目前に迫るタイヤワンメイク化、コスト抑制に伴う新規則……どうなるGT500|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
日本を拠点に活動する英国人ニュースエディター、ジェイミー・クラインによるモータースポーツコラム。今回のテーマは、変化を遂げるスーパーGT・GT500クラスの行く末について。
写真:: Masahide Kamio
今年のスーパーGTも楽しみな要素がたくさんありますが、その一方でこの冬の間に起きたいくつかの動きによって、GT500の在り方について少し不安を覚えています。
日産が4台体制から3台体制へ縮小したことでGT500のエントリー台数が減ったのは非常に残念ですが、これはある程度は避けられないことでもあります。少なくとも、それはプロモーターであるGTAがコントロールできる範疇ではないと言えます。
そこで今回は、2027年からシリーズがワンメイクタイヤ制に移行すること、そして最近発表された2026年の競技規則……特にGT500の新しいサクセスハンディキャップ制度がもたらす影響に焦点を当てたいと思います。
まず、長年にわたりファンに愛されてきたスーパーGTの“タイヤ戦争”が終わろうとしていることについて。昨年、15台中12台の車両がブリヂストンタイヤを使用していたことを考えれば、GT500のタイヤ戦争は既に終焉に近付いていたことは確かです。
ワンメイク化へのひとつのターニングポイントとなったのが、2023年末でミシュランがGT500へのタイヤ供給を終了し、それに伴ってNISMOの2台がブリヂストンにスイッチしたことだと言えます。それ以降、プライベートテスト規制の緩和など、圧倒的マジョリティのブリヂストンとマイノリティのヨコハマ、ダンロップとの差を埋めるための取り組みが行なわれてきましたが、その差はなかなか埋まっていきませんでした。
そんな中、昨年半ばにはヨコハマがGT500から撤退しようとしているのではないかとの噂がパドックで流れるようになりました。GTAが2027年からのワンメイク化を決めたことで、ヨコハマは少なくとも2026年まではGT500に残ることになりましたが、その関わり方が今季から変わっているのは明白です。
今季はTEAM WedsSport BANDOHがGT500で唯一のヨコハマユーザーとなりますが、今やその車体には『ADVAN』のロゴがなく、車両名からも同じく『ADVAN』の名前が消えています。これはヨコハマからの資金的サポートがなくなったことを意味している可能性が高く、KONDO RACINGが今季ブリヂストンにスイッチした理由のひとつとも考えられます。またBANDOHは公式テストを前にしたプライベートテストに姿を見せておらず、これは新たに開発するタイヤが存在しない可能性も示唆しています。
GTAとしても苦渋の決断だったようですが、必ずしもこのタイミングでGT500のタイヤ戦争を終わらせなければいけなかったのでしょうか? 開発競争は2ブランド存在すれば成立するわけですから、ブリヂストンとダンロップによる2メーカーの争いを継続し、何らかの形で戦力均衡を図る方が、タイヤ戦争を完全に終わらせるよりも望ましかったのではないかと考えます。
新シーズンを前に、ワンメイクタイヤ時代がどのように運用されるのか、さらなる詳細が待たれます。特に気になるのが、ワンメイクサプライヤーはどのようにタイヤ供給を行なうのか? という点です。現在のブリヂストン勢が持つような複数のコンパウンド・構造の“メニュー”は残されるのか、それとも開発競争がなくなることに伴ってタイヤの選択肢は狭まるのか……これはレース展開にも大きく関わります。
#1 au TOM'S GR Supra
写真: Masahide Kamio
もしF1のように単純にハード/ミディアム/ソフトといった数種類のコンパウンドに限定されるなら、番狂わせが起こる可能性はさらに低くなるでしょう。ただでさえワンメイクになれば、ダンロップを履くNakajima Racingやヨコハマを履くBANDOHが特定のレースで存在感を放つ……といった光景が見られなくなるのですから。他とは全く違うタイプのタイヤを選べなくなると、下剋上は起きづらくなるでしょう。
またタイヤ戦争がなくなることで、GT500が“最速の箱車”ではなくなる可能性もあります。現在GT500は富士スピードウェイでの予選ラップタイムでWEC(世界耐久選手権)のハイパーカークラス車両を上回っていますが、最近ではその差が縮まりつつあり、タイヤワンメイクの2027年には差が完全になくなるかもしれません。
そしてGT500の新しいハンディキャップ制度についても触れなければなりません。今季はシーズン中のエンジン使用を1基に制限することに伴い、マイレージ確保のためベースの燃料流量が下げられました。そしてこれまで、サクセスウエイトがかさんだ車両はウエイトの搭載に加えて燃料流量が3段階にわたって引き下げられていたのですが、GT500とGT300の速度差が縮まり過ぎると安全上の懸念があるとして、燃料流量ダウンは1段階のみに。あとは給油時間で調整することになりました。
コスト抑制の必要性は理解できますし、シーズン中のエンジン開発にお金をかけ過ぎることは正当化できなくなっていたのでしょう。ただ、エンジンの年間複数基使用を認めつつ、シーズン中の開発ができないようホモロゲーション制にするという策がベターだったのではないでしょうか? 必要なら空力開発同様、複数年凍結する手もあります。そうすれば燃料流量は現状維持できたはずです。
現状はサクセス給油リストリクターの詳細が明らかになっていませんが、新しいハンディキャップ制度の下では、ステージ2やステージ3の制限を受ける車両が今まで以上に不利になる可能性があります。これまで燃料流量を著しく絞られていたチームは、燃費を稼いでピットストップ時間を短縮しやすいという面もありました。ただ新規則ではそういった面もなくなるため、ランキング上位のチームがレースで挽回することもより難しくなるかもしれません。
またコスト抑制に取り組むなら、GT500のプライベートテスト規則にテコ入れするのはどうでしょうか。1月にマシンをセパンへ輸送するのにもかなりのコストがかかっているでしょうし、2月に行なう国内テストも寒すぎてまともな走行にならないこともしばしば。レース翌日の月曜日をテストに活用する方が理にかなっています。
結局のところ、スーパーGTはGT500の魅力が失われないようにしなければいけません。マシンは可能な限り速くあるべきであり、レースは予測不能であり続けるべきです。タイヤ戦争の終焉と燃料流量・ハンディキャップ規則の変更が、その両方に悪影響を与えるのではないかというのが私の懸念です。
最後にひとつ。2025年シーズンのハイライトは、第6戦SUGOでKONDO RACINGが最終ラップのオーバーテイクで大逆転を果たし、9年ぶりの勝利をもぎ取ったシーンと言ってもいいでしょう。そしてそれは、全車同一のタイヤなら起こり得なかったのではないでしょうか? このような物語こそがスーパーGTの魅力の核心です。そんな物語を今後も見られるような取り組みを期待しています。
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