WEC、GTEに代わる新設GT3クラスについて説明。“プレミアムキット”導入での他選手権との差別化は賛否を呼ぶ?
WECはGTE車両によるクラスを廃止し、GT3車両によるクラスを新設するが、そこで用いられるのは特注のボディワークを使用した“GT3プレミアム”車両になるとして、その目的などについて説明した。
WEC(世界耐久選手権)は、長らく存続してきたGTE車両によるLM-GTE Proクラス及びLM-GTE Amクラスを廃止し、2024年からヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)共々、GT3規格車両をベースとしたカテゴリーがこれを引き継ぐことになる。GTE Proに関しては参加台数と参加メーカーの減少もあり、GTE Amよりも1年早い2022年限りで終了することが先日明らかにされた。
プロモーターであるACO(フランス西部自動車クラブ)のピエール・フィヨン会長は、新設されるカテゴリーでは“プレミアムキット”なるものを導入したいとしている。つまりこの新しいクラスを戦うのは通常のGT3規格の車両ではなく、GT3規格の車両に”キット”で改造を施したマシンにすることが目指されているわけだ。
フィヨン会長曰く、「耐久レースのものだと分かるようなボディワーク」に加え、ドライバーに「プレミアムな製品を提供すること」を考えているという。
「我々が目指しているのは、(各参加メーカーの)ル・マンプロジェクトに訴えかけるようなものではない。メーカーには資金を使わせたくないのだ」
「我々はそれとは異なることをしたい」
フィヨン会長はさらに、そのボディワークのパッケージの費用が5万ユーロ(約707万円)程度になること、そしてそのパッケージを簡単に通常のGT3仕様に戻せるようにすることが目標であるとした。
またACOのテクニカルディレクターであるティエリー・ブーべは、WECやELMSでGT3車両を使用することになったのは、2024年にその新設カテゴリーに参戦予定のチームやドライバーと議論をした結果だとして、「我々がジェントルマンドライバーやチームと話をしたのは、彼らがエンドユーザーだからだ」と述べた。
そしてブーべはこの新しいボディキットについて、性能調整のプロセスの一環として「車両を一定のウインドウに入れるためのチューニング」の手段としても活用できると述べた。
つまりはこのキットが改造可能ということになるであろうが、それがどこまで許されるのかについてブーべは「まだ定義されていない」と語るにとどめた。
また、“GT3プレミアムキット”を使用することになるこのカテゴリーの正式な名称については、まだ明かされていない。ただFIA耐久委員会のリシャール・ミル委員長は、それが“LMGT”となる可能性が高いと話した。
WECに導入される新型GT車両についてはその他にも、クラストップ3以上で光る車体側面の“リーダーライト”もボディワークのパッケージとなること、そして性能調整のプロセスを支援するためにリヤアクスルにトルクメーターを搭載することなどが明らかになっている。
WEC並びにELMSが純粋なGT3規則を採用しないことに関しては、疑問の声も上がっている。ポルシェのモータースポーツ責任者、トーマス・ラウデンバッハは次のように語る。
「何が疑問かって、(独自規則が)“本当に必要なのか?”ということだ」
「それでこの競技が魅力的なものになるのか? それは分からない」
「個人的な意見としては、観客がそれに気付くこともないだろうし、必要ないと思っている」
「メーカーにしてみれば、我々が色々なところで使っている標準スペックのGT3カーを使う方がありがたい。コストのことを考えてもね」
「私にとって特別なのは、ここがル・マンであることであって、改造車で走る必要はない。だから私はそれが必要ないと思っている」
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