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「レースをやっている人の“ハッピーさ”が伝わるようになれば」マクラーレンF1から古巣ブリヂストンに復帰の今井弘氏。新たな挑戦にワクワク

2025年3月より、モータースポーツ管掌という役割でブリヂストンに復帰した今井弘氏。マクラーレンF1から古巣に戻った理由、そして新たに迎えるチャレンジなどについて聞いた。

ブリヂストン今井弘氏とそのチームメンバー

写真:: Motorsport.com / Japan

 ブリヂストンに、F1の最前線で戦ってきた男が“帰還”した。マクラーレンでレースエンジニアリング・ダイレクターなどの上級職を歴任した今井弘氏が、2025年3月付で常務役員 モータースポーツ管掌という肩書きで復職することになったのだ。

「マクラーレンではレース現場のエンジニアのリーダー格として、サーキットでのレース活動、そしてサーキットで得られた情報のファクトリーへのフィードバックなどに責任を持って取り組んでいました。最後の1年はタイヤとブレーキのパフォーマンスディレクターという形で、専門のタイヤだけではなく、その周りにあるブレーキやホイールも含めた開発サイドの責任者を務めました」

 マクラーレンでの仕事についてそう説明した今井氏。名門マクラーレンは2010年代に一時期低迷したものの、昨年は26年ぶりにコンストラクターズチャンピオンに輝き、今や選手権をリードする存在となっている。

 これについて今井氏は「ご存知の通りF1では2021年からバジェットキャップ(予算制限)が始まったことで、使えるリソースや人数も決まってしまいます。そのため昔のようにパワーゲームで一歩抜け出すことはできなくなっていて、個々のスタッフがどれだけパフォーマンスを発揮するかに重点を置く必要があります。マクラーレンはそういった活動を熱心に進めていて、それが結果に結びついているのだと思います」と分析した。

 そんなマクラーレンからブリヂストンへと復帰することを決断した理由は何だったのだろうか?

「エンジニアとしてブリヂストンで仕事をしていた時はタイヤに興味があり、“タイヤから見たクルマの世界”を見てきましたが、それとは反対に、“クルマから見たタイヤの世界”の景色はどうなのだろうと興味を持ったんです。それでブリヂストンを離れ、マクラーレンF1チームに入って勉強をしてきました」

「そんな中で、今度はもう一度タイヤから見たクルマ、そしてクルマの外に広がる世界を見た時にどういう世界が広がるのか、それを見たくなりました。これは良いチャレンジかもしれないと思い、今に至ります」

 今井氏が言う、“タイヤから見たクルマの世界”と、“クルマから見たタイヤの世界”。このふたつには共通点も相違点もあるという。

「もちろん、レースであれば良い成績を出すという最終目標は同じで、シンプルに言えばいかに速く走れるか、いかに一定の性能で走れるかというところになってきます」

「一方で違うところで言うと、例えばデータひとつ見るにしても、タイヤのエンジニアとクルマのエンジニアではデータの見方が多少違います。細かい話になりますが、横軸にスリップ角(タイヤが横滑りしている度合い)があって、縦軸にタイヤフォース(タイヤが発生する力)があって……というのがタイヤエンジニアの定番の見方です。一方クルマのエンジニアはどれだけ荷重を乗せるかという観点でクルマを設計しているので、横軸の第1パラメータがスリップアングルではなく荷重だったりします」

「これは非常にシンプルな一例ですが、同じものを見ているはずなのに、立場によって違う見方をするのは面白いなと思いました」

 再び戻ってきたブリヂストンで、上記の経験を活かすことにワクワクしているという今井氏。ブリヂストンはスーパーGT、スーパー耐久といった国内カテゴリーに限らず、アメリカのインディカーシリーズ(ファイアストンブランド)、2輪のEWC(世界耐久ロードレース選手権)など幅広く活動しており、2026年からはフォーミュラEもそのラインアップに加わる。彼はグローバルモータースポーツの技術開発の責任者として、基盤となる技術の発展や、国内外のレース活動のシナジー醸成などに取り組んでいく。

 またブリヂストンは2年前の2023年、F1の次期タイヤサプライヤーとして入札に名乗りをあげたことでも話題となった。結果的にはピレリが継続してタイヤ供給をすることで決着した。

 F1での経験豊富な今井氏の加入は、将来的なF1タイヤ供給への“序章”というわけではないのか? これについて本人は「そうやって期待をしていただくことは非常に嬉しい」としながらも、現時点では具体的な計画は何もないと語った。

 モータースポーツの魅力は「究極のチームスポーツ」であることだと語る今井氏。自身が触れた新しい技術の話をする際には「楽しくてしょうがないんですよ」と目を輝かせ、インタビューの最後には、自身の“チーム”のメンバーを集結させ、満面の笑みで撮影に応じてくれた。彼は現場で働く人たちの“ハッピーさ”がより伝わるようになれば、日本でもさらにモータースポーツ人気が高まるのではないかと述べた。

写真: Motorsport.com Japan

「私はモータースポーツが究極のヒューマンスポーツ、チームスポーツだと思っています」

「クルマが良くてもドライバーが良くても、チームがちゃんとしていないと勝てません。私はエンジニアですけども、我々もフィットしていないと(身体コンディションを保っていないと)パフォーマンスを出せないということでフィジカルトレーニングをしていましたし、メンタル面でもトレーニングが必要です」

「その根本を言うならば、やっている人たちがハッピーでないといけないんですよね。例えば大谷翔平選手に人気があるのは、彼が野球が好きで、野球をしている時はハッピーだからだと思います。モータースポーツの人気をもっと高めていくためには、我々のようにレースをやっている人たちのハッピーさが伝わるようになるといいなと思います」

 

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