トムスが語る、ジュリアーノ・アレジのSF電撃交代。課題の“スピード”は改善ならず「乗せ続けることは難しい」

　6月20日、スーパーフォーミュラに参戦するトムスが驚きの発表を行なった。7月の第6戦富士からジュリアーノ・アレジに代わり、笹原右京をVANTELIN TEAM TOM'Sの36号車のドライバーに起用することを明らかにしたのだ。

　アレジはここ最近苦戦が続いていたとはいえ、シーズン途中のドライバー交代はそれほど頻繁に起こるものではない。今回なぜ電撃的な交代劇に至ったのか？　トムスでスーパーGTやスーパーフォーミュラ・ライツの監督を務める山田淳氏に聞いた。

　アレジは2021年に参戦2戦目ながら、雨で赤旗終了となった波乱のオートポリス戦で優勝を飾ったが、翌2022年シーズンに大苦戦。10戦中、入賞はわずか1回にとどまり、ランキング20位に終わった。

　そして同年12月の合同・ルーキーテストでトムスは、ホンダ陣営のドライバーだった笹原右京を起用し、アレジとマシンをシェアさせた。そして最終的に笹原はトヨタ陣営に移籍し、トムスから2023年のスーパーGTを戦うことが明らかとなったが、スーパーフォーミュラに関しては笹原ではなくアレジが続投されることとなった。

　ただ今シーズンもアレジは苦しいレースが続き、5戦中8位入賞1回のみというリザルトとなっていた。そして今回、トムスはドライバー交代という決断に至ったわけだが、チームとしても開幕当初から、アレジのパフォーマンス次第ではシーズン途中でドライバーを交代することを検討していたようだ。

　既報の通り、アレジのスーパーフォーミュラ残留には舘信秀会長の意向もあった。しかしやはり、アレジの“スピード”には懸念があったという。

 

Photo by: Masahide Kamio

「合同・ルーキーテストが終わり、2023年シーズンに向けて色んな話をしましたが、（アレジの起用には）舘の『ジュリアーノのようなスターが日本のレース界にいないとダメだろう。レース全体を盛り上げるためにああいうドライバーが必要だ』という意向もありました」

「とはいえ少し引っかかるのは、スピードが少し足りないこと。そこはなんとかチームと協力しながら彼を押し上げていこうという話になりました。ただし、2022年のような成績の場合は、途中で何かを考えないといけないという話は、去年の年末の段階で既にしていました」

　そう語る山田氏。アレジは「日本人とヨーロッパ人の良いとこどり」とも言われるその人柄に定評があるが、やはり現状の成績を鑑みると、スーパーフォーミュラ参戦を継続させるには難しい状況だったと語る。

「彼はスタイルも良くてイケメンだし、穏やかだし、素直だし、人としてはすごく良い奴なんですよ」

「ただ肝心要の部分が少し足りていないと、我々としてもずっと乗せ続けることは難しいですね」

　アレジは今後、同じくトムスから参戦するスーパーGT・GT500クラスに専念することで、さらなる成長を目指していくことになる。スーパーGTはサクセスウエイトや、2クラスによる混走など多くの要素が絡んでおり、様々なスキルが要求される。そういった点でも、アレジとしても伸びしろがあると言える。

スーパーGTでは引き続き参戦を続ける

Photo by: Masahide Kamio

「レース全体で言えば、サクセスウエイトが重かったり軽かったりする中で、そこを上手に乗りこなすことが重要になりますし、GT300のトラフィックも間違いなくあります。彼ができるであろう部分はたくさんあるので、そこに期待したいです」

　そしてスーパーフォーミュラでアレジの後任となる笹原は、6月23日〜24日の富士テストから早速36号車のステアリングを握っており、初日午後のセッションではチームメイトの宮田莉朋を上回る5番手タイムをマークするなど、早くも存在感を放っている。

　山田氏は笹原に期待することについて、現在トムスがチームタイトル争いでTEAM MUGENに差をつけられている現状を引き合いに出し、まずは着実にポイントを積み重ねて欲しいと語った。

「まずは焦らず、淡々とポイントを積み重ねてもらいたいです。もちろん、笹原選手は優勝できる力を持ったドライバーですので、隙あれば優勝も狙ってほしいです」

「ドライバーズポイントは宮田がトップで、チームポイントも2位といえど、大きなギャップがあります。そこは（笹原に）しっかりポイントを稼いでもらって、両タイトルを獲りたいと思っているので、ぜひとも彼の力を借りて目標を達成したいです」