異例のシーズン中テストでチームはどんな“大胆トライ”をしていた? 選手権首位のTEAM MUGEN&最下位のB-Maxの場合
シリーズ第6戦を前に富士スピードウェイで開催されたスーパーフォーミュラ公式テスト。異例となったインシーズンテストではそれぞれどんな取り組みをしていたのか? チームランキングで首位を走るTEAM MUGENと、最下位に沈むB-Max Racing Teamに話を聞いた。
6月23日〜24日、スーパーフォーミュラの公式テストが富士スピードウェイで開催された。2日間で全4セッション、計8時間の走行枠が設けられ、各チームが各々のテストプログラムを遂行した。
今回のテストは、7月に富士で行なわれるシリーズ第6戦を前にしたタイミングで実施された。スーパーフォーミュラにおけるインシーズンテストは、コロナ禍の2020年に開幕ラウンドもてぎの金曜日を使って“合同テスト”が開催されたという特殊なケースはあるが、基本的には異例中の異例。各チームにとっては、シーズン中に見つかった課題に腰を据えてじっくり取り組む絶好の機会となった。
それでは、各チームはどんなことに取り組んだのか? 現在チームランキングでトップを走るTEAM MUGENと、最下位に低迷するB-Max Racing Teamの例を紹介する。
■2台の“完全比較”を行なったTEAM MUGEN
Photo by: Motorsport.com / Japan
まずは、ディフェンディングチャンピオンであり、今季も野尻智紀とリアム・ローソンがタイトル争いに絡んでいるTEAM MUGEN。野尻とローソンは共に高いレベルのパフォーマンスを見せているものの、1号車(野尻号)は予選が速いがロングランペースはもうひとつ、15号車(ローソン号)はレースペースは力強いものの、予選は野尻らには及ばない……そういった傾向があった。
TEAM MUGENはシーズン中も2台のデータを共有することでお互いの課題を補うようなアプローチをとっていたが、シーズン中にできることにも限界がある。そのため、今回は大胆なトライをしていたようだ。
テスト前、野尻を担当する一瀬俊浩エンジニアは次のように語っていた。
「1号車と15号車の“完全比較”をやっちゃおうと思っています」
「15号車のセットアップで走って、それを途中で全部組み替えて、1号車のセットアップで走って……どこに良し悪しがあるのかを検証します。セッション中はバランスを調整するために車高やアンチロールバー、ダンパーなどで調整しますが、それは単発でしかないんです」
「(調整によって改善された場合)そこが変わったことで良くなった可能性もありますが、そうじゃない可能性もあります。だからこそ、その他のものも含めて全部違うものにしたいんです。これはレースウィーク中にはできないですが、テストで15分20分かけてコピーすれば、評価ができると思います」
ガレージを閉めて作業を行なうTEAM MUGEN。大掛かりな作業に見える
Photo by: Motorsport.com / Japan
実際、今回のテストではこのプログラムが実行されたという。比較テストを終えた野尻は次のように語った。
「やっぱり(セットアップを)同じにしないと分からないこともあります」
「僕が良いと思ったアイテムも、リアムがどう思うかはリアムのクルマにフィットしてみないと分からない部分もあります。だから本当に簡単ではなくて、何でこんなに複雑なのかと思う部分もありますね」
ちなみに、野尻は2日目のセッションでフラップに『ADVAN』のロゴがないリヤウイングを装着していたが、これはTEAM MUGENがテストでよく行なう空力パーツの個体差チェックではなく、前日に破損が見つかったものを新品に交換しただけだという。
今回のテストで供給された新品タイヤ6セット中4セット余らせてしまうほど(※3セットは次戦に持ち越し可能)、粛々とテストメニューをこなすことに集中していた野尻。2日間共に午後のセッションで下位に沈んだのは、いずれも新品タイヤでのアタックを行なっていないという側面が大きい。なお来月の富士戦に向けては「周りにどれだけタイムの上がりしろがあるのかは、来月にならないと分からない」と慎重なコメントを残すにとどめた。
■苦境を脱するため、“助っ人”の力を借りたB-Max Racing
一方、松下信治とラウル・ハイマンの2台体制で戦うB-Max Racingは、今季ここまで無得点と苦しいレースが続いている。特にハイマンはFIA F3の経験こそあれど、昨年はフォーミュラ・リージョナルを戦っていたことを考えるとSF参戦は大きなステップ。初めての日本、初めてのマシン、初めてのコース……それに加えてB-Maxは昨年の1台体制から2台体制に拡充したばかりで、新加入のスタッフも多かったことから、何かと一筋縄ではいかないパッケージとなっていた。
そこで白羽の矢が立ったのが、ホンダ陣営のリザーブドライバーを務める大津弘樹。彼は今季スーパーサブとして活躍しており、春のテストにはDOCOMO TEAM DANDELION RACINGから代役参加、第4戦オートポリスでは病欠の野尻智紀に代わってTEAM MUGENのマシンをドライブするなど、トップチームのSF23を走らせた経験がある。その大津からフィードバックを得るため、B-Maxは今回のテストで大津を起用することをホンダにオファーしたのだ。
「彼はホンダ陣営のトップチームに乗った経験があるので、何かヒントをもらいたいと思いました。『良いクルマはこうだった』というものがフィードバックされれば、近道ができるかなと思いました」と組田龍司総代表は語る。
大津弘樹
Photo by: Motorsport.com / Japan
ハイマン本人も、大津に協力を仰ぐことは良いアイデアだと感じていたようだ。
「今年は僕としても新しい選手権だし、マシンもチームメンバーも新しい。彼らには頑張ってもらっていて、そのサポートには感謝しているけど、今のパッケージでは難しいのも確かだ」
「ドライビングの面ではクルマに自信を持てないと厳しいし、僕たちが苦しんでいるのはそこだ。だから(大津の起用は)良いアイデアだと思った。このクルマがどこまで行けるのか確かめるために、ベンチマークになる誰かを乗せて欲しいと言っていたんだ」
初日にハイマンの51号車をドライブした大津は、マシンの第一印象として「少し難しい」と感じたという。その後セットアップを進めてタイムを上げ、19番手でテスト初日を終えた大津は、2日目には松下の50号車もドライブした。
このテストを終えて組田総代表は「うちのクルマとトップチームのクルマが違うことは分かった」としながらも、その違いを埋められるかどうかは別の話だと語る。大津の参加によって得たデータが今後に向けたブレイクスルーに繋がるかどうかは、エンジニア陣の解析にかかっていると言える。
このように各々が大胆なトライを実施していた富士テスト。この結果が勢力図の変化に繋がるかどうかは、7月16日の第6戦で明らかになるだろう。
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