見せる若手、エキサイティングなレースに欠かせないタイヤ供給を担当するヨコハマタイヤまで話を訊いた。
写真:: Masahide Kamio
4月の開幕まで3週間となった2021年のスーパーフォーミュラは、鈴鹿サーキットにおいて3月11日から2日間のスケジュールで今年第1回目の公式テストを行った。
国内モータースポーツの最高峰としてスーパーGTと双璧をなすスーパーフォーミュラ。もう一方のトップカテゴリーであるSUPER GT(のGT500クラス)がトヨタと日産、ホンダの3メーカーがワークス仕立てのマシンを投入し、ワークスドライバーがしのぎを削り、タイヤもブリヂストンとミシュラン、ヨコハマ、ダンロップの4メーカーが開発競争を演じているのに対して、スーパーフォーミュラはヨコハマタイヤがコントロールタイヤを供給するワンメイク(正確には1スペック)制で、シャシーもSF19と呼ばれるダラーラ社製のワンメイクとなっている。
またエンジンはトヨタとホンダが開発したN・R・E(ニッポン・レース・エンジン)と呼ばれる2リッター直列4気筒の直噴ターボエンジンが使用されているが、両メーカーが話し合って大幅な開発は凍結されており、キャラクターの僅かな違いこそあれ、パフォーマンス的にはほぼイコール。となれば速さの違いはクルマをセットアップするチームの総合力とドライバーのドライビングスキルにかかってくる。これこそが、ヒューマンスポーツと呼ばれる所以だ。
そんなスーパーフォーミュラの、今年1回目の公式テスト、初日は笹原右京(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムをマークし、関口雄飛(TEAM IMPUL)が2番手。これに福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と平川亮(TEAM IMPUL)が続き、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGとTEAM IMPULがトップ4を分け合っている。
ちなみに前者はHONDA/M-TEC HR-417Eエンジンを使用し、後者はTOYOTA/TRD 01Fエンジンを使用しているから、2メイクのエンジンがきっちりトップ4を分け合っている格好だ。
ホンダ(株式会社本田技術研究所 SAKURA)の佐伯昌浩プロジェクトリーダーも「SUPER GTではこうはいきませんがスーパーフォーミュラではサーキットに来て、ひとりのファンとして楽しんでいるところがあります」と苦笑。トヨタとともに2社で供給してきたエンジンが、程よくイコールコンディションを保っていることへの安心感もあるのだろうが、レース好きの一面を垣間見せてほほ笑んでいた。
一方、コントロールタイヤを供給するヨコハマ(横浜ゴム株式会社 MST(モータースポーツタイヤ)開発部)の髙口紀貴エンジニアは「今シーズンのタイヤは、昨年供給していたものと全くの同スペックです。昨年生産したタイヤも少し残っていましたが、それをすべて破棄して今シーズン用に新たに生産したタイヤを今回から使用しています」としたうえで「2スペック(2019年シーズンまではミディアムとソフトを供給していた)で面白くしようという論もありましたが、1スペックで十分面白いレースになっていると実感しています。だから一人のファンとして充分に楽しませてもらっています」と顔を綻ばせていた。
午後には天候が崩れるとの予報が出された2日目は、午前のセッションを30分延長。その分、午後のセッションを30分早く切り上げることになったが、実際には午前のセッションが本来の時間枠から延長部分に入ろうとするころにはポツリポツリと雨粒が落ち始めてきて事実上セッションは終了。各チームはインターバルのメンテナンス作業に入った。
午前のセッション状況は、前日のトップ2(チーム)は相変わらず好調で、平川がトップ、笹原が3番手につけている。TEAM IMPULの高橋紳一郎監督は、「昨年までと比べてクルマが大きく変わったわけではありません。平川は安定して速く、関口が不調で苦しんでいたけど、その不調を少し取り除くことができただけ」とメカニズム面(セットアップ)でのドラスティックな変更はないとコメントしている。
昨年チャンピオンの山本尚貴が移籍し、代わりに若手の牧野任祐が加わったDOCOMO TEAM DANDELIONRACINGの吉田則光監督も「今シーズンはドライバーが少し変更になりましたが、それで何かが大きく変わるということもなく、クルマを上手くセットアップしていくだけです」と平常をアピールする。
そんな前日のトップ2(チーム)に15号車の大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)と38号車の坪井翔(INGING MOTORSPORT)が食い込み、IMPULの平川をトップに大津、笹原、坪井の4台が1分36秒台に入れてきた。MUGENもINGINGも、これまでにチャンピオンを獲得した定評のあるチームだが、大津は今年フル参戦デビューを果たすルーキーであるし、参戦3シーズン目となる坪井も昨年初優勝を飾ったフレッシュなドライバーの一人。
考えてみればスーパーフォーミュラはドライバーの新陳代謝が激しく、参戦5シーズン目以内の若い世代が半数以上を占めている。そして開幕戦がWEC開幕戦とバッティングする可能性もあったことから中嶋一貴(Kuo VANTELIN TEAM TOM'S)と小林可夢偉(KCMG)にはそれぞれジュリアーノ・アレジと小高一斗が代役でテストに参加。体調不良を訴える牧野や、コロナ禍の影響で入国できないでいるサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)の代役には笹原右京や中山雄一、と有望な代役候補が目白押しだった。
そしてその代役の一人、笹原が初日にトップタイムをマークしたのは先に触れたとおり。さらに雨に見舞われた2日目午後のセッションでは今季デビュー組の阪口晴南(INGING MOTORSPORT)がトップタイムをマーク。これまで何人ものトップドライバーをルーキー時代から見てきた伯楽で、今シーズンは阪口を担当することになった田中耕太郎エンジニアは「(阪口は)充分に合格点ですよ。この雨の中でトップタイムだったしドライでも速さを見せていた。昨日の朝のセッションでは40ラップ(=レースディスタンス)を走っても問題なかったようで、この時期の鈴鹿で大丈夫だから、シーズン通して体力的な問題に悩まされることはないと思います」と太鼓判。
「このクラスに上がってくる若いドライバーは、もう下手な奴なんていないから」としたうえで「あと必要なのは経験値。これは戦っていくなかで蓄積されるものですからね。今年は愉しみな1年になりそうです」と力強くコメントを締めくくった。
これだけ若手が育ってきているから、ベテランといえども手を抜いている余裕はない。そんな様々な状況からもスーパーフォーミュラでシビアなバトルが繰り広げられるのは必然だ。
ちなみに、ファンとしては牧野の病状が気になるところだが、現時点ではチームとしても開幕戦への参戦がどうなるのか見えてこない状況だという。牧野が回復して万全のコンディションで開幕戦に臨むことを期待したいが、その一方で、家貧しくて顕れた孝子の活躍を見たい気もするのも事実。いずれにしても開幕まであと僅か。次回の富士公式テストでは、さらに的確な展望ができるだろう。
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